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遺書

太宰治先生、今度死ぬのならあたしと死んでください。
あたしと一緒に死んでください。
いつまでも、どこまでも着いてゆきますから。

でも知ってます。
先生は奥さんのことが好きなのですよね。
それでも良いです。
例えあたしと同じ思いでなくとも、あの時の言葉が表面上のものだったとしても、いいんです。
最期を一緒に過ごさせてくださるのであれば。

ずっと死にたいと思っていました。
結婚した時から、あたしの人生の終焉は決まっていました。でも、せめて、せめて最期くらいあたしも心の底から好きな人と一緒にいたい。

貴方を一目見た時から、あたしは貴方と一緒になるのだと、心のどこかで感じておりました。会う度にその思いがどんどんあたしの全てを侵食してゆきました。心臓から太宰先生が出てゆき、心臓へ帰ってくるのです。心臓に帰ってくる度にどきんどきんと鯉のように跳ねるのを感じます。

本当に好きなんです。


いいんですか。
あたし、嬉しい。
これ以上しあわせなこと、ありません。

あたしばかりしあわせな死に方をしてすみません。
せめてもう一、二年生きていようとも考えました。妻は夫と共にどこ迄も歩みとうございますもの。ただ御両親のお悲しみと今後が気掛りです。

でも、それでも、太宰先生のことを誰よりも愛しているのです。
愛して、愛して、幸せにしてみせます。
奥さんごめんなさい。太宰先生はあたしがもらいます。
いいでしょ、最期くらい。あたしも幸せになりたいの。

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