見出し画像

暑き春の備忘録




2023年2月末、春ツアーの開催が発表された。

櫻坂46 3rd TOUR 2023『桜月』


前回のツアーから半年も経ってない。増えた楽曲は1シングル、わずか6曲のみ。強気だなと思った。櫻坂のライブは確かに凄い。ただ、凄ければ凄いほどどんどんハードルが上がっていくのは当たり前で。それはつまり、次のツアーはあの圧巻だった2ndTOURを超えなければならないということ。そのことをわかっているのだろうかと問いたくなるくらい、スパンの短さに驚いた。

だが、その驚き以上に武者震いがしたのだ。当時の私にとって(今もそうだが)櫻坂は期待をかけずにはいられない存在だったから、きっとそれを超える自信があるのだろうと。夏〜秋にかけてツアーができない理由がもしかしたら他にあるのかもしれないけど、それでも自信があるから春にツアーを開催すると決めたのだろうと。すごく、楽しみになった。


約半年前、衝動に任せるようにして2ndTOUR全12公演のうち11公演参加し、櫻坂のライブに完全に魅了されてしまった私は、こうして3rdTOURの開催が発表された時にはもう全ての公演に足を運ぼうと心に決めていた。多分、本能的に。

結論から言うと、その選択は大正解だったように思う。開演前、「同じライブそんなに何度も見て楽しいの?」とごくごく当たり前な疑問をぶつけて来たオタクが、終演後にもう一公演行きたそうにしているのを見て、ただただ誇らしい気持ちになった。櫻坂のライブはどうしてこうも全公演見たいと思わされるのだろうか。

全11公演に足を運び、そこで見たもの感じたことを書き残しておきたいと思った。



※ 先に言っておきます。アホほど長いです。



地方レポート


代々木公演

ツアーを終えた今だから正直に言うと、ツアー初日の代々木公演、少し物足りなさを感じてしまった。Twitterを見ていると同じような感想が散見されたから、少なからず私以外にもそう感じた人はいるのだろう。個人的にそう感じてしまった理由として、2ndTOURの演出が圧巻すぎたこと、セトリ順の意図がいまいち掴めなかったこと、等々演出そのものに対する受け取り方の問題もあるが、おそらくそればかりではない。

声出し解禁を意識してセトリに組み込まれたのであろう曲たちが、どうも盛り上がりに欠けた気がしたのだ。ただこれは、ある意味それはそうとも言える。コロナ禍にデビューした櫻坂は、櫻坂としてはそもそも声出しライブを経験していない。その上、2月に声出しが解禁されてからの現場はと言うと、キャパは僅か2000程のイオンカードライブとユニ春ライブのみ。多くのファンがまだ櫻坂の楽曲での声出しを経験していない状況で、声を出す人が疎だったり、探り探りになってしまうのはある意味仕方のない話である。そう考えると、盛り上がり方のわかりやすい『夏の近道』を除いて、少々不完全燃焼に終わってしまったのも頷ける。

帰宅してしばらく考えを巡らせていると、頭を殴られたような衝撃があって、ハッとした。これは演者側と観客が一体となって作り上げていくライブなのだと。2ndTOURは魅せるステージとしての最高傑作だった。サイリウム消灯を始めとするコロナ禍を逆手に取った言わば一方的な演出で、完璧だった。3rdTOURは観客を巻き込んで作り上げるステージで、そこに今の櫻坂の挑戦が詰まっているような気がした。このグループはまた新しいことに挑戦しようとしている。だからこそこちら側も、2ndTOURと同じ見方をしていてはいけなかった。このツアーが化けたら櫻坂のライブはもっと凄いことになる。そう気付いて、鳥肌が立った。

千秋楽を終えたら答え合わせをしようと、その日のうちにこれだけ呟いた。

〝2ndTOURよかったなと安易に懐古してしまいそうになるけど、それと同じくらい今私は3rdTOURに期待をかけずにはいられない。私の個人的直感に言わせれば、このツアー、化ける〟

これは何度も言ってるし、私がツアーを回る上での軸になってくれているので何度でも言いますが、2ndTOUR地方千秋楽での綺良ちゃんの「私たちは見にきてくださる方の期待を超えたいと思ってやってる」「地方公演が10公演あるってことは10段階レベルアップできるってことじゃないですか」という言葉。私が櫻坂のツアーに何公演も足を運びたいと思う理由はここに全て詰まってると言っても過言ではない。必ず期待を超えてくれると思わせてくれるの本当に凄いグループだと思う。

そうは言ってもやっぱり櫻坂のライブは凄い。目の前で繰り広げられる圧巻のパフォーマンスに圧倒され、次は何を見せてくれるのだろうとたまらなくワクワクさせられてしまう。櫻坂のライブにただ魅せられていただけの去年と違い、色んな感情が入り混じった上で、それでも櫻坂のライブが好きだと感じた代々木公演。いつの間にか"櫻坂46のライブ"ではなく"櫻坂46"というグループに魅せられていたことに気が付いた。


愛知公演

続く愛知公演、本当に熱かった。正直これが千秋楽だと言われても納得してしまうくらい熱かった。代々木公演からたったの一週間でここまで進化するのかと驚いた。序盤から「今日何かが違う」と感じたし、確かに何かが違った。それはメンバーの気迫なのか、ファンの歓声なのか。それともその両方が上手く呼応したからなのか。代々木公演の後にミーグリがあったのも大きいのだろうか。「必ず化ける」と思っていたツアーが早くも化けようとする瞬間を目の当たりにして、ゾクゾクした。『櫻坂の詩』で目に涙を浮かべて微笑むメンバーを見て、熱いと感じたのはこちらの思い過ごしではなかったのだと、さらに込み上げるものがあった。やっぱり櫻坂は期待を超えてくれる。上述した綺良ちゃんの言葉が薄っぺらく聞こえないのも、その言葉に説得力を持たせるだけのものを見せてもらっているからなんだよなと、改めて噛み締めることとなった。


福岡公演

アイドルに別れがつきものなのはもう十分わかっているはずなのに、それでもつらい。何度経験してもつらい。卒業セレモニー(コンサート)と一括りで言ったって、一つとして同じものはないからそりゃそうなんだけど。関さんの卒業について触れだしたら大脱線して戻ってこれなくなりそうなので割愛しますが、本当に素敵な卒業セレモニーだった。一つだけ言うとしたら、あんなにも静かで、私たちには決して触れられない神聖な空気が流れるのを経験したのは初めてだった。
そして何より福岡公演、会場が狭い。本当に狭い。三階席の奥ですらステージが近い。おそらくそれもあって感じたことだが、この3rdTOUR、レーザーがふんだんに使用されていたり、中央に透ける円形モニターがあったりと、凝った演出も確かにあるけど、それ以上にメンバー自身の持つ力に懸けているように見えた。そのパフォーマンスで、生身で戦ってみせようとしているように。だとしたらそれはきっとすごく怖いことなんじゃないかと、そんなふうに思ったりもした。主観です。


神奈川公演

メンバーの口から一番「楽しい」の声を聞いたのはこの神奈川公演だったような気がする。ファンの声がすごく聞こえると、色んなメンバーが嬉しそうに口にしてくれて純粋に嬉しかった。小林由依さん曰く「Buddies の皆さんは私たちに似てシャイな人が多いのかなと思ってたけど、全然そんなことない!」とのこと。それもあってか、はたまた前の公演から空いた3週間の間に何かがあったのか、この日のパフォーマンスはものすごく熱かったように思う。ファンの熱量がメンバーのパフォーマンスを後押しすることが本当にあるのかもしれないと、自惚れに近いそんな感情を少し抱いたりもした。それから、詳しくは楽曲評のほうで後述するが、予想だにしなかったことが起きたのもこの神奈川公演だった。9公演目にしてまだワクワクさせてくれる櫻坂に、心の底から惚れ込んでしまった。絶対にこれからもついて行きたいと思った。


大阪公演(千秋楽)

公演内容について書く前に、どうしても触れておきたいことがある。ツアーファイナルを迎える少し前。大阪公演1日目のチケットが完売していない現状を受けて、ほのちゃんとまつりちゃんがブログで「悔しい」と素直な気持ちを吐露してくれた。月末の平日という社会人殺しなスケジュールで、ある意味仕方ないとも言えるが、それでも会場を埋められないという事実は悔しいに決まっている。その現実に目を向けることも、自ら発信することも、決して容易なことではなかっただろう。それでも伝えてくれた。悔しいと言わせてしまったことが悔しくて、だけど、悔しいと言ってくれたことが嬉しかった。

そこからが凄かった。その想いに応えようとTwitter では呼びかける声がたくさん見られ、どうにか都合をつけて急遽参加を決めたファンは、私の周りだけでも数人いた。そして前日の昼頃、チケットは完売したのだ。一般開始から前日まで販売状況が◎だったものを、たった一日で×までもっていった。即日完売ももちろん凄いことだが、すごく意味のある完売だと思う。メンバーとファンが、同じ熱量で同じ方向を見ているのだと、まだライブは始まってもいないのに前日からものすごく熱い気持ちになった。今でも思い出すだけで熱くなる。

(大阪公演初日、会場が埋まったことへの感謝の言葉を最初のMCで真っ先に口にしてくれたまつりちゃん。それを受けて、前日に参加を決めたオタクたちが終演後の飲みで笑って言った「ここ(最後列)に座ってることが誇らしかった」がすごく良かった。個人的ツアー感想戦ハイライト。)

ツアーファイナル。これで3rd TOURが終わってしまうことが寂しくて寂しくて。完全にひと夏の長さより・・・症候群。まだ夏にもなってないのに。いっそ始まらないでくれと思ってしまうけど、でも早く今日の公演が見たくて仕方ない。前日に『Start over!』のMVが公開され、その初披露があるはずだという高揚感が開演前こそ確かにファンを包んでいたが、ライブが始まるや否や、今はこっちに集中しろと語りかけてくるような凄まじい求心力で、あっという間に忘れてしまった。その求心力こそ、櫻坂のステージの何よりの魅力だと私は思う。ツアー初日に感じた物足りなさはもうどこにも無い。帰りの電車で『桜月』を聴いて、少し泣いた。


◇◇◇



楽曲レポート


M00. Overture

M01. COOL

「Action」「Scan」「Reload」等の文字がメインステージに映し出され、その無機質な演出は少し2ndTOURを思い起こさせる。メインステージ2階に登場したメンバーをスポットライトのように順に照らし出し、2ndTOUR同様ダンストラックから始まるオープニング。これから何が起こるのか、どんなライブを作り上げてきたのか、まるで予想もつかない、ただ再び何かが始まろうとしている。櫻坂のライブにおけるこのワクワク感、本当にクセになる。"魅せるステージ"を作るこのグループだからこそ様になるのだろうなあと思う。その後、一人センターステージに姿を現したのはこの曲でセンターを務める大園玲さん。なるほど、主役は遅れて登場する。緑のレーザーでスキャンされた後、花道を歩いてメインステージに合流し、ゆっくりと客席に振り返る。初日こそ固く見えた表情が、公演を重ねるにつれてどんどん変わっていくその姿は、見る人が見たら感無量だろうなと思いながら見ていた。真剣な眼差しを向ける日もあれば、笑みを浮かべる日も、時には笑顔を見せる日も、あった。Coolのイントロがかかる。私はこのイントロが好きだ。
個人的注目ポイントは「周りの誰かに振り回されたくはない」の小林由依さんの体幹と、「心に戦ぐ愛しさよ」の一瞬で小林由依さんの目をじっと見上げる森田ひかるちゃんです。


M02. 半信半疑

この曲、踊り方にすごく個性が出る曲だなと思ってて。私的森田ひかるちゃんのダンスの好きなところがめちゃめちゃ見れるのもこの曲。彼女、自他ともに認める体の硬さをお持ちのようだけど一つ一つのモーションというか、関節の動きって驚くほど大きいじゃないですか、サビの後ろへの反り、一人だけ別格なんですよね。挑発的に顎を少し上げる森田ひかるちゃんのファンなので至高だった。一番好きなのは、2サビの入り(ドゥン!ドゥン!ドゥン!パッ!)(伝われ)で一人大きく前に一歩出る森田ひかるちゃんなんだけど、それまで周りに紛れて身を潜めていた彼女が最後に真ん中に飛び出てくるその様が、私は彼女のこのラスボス感がたまらなく好きなんだと思った。
あとはコールが一番探り探りだなと思ったのもこの曲。観客がライブを盛り上げようとしてるのが感じられたのがこの曲。サビの「いい(ハイ!)こと(ハイ!)なん(ハイ!)かない(フッフー)」がじわじわと確立されていったのよかった。


M03. 摩擦係数

ツアー初日公演、ここで摩擦係数!?と驚いたし、同じように驚いた人は多いのではないだろうか。これに関してはツアー中ずっと答えを探し求めていたように思う。前回のツアーの主役であり、あの2ndTOURのトリを務めたこの曲を、序盤も序盤に終わらせた意味を。ダンスパフォーマンスも含めある意味異質な、他の曲とは一味違うこの曲をここに組み込んだ意図を。もう一歩踏み込むなら、メンバーが当時「櫻坂の色が見えてきた」と口にしていたこの曲を、あっさりセトリに溶け込ませた意図を。
ツアーが終わった今になってなんとなく思う。この曲を敢えて"櫻坂の楽曲の一つ"として早々に披露してしまうことで、あれから更に進化しようとしている今を、2ndTOURに縋ることなく、またある意味では2ndTOURに囚われることなく魅せようとしていたのかもしれないと。そう思ったらものすごく特別なことのように感じて。冒頭で「次のツアーはあの圧巻だった2ndTOURを超えなければならないということ。そのことをわかっているのだろうかと問いたくなるくらい」と書いたが、そんなこと、我々ファンなんかよりもわかっているに決まっている。言われなくとも感じていたに決まっている。見当違いかもしれないが、もし少しでもそういう意図があったのであれば、あの時の武者震いは間違ってなかったなと思った。てかもはやそうであれ。
森田ひかるちゃんがイントロで、いつもはただ振り払うだけの右手を、前に突き出して煽るアドリブを入れてきたのは私の記憶が正しければ大阪2日目の千秋楽だけ。思えば去年の2ndTOURでも、地方千秋楽だけ2サビのソロダンスがMステで披露してファンをざわつかせた腹筋ver.だったけど、意図的か無意識か、森田ひかるちゃんそういうところあるよね。沼だよね。


M04. それが愛なのね

天ちゃんが櫻坂にいてくれることにただただ感謝が止まらない時間だった。愛知初日の「THE TIME,終わりの松田に声負けんなァー!」が最高すぎて、かと思えば後日公開された裏側で「なんも考えてなかったんスけど。パーンって、パーンって思いついちゃって。」とチョケてて度肝を抜かれた。櫻坂にはいわゆる煽りメンがあまり居ない印象で、勿体無いなと思っていただけにこの煽りは鳥肌が立った。貴方それも担うのねと。間奏の煽りも毎公演変えてくるところに、凄いなとただただ感心しつつ、中でも一番好きだったのは「せーの!」のタイミングが上手く合わずに「ごめんなさーい!」と叫んでいた神奈川公演3日目。めっちゃ好きだった。気負わずに無邪気に楽しむことができて、しかもその"楽しい"に周りを巻き込むことができる人、そうそういないよ。天ちゃんの凄いところだなと思う。少し話は飛ぶが、MCで回し役のメンバーにガヤを入れる形で常に助け舟を出していたのも天ちゃんだった。生粋のエンターテイナーだなと思ったけど、2ndTOURで見た時はここまで強烈な印象はなかったから、この一年で変わった部分なのかなと思った。


M05. 恋が絶滅する日

何度でも言うけど、この曲、森田ひかるちゃんに「(ダンスのしんどさが)流れ弾超え」と言わしめた曲なんですよね。その曲を、そんなこと微塵も感じさせないくらい、生き生きと楽しそうに踊るメンバーよ。2ndTOURの時にも同じような感想を抱いたけど、その時よりも数倍楽しそうで、そこには、体力が付いただったり、セトリ順だったり色々あるだろうけど、その中にファンの歓声が増えたからというのもあるのだとしたら、こんなにも嬉しいことないよなと思った。
毎公演2サビで見切れの方に煽りに来てくれるほのちゃんと森田ひかるちゃん、会場全員救ってくれてすごい。本当にこの会場に来てる人全員を楽しませようとしてくれてるんだと、そういう些細なことで嬉しくなる。それからやっぱ、3つに分かれたブロックがそれぞれ向かい合ってダンスバトルをするように踊るラスサビ、熱いよなあ。メンバー同士で目を合わせて、待ってましたと言わんばかりの笑顔で、心の底から楽しそうで。
余談ですが、サビのぽいぽいダンス(伝われ)をメンバーに合わせて一緒に踊るの意外とやってる人いなくて寂しいので、騙されたと思ってやってみてほしい、めっちゃ楽しいよ。福岡公演2日目の見切れ席、このぽいぽいダンスしてる人めっちゃ居て、すごい楽しくて。って話を終演後の飲みでしたら「見切れとってまで遠征したいと思う人は熱量が違うんじゃない?」と言われ、その日見切れで入ってたオタク皆して「いやなんか…あざす、、」って総照れしたのこれ書いてたら思い出した。楽しかったな福岡。余談でした。


M06①. ブルームーンキス

森田ひかるちゃんのセリフ後の静寂は国をあげて守ってくれ派閥の私、代々木公演初日で大歓声が沸き起こった時、覚悟はしていたものの正直かなりショックを受けた。あぁそうか、息を吐くことすら許されないと感じさせられる程の、あの神聖な空間はもう二度と戻ってこないんだと。まあ一度受け入れてしまえば楽しめるタイプの人間なので数公演経てば「キャーーーーー!!!!!」と叫んでましたが。心の中で(最後の抵抗)。森田ひかるちゃん自身も、セリフの表現の仕方を"そういう曲"にシフトしていたのが分かりやすく見て取れて、曲を操ることについてこの人の右に出るアイドルはいないんじゃないかと思わされた。そのおかげで楽しめるようになったみたいなところはあるかもしれない。私の中で、これまでと全く違う曲になった。ブルームーンキス2といった感じ。良いけど、可愛いから良いんだけど、いつかまた、声を出せる状態でそれでも観客が声を飲み込んでしまうほど感情を入れ込んだこの台詞も見てみたいなとも思った。
ちなみに、このセリフで一番心臓がヒュッとなったのは神奈川公演初日。「あ、こんなに好き」の前にこれまでにないくらい、必要以上に井上を見つめる森田ひかるちゃんに私が殺られてしまった。(私「……井上になりたい」オタク「あ、そうやって見る曲なんだこれ」)あと、小林由依さんを後ろから抱きしめる大園玲さんの図、見てはいけないものを見てしまった感すごかったんだけど何ですかあれは?秘密の花園?


M06②. 偶然の答え

この曲のパフォーマンスを生で見たのはこのツアーが初めてだった。偶然の答えのオタクから散々「偶然の答えはいいぞ」と言われてきたのですが、その凄さをようやく目の当たりにし、やばいものを見た…しか言えなくなってしまった。この曲の魅力に気付かないままオタク人生を終える可能性があったと思うともはや恐ろしい。
何が凄いって藤吉夏鈴が凄い。次の『五月雨よ』にまで引き摺ってしまうほどの没入力。ライブ中は基本ほのちゃんか森田ひかるちゃんを双眼鏡で追いかけている私が、どう頑張っても藤吉夏鈴から目を離せない。代々木公演では一曲を通してどんどん苦しい表情になっていった夏鈴ちゃんが、愛知公演では「スペイン坂を降りて」で少しやさしく微笑んだように見えた瞬間、このパフォーマンスは物語なんだと感じた。重く苦しい偶然の答えもあれば、希望が差すような偶然の答えもあるのだと。印象的なのは、大阪公演の涙。曲が進むにつれてどんどん目に涙を浮かべていき、最後は完全に頬を濡らしていた。夏鈴ちゃんがこの歌詞に何を想い、何を見て、何を表現したいと思うのか。日によって変わるその表情から、彼女の今日の解釈を読み取りたいと、瞬きすらできなかった。


M07. 五月雨よ

ライブで聴くこの曲ってどうしてこうも涙腺にくるのだろう(n回目)。やさしく微笑みながら「どんな時も絶えることない永遠を愛と信じてる」と丁寧に丁寧に愛を紡ぐ彼女たちを見ていると、信じられるような気がしてくる。信じたいと思う。私は櫻坂のことが好きなんだなぁと、何となく温かく穏やかな気持ちになって、何かと比べることなくただ好きと思えるものがある自分が、すごく幸せ者のような気がしてくる。不思議だ。ただ、ただ祈る。今ここに溢れる愛が、このままずっと続きますようにと。
福岡公演初日、自分の歌割り「はっきりとしないのは天気も気持ちも同じ」を歌い終えた後、不自然にある一点を見つめるほのちゃんがいて、その視線の先を辿ってみると関さんがいて。胸が締め付けられて仕方なかった。福岡公演2日目は、アンコールでのMCで「五月雨よで関さんと目があったのは私!」対決が行われていたけど、初日のこの曲、一番が終わり階段を登る直前にほのちゃんと関さんが目を合わせていたのを見て、双眼鏡越しに一人ひっそりと泣いた。
それから大阪公演2日目。歌い出し前の天ちゃんが、いつものように少し微笑んだ後、どこか思い詰めるような、何かを噛み締めるような表情を浮かべていた。千秋楽にして初めて見た表情だったように思う。最後だと意識して気持ちを入れ込んだのだろうか。いつもと何が違ったのだろうか。それでも「五月雨よ 教えてくれ」の声は今ツアーで一番大きかったような気もして。どちらも"気がする"なんだけど、その曲に"入る"瞬間を見て鳥肌が立った。
最後ラスサビで横一列になって歌う彼女たちの姿を見て涙腺が緩むのは、今に始まったことじゃないので割愛しますね。個人的ハイライトは、ラスサビ前のWowで階段を降りてきて、「小雨になった」を歌う直前に暗闇の中で一瞬目を合わせる森田村です。


M08. もしかしたら真実

2回に1回の割合(私調べ)でこっそり戯れてた森田村に全部持っていかれてそれ以外の感想吹っ飛びました。


M09. 無念

初めて音源を聴いた時、言葉を選ばずに言うとなんかもう本当に絶句した。「どんな努力してみたって ちゃんと結果が出ていなくちゃ意味がないんだ」「いつまで競い合えば 君を友と呼べるんだろう?」「そんなことを言ったって何も評価されないんだ 結局 自分の力が足りない そういうこと」…正気か????なんて歌詞を歌わせるんだと戦慄して、ツアーでこの曲を見ることに恐怖心さえ覚えた。そうして迎えたツアー初日、全部救ってくれたのはこの曲のセンターを任された松田里奈だった。まつりちゃんのラスサビのあの弾けるような笑顔が、モヤモヤした感情を一瞬にして吹き飛ばしてくれた。なんて強い子だろう。一曲を通してずっと苦しそうな表情で歌うメンバーもいたし、しかもそれは一人じゃなくて。その表情が"解釈"なのか"感情"なのかは本人にしかわからないけど、正直そりゃそうなるよなと思う。だってこの歌詞、悔しすぎる。私だったらなかなか咀嚼できないなと思うから、だからこそそんな中でまつりちゃんは太陽だった。敢えて名前は挙げないけど、ある歌割りでずっと辛く苦しそうな表情をしていた子が、最後千秋楽で、笑顔は見せずとも目に力強い光を宿しているように見えた時は、グワッと熱く込み上げるものを感じた。


M10. 夏の近道

ありがとう、夏の近道。ありがとう、三期生。おもてなし会の後、その感想に「『櫻坂三期生』と書いて『未来』と読む」と書いたんだけど、このツアーを通して、それは少し間違っていたかもしれないと思った。櫻坂三期生、『未来』であり、紛れもない『現在(いま)』だった。いくら声の出しやすいコール曲だとはいえ、ここまで盛り上げたのは紛れもない三期生の力。もちろん楽曲の持つ力もあるだろうけど、唯一の、そして初めての持ち曲に対する思い入れの強さ、初めて先輩と一緒に作り上げるライブに対する緊張感や高揚感が、そのフレッシュさと相まって、たった一曲で会場のボルテージを最高潮に持って行ったのだろうと思う。ダンスも全力、煽りも全力、髪を振り乱し、手足を振り上げ、きっとまだ引くことを知らない三期生の全力のパフォーマンスは、ツアーを通してずっと気持ちが良かった。楽しかった。最高に。
その後のMC、盛り上げてあげたいという気持ちもあったのだろうけど、オタクってほんと新しい子好きだなと笑っちゃうくらい盛り上がってて微笑ましかったね。毎公演自己紹介考えてえらいね〜と母親面(ヅラ)が止まらなかったし、そのMCの回しを分担で任されたゆづとこんなぎ偉すぎてお年玉あげたかった。特に好きだったのは、的野「みんなに〜甘えちゃうぞ」の鬼低音ボイスと、毎度毎度村井優ちゃんからの高低差が凄い村山「はい、東京都出身18歳の…」のローテンション自己紹介。千秋楽の煽りでオタクの声に満足できず素のトーンで「まだ足りません」とバッサリ切ったゆづ、大物になりそうでワクワクするね。愛おしいよ君が。


M11. 魂のLiar

代々木公演初日に初めて見た時、正直個人的にあまり刺さらなくて。1サビからクラップという一見終始単調なパフォーマンスに、盛り上がりどころが掴めず肩透かしを喰らったような感覚だったんだけど、この曲、自分次第でどこまでも楽しめる曲だと気付いてからはすごく楽しかった。一緒に踊って、サビでクラップして、ラスサビは双眼鏡でメンバーそれぞれのフリーダンスを堪能して。もはや勝手にめちゃめちゃ楽しんでたし、ツアー後半はもう「たまらいキターーーー!」になってたから、ライブなんて本当に楽しんだもん勝ちだなと思った。楽しいこと、しよう。これに尽きる。
みんなが横に大きくクラップする中、一人前後で手を叩く森田ひかるちゃん、イケてて良いですよね。ラスサビのフリーダンスも、公演を重ねるごとにどんどんそのバリエーションが増えていくのが見ていて楽しかったし、何より、毎公演進化するパフォーマンスの裏に試行錯誤が感じられて何というかものすごくときめいた。他にこのフリーダンスで特に目に留まったのはダンスの上手さに定評のある小林武元山﨑の3人。生き生きとしていて、この子たち本当にダンスが好きなんだなあとにこにこしてしまった。微笑ましかった。


M12. Nobody's fault

先にこの曲前のダンストラックの話をしたい。広い広いメインステージでただ一人舞う森田ひかるちゃんの話。他のメンバーの準備に当てられた時間なのだろうけど、彼女のために用意された時間なのではとすら思ってしまった。何よりすごく楽しそうなのが全私に刺さってしまって。途中裏拍で4回ノックする振り付けがあって、そこで時々笑うんですよね彼女。ダンスが激しくなればなるほど、しんどくなればなるほど楽しそうに笑う姿からは本当に踊るのが好きなんだなと伝わってくるし、その姿を見るとただただ息が、止まる。森田ひかるちゃんが笑ったら、その日のライブの勝ちを確信するまである。そんなこんなで森田ひかるソロダンスパートから始まる曲がNobody's faultなの、痺れませんか。私は痺れた。
私は髪を操ることすら表現の一部にしてしまう人に惚れる節があるのかもしれない。それともたまたま私が惹かれた人が皆その術を身に付けているだけなのか。センターのポジションについた後、イントロが流れる直前に顔にかかった髪を掻き上げるようにゆっくりと払った右手。Aメロで後ろを向いてしゃがんだ後、立ち上がる寸前に(おそらく立ち上がって前を向いた時に髪が顔にかからないように)さりげなく抑えた髪。どの公演でのことかは忘れてしまったが、森田ひかるちゃんのその仕草に、声にならない声が出た。
個人的にこの曲だけはガチガチにフォーメーション組んで披露してほしいというのがあって。というのも、フォーメーション移動も少なく、どこか軍隊っぽさすら感じるパフォーマンスに、改名後の闘う意志のようなものを見た気がしてたからなんだけど。神聖なものとして特別大事にされてほしいというか。そういう訳で、ステージの上下に分かれて散らばって披露する今ツアーの演出が本当に刺さらなくて(ど正直やめなね)。ツアー初日、森田ひかるちゃんの大サビ前大ジャンプを奪い去った代々木公演に関しては唖然だったので、次の愛知公演では復活してて胸を撫で下ろした。だよね、必要だよね。あれがなきゃ始まらないよね。正直に書き過ぎたね。次行こう次。


M13. なぜ 恋をしてこなかったんだろう?

2ndTOURで見ていた時と比べて夏鈴ちゃんが段違いに楽しそうで、この子この曲こんなに楽しそうに踊るんだってこのツアーで初めて知った。この曲で見せる笑顔はきっと紛れもなく本物で、特に2日目の公演は毎回、偶然の答えで見せる表情との対比に驚かされた。


M14. 流れ弾

いつもは操られる側だったほのちゃんが、そんな自分を冷ややかな目で客観的に見つめるという、これまでの流れ弾とは解釈がガラッと変わった今ツアーの演出。初めて代々木公演で見た時は、ある意味冷静、ある意味入り込めていないような印象で、表現が難しいのかなと感じてたんだけど、その直後のミーグリで今までと心持ちは違うのか聞いてみたらやはり違うらしい。「理性をぶっ壊さないといけない演出」とのこと。どちらかというと元来の演出より理性を保っているのかなと感じていたから(特に前半)個人的に意外で、だから、このツアーでその表現を感じ取るというのが私の密かな目標になった。
がしかし、その後初っ端の愛知公演。いきなり「理性をぶっ壊す」を浴びることとなった。私は、曲が進むにつれて苦しみからの解放と共に狂気を纏った清々しい表情で笑う流れ弾が好きで、私がこれまで見た中では2ndTOURの福岡公演2日目が個人的に至高だったんだけど、この日、それと同じくらいの(つまりこの時点で過去一レベルの)ものを見せられた気がした。と同時に、前述した通り、この日は代々木公演の数百倍くらい会場の熱気がすごくて(当社比)、もしその熱気に引っ張られた部分もあるのだとしたら、このツアーでもっと進化するのかもしれないと胸が高鳴った。福岡公演は感情的だったような気がする。苦しそうで、その苦しさを閉じ込めようとするようで、なんとなく少し見ていられなかった。
続く神奈川公演。の前に、代々木公演後のミーグリで彼女はもう一つこうも言っていた。「楽しんでやってる」。なるほど、とその言葉も頭の片隅に入れてツアーを回ってたわけなんだけど、この神奈川公演(特に3日目)、鳥肌が立った。それも全身に。うわああああああああああこれだあああああああああ!!!!!と。彼女、この曲を完全に楽しんでいた。そしてこの日、いつもは曲が終わると同時に左手をだらんと下ろして終わりだが、右手の人差し指で鋭く観客を指してきたのだ。そのアドリブは、こちらが思わず萎縮してしまうほどだった。
そしてツアーファイナル大阪公演。流れ弾を完全に飼い慣らしたほのちゃんは、「理性をぶっ壊す」という意識を特別持たずとも、感情のままに"楽しい"を曝け出しているように見えた。理性なんてどこへやら、「やばい、抑えないと」とむしろ理性を働かせようとする声すら聞こえてきそうなくらい本能的で、魅力的だった。その姿は紛れもなく流れ弾の主人公であり、そしてきっと田村保乃だった。これだ!!!!!!(2回目)と心の中でガッツポーズしたし、連番が隣で静かだなと思ったら軽く酸欠になっていて、この曲の持つ凄まじさを痛感した。3rdTOURでほのちゃんが作り上げた流れ弾をなんとなく掴めたような気がして、心が躍った。
時は少し遡り神奈川公演初日、この日のほのちゃんは苦しみを纏っているわけでも狂気的なわけでもなく、どちらかというと悲しみに近いような、切実で、人間味の強い表情をしていたのが気になっていた。だけど、あの人間味は、ここに辿り着くための過渡期だったのかもしれないと今振り返って思う。神奈川公演3日目のアドリブは大阪公演2日目でもしていて、その大阪公演2日目は他にも、「その他大勢の人に紛れて」で元来の振りにあるヘドバンはせずに両手で顔を覆うように天を仰いでいた(これもう一箇所他の地方公演でもしてたんだけどどこか忘れた…)。遊びを入れる余裕が生まれるほど、この曲を自分のものにした田村保乃、天晴れだよもう。
長々と語ったけどこれ全部私の主観的解釈なので、流れ弾のオタクいたら語りにきてほしい。めっちゃ語りたい。共感も解釈違いも全部聞きたい。
あとこれは余談ですが、基本野鳥の会してるけどモニターで大きく映される表情は見逃したくなくて、いつもこの曲は特に双眼鏡を掲げたり下ろしたり忙しなくしてるんだけど、神奈川公演2日目、この曲を終えて余韻に浸ってたら隣のおじ様に「保乃がモニターに映るタイミング全部覚えてるんですか!?」って聞かれたのまだおもろい。当たり前だろ流れ弾のオタク舐めんな。(めっちゃ良い人だった舐めんなとか言ってごめん。)


M15. Dead end

中央のスクリーンに「3rd members」と映し出され、どの曲を披露するのだろうといくつか曲を思い浮かべていると、流れてきたイントロは全く想像すらしていないものだった。てっきりおもてなし会で披露した曲の中から一つ選ぶものだと思っていた。甘すぎた。そんな守りに入るグループじゃないことくらい分かっていたはずなのに。とはいえ、本家Dead endを待ちわびていた私、初日は頭が混乱して、三期生によるDead endだと理解するのに時間がかかった。それでも、終演後に「どうだった?」と聞かれて一番に出てきた感想は「めちゃくちゃ良かった」。悔しかった、良すぎて。一瞬でも落胆してしまったことを全力で謝りたい。披露曲数が少ないからか、一曲に懸ける想いの強さを感じる。『夏の近道』でも書いたが、三期生のギラギラした暑苦しいパフォーマンス、大好きだ。
そしてもう一つ。

TAKAHIRO先生「感情を入れるのが苦手とか言われたんじゃない?たぶん今まで技術でやってきたから。それはすぐ感情が入るかって言われたらこの三日で一気になれるわけではないと思うから。この中で誰よりもテクニックを持ってて、テクニックで誰よりも引っ張れるぜって人にまずなることを目指して、そこに感情の入れ方っていうのもどんどん学んでいくといいと思います。」

三期生ドキュメンタリー『私たち、櫻坂46三期生です』
+2 Another Story

三期ドキュメンタリーでのTAKAHIRO先生による村井評。印象的だったからよく覚えていた。この曲で彼女をセンターにしたのは、(上手い言葉が見つからないけど)荒療治でもあったのかなとも思った。彼女がその皮を剥けるように。というよりはきっと、皮の剥けた彼女が見たかったのかなと。そして実際、めちゃくちゃ良かった。叫ぶような煽りも、顔に髪がかかっても楽しそうにそのまま踊り続ける姿も、めちゃくちゃ魅入ってしまった。このツアーを通してすごい皮剥けたんじゃないかなあと思った。あと私はドキュメンタリーを見ていた時から村山のパフォーマンスの大ファンなのですが、私の好きな村山のその感情を全面に出したダンスがDead endに超が付くほどハマってて最高でした。


M16. 条件反射で泣けてくる

やはり間奏のダンスが好きすぎる。欲を言えばメインステージで全員で踊り狂ってほしいところだけど、円形になっているからこそ自席の位置によって公演ごとに違うメンバーに目を向けられるのは良かった。そういうわけで愛知公演2日目のこの曲、初めて肉眼で表情を確認できる位置で小林由依さんのパフォーマンスを見れたのですが、ちょっと贅沢すぎたし、画面越しや双眼鏡越しで見る何倍もやばくて一秒も目が離せなかった。ラスト、一人だけ明らかにキレの次元が違っていて、動きに迷いがなくて、怒りともとれる鋭い目をしていた。


M17. BAN

三期ドキュメンタリーで課題曲『BAN』に挑戦する三期生の合宿の様子が公開され、その姿は多くのファンの心を掴んだ。何を隠そう私もその一人である。だからしっかりおもてなし会にも足を運んだし、そこで三期BAN初披露を見て、涙が出た。櫻坂になるために、櫻坂の一員だと言えるようになるために、ひたむきに真っ直ぐにこの曲と向き合ってきた三期生に感動したと同時に、これは凄い相乗効果が生まれるぞと、先輩たちを奮い立たせるほどの爆発力を持っていると信じて疑わなかった。だからずっと楽しみだった。これを受けて先輩たちは、森田ひかるちゃんはどう感じているのだろうと。次、どんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうと。
ユニ春ライブは行けなかった(大泣き)ので、それが見られるのはこの3rdTOUR代々木公演初日となった。一曲前の「条件反射で泣けてくる」が終わり、暗いステージに浮かび上がったのは森田ひかるちゃんの影。何をするでもなくただじっと立つ彼女。どれくらいの時間が経っただろうか、他のメンバーがステージに姿を見せ、彼女を囲むようにしてポジションにつく。来た…。一言で言うと、最高だった。間奏のユニゾン前に長いアレンジを入れてきたときは、くぁ~見せつけてくるねえと思わず笑ってしまった。しかも森田ひかるちゃん、アレンジパートからユニゾンに移るその一瞬の間にまたあの挑発的な笑みを向けてきたのだ。笑うのだ。してやったりとでも言うかのようなあの笑み、たまらない。そして圧巻のユニゾン。やっぱ先輩たち流石だなと言いたくなるほど圧巻だった。最後から二曲目にBANというこの鬼のようなセトリで、疲労も溜まっているであろう中で、どうしてそこまで揃うのか。しんどさにかまけて手を抜くメンバーがいないからだろう。「これくらいでいいかな」と考えるメンバーが一人でもいたら成り立たないに決まっている。最高だった。最高だったんだこの時点で…
(ちなみに愛知公演初日、Aメロのアドリブ部分(よく手で文字作ってるところ)で森田ひかるちゃんが、挑発するようにクイッと曲げた右手とその表情だけで、何も発さずとも「もっとイケるでしょ?」と会場を煽っていて痺れ散らかしたのでここに書き残しておく。)
◇◇◇
神奈川公演3日目。
一つ前の「条件反射で泣けてくる」が終わり、この日もいつも通りメインステージに森田ひかるちゃんの影が浮かび上がる。はずだった。とんでもないことが起きた。予想だにしていなかった。浮かび上がったシルエットが明らかに違うのだ。身長も、髪の長さも。これまで黄色の照明が当てられていたステージはピンクで照らされ、何か違うことが起きようとしていることだけが分かる。尋常じゃないくらい鼓動が早くなった。初日こそ頭を過りはしたが、ここに来て想像できた人はいないだろう。三期生によるBANが始まった。
正直な感想を書こうと思う。私はこの時、三期生にバトンタッチしたのだと思った。結果的にとんだ勘違いだったわけだが、三期生のために道を作り、レールを敷くためのこれまでの8公演だったのかと感じ、ショックを受けなかったと言えば嘘になる。というかショックだった。私はやっぱり森田ひかるちゃんのBANが好きだから。そうか、譲るのかと思ってしまった。何より、その三期BANが凄かったのだ。怒涛のダンスナンバーで畳み掛けるこの終盤のステージに引けを取らない、素晴らしいものだった。だからこそ悔しかったのかもしれない。
森田ひかるちゃんの、呆れを合んだ嘲笑的な「時間はあんなにあったじゃないか」とはまた違う、石森さんの「時間はあんなにあったじゃないか」。不甲斐ない自分への怒りを込めたようなそのセリフは、おもてなし会で見たときよりも数段火力が上がっていた。くじ引きで決まったセンターというポジション。この時にはまだ、初めてのツアーで先輩たちと同じステージに立つ時にも自分がそこを任されることになるとは思ってもいなかっただろう。ただ真似するのではなく、自分の解釈で立ち向かった彼女。とんでもない重役を、見事にやってのけた。
そんなこんなで下唇を噛みながらも圧倒されていると、さらに衝撃的な展開が待っていた。とんでもなく強いもう一つの隠し玉。1サビが終わると左右に分かれ、真ん中に広く道を開けた三期生。そこに、森田ひかるちゃんが引き連れるようにして、先輩たちオリジナルメンバーが現れたのだ。歩く姿だけで他を圧倒する凄まじいオーラ。沸き立つ会場。言葉が出ない。ここがワンピースの世界なら、きっとこれを覇王色の覇気と言うのだろう。ステージの先頭まで来て、笑ってみせた森田ひかるちゃん。涙が出そうになった。
そこから先のことは正直あまり覚えていない。一つだけ鮮明に覚えているのは、最後、森田ひかるちゃんがニヤリと笑いながら唇を舐めたこと、おそらく無意識であろうその仕草と表情がとても妖艶だったこと。楽しそうだった。すごくすごく楽しそうだった。のびのびと踊り狂い、時折笑みをこぼし、そしてその熱は会場中に伝播していく。これから先、櫻坂がたとえ何千何万人を擁するグループになったとしても、森田ひかるちゃん、BANの先頭には貴方が立っていてほしい。先頭に立って櫻坂を従え、これは私の曲だと言わんばかりのギラついた目を、その圧倒的な存在感を見せてほしい。そう思わずにはいられないラスト3公演だった。
三期生にとっての礼儀は先輩たちを超えること。三期ドキュメンタリーでのTAKAHIRO先生の言葉を思い出す。だとするならば、先輩たちにとっての礼儀は「超えられない壁であり続けること」だろうか。先輩への憧れをこの時ばかりは胸にしまい、気迫と勢いで立ち向かった三期生。対して、経験と誇りを以て立ちはだかる先輩たち。曲の背景も手中にある武器も明白に違う両者が、BANという一つの曲を完成させ、確実に一つ上のレベルへと昇華させた。櫻坂46、熱い。相当熱かった。


M18. 桜月

今ツアーの主役。トリを飾る儚く美しいこの曲は、BANの後に披露された。もう一度言う、BANの後である。会場の熱気が最高潮に達した中、そして時に鳴り止まない拍手の中、メインステージには"LAST SONG"の文字が浮かび上がり、大きな桜の木が現れ、花びらが舞い散る。だんだんと静寂が満ちて行く。センターステージに一人静かに登場し、花道をゆっくりと歩く今シングルのセンター守屋麗奈の姿は、桜のように美しく、堂々としていた。ツアー初日も、同期の卒業の時も、スペシャルBAN初披露の後も、千秋楽も、どんな時も何にも動じることなく、ただ強く、逞しかった。
イオンカードライブで初めてそのパフォーマンスを生で見た時、あまりに感情的なダンスとメンバーの表情に心臓を丸ごと鷲掴みにされて思わず固まってしまったんだけど、ツアーを通して公演を重ねるごとにさらに研ぎ澄まされていく様に、魂を感じた。ただ葛藤をぶつけるような、その葛藤に感情を任せるようないい意味で荒削りだったパフォーマンスに、切なさ、もどかしさ、諦め、、そういう色んな感情が吹き込まれていくようだった。清々しい爽やかな表情を浮かべているのを見た時は、そういう解釈もあるのかと、驚かされたりもした。もう一度言う。魂だった。
ラスサビ冒頭4小節、瞳を閉じてグッと苦しみを心の中に閉じ込めた後、これまでになく感情的に、その行き場のない切なさをぶつけるように舞い踊る姿を見ながら、終わらないで…と思わず溢してしまいそうになる。終わってしまう。この曲が終われば、今日のライブはもう終わってしまう。
曲が終わり、れなぁが再び花道を歩き始める。まるでこの時間だけ姿を現した桜の精霊が木に帰って行くように。メインステージに残されたメンバーはれなぁに背を向けステージを後にし、伸ばされたその手が彼女に触れることはない。幾万の光の中で、桜色に染められながらゆっくりと歩を進めるれなぁ。静かな時間が流れる。何公演目からだろうか、綺麗だなとその光景を見つめていると、ふとこの曲の歌詞が頭をよぎるようになった。

ずっと咲き続ける花がないように
こうしていられないのなら
どうやって綺麗に散ればいいか考えたんだ

一人センターステージに辿り着き、その時間を惜しむようにステージの上を一周する。一面ピンクに染まった会場。息を呑む観客。目をつむり、首に両手を当て、噛み締めるように前に広げる。

空に舞い上がってただひらひらと
何度も思い出せるように
名残惜しくゆっくり落ちてゆけ

皆がじっと見つめる中、暗闇に消えて行く彼女と、浮かび上がる"Thank you"の文字。毎公演、最後は長く大きな拍手に包まれた。
綺麗だった。その全てを今でも鮮明に思い出せるくらい綺麗だった。そしてきっとこれから先、この景色を幾度となく思い出すのだろう。正直、アンコールなしで桜月と共にライブを終えても良かったのではとすら思う。そのくらい美しい最後だった。



総括


〝櫻坂46の今、一瞬一秒でも見逃すと必ず後悔する。〟


ツアーを回って一番感じたこと。そう思わせてくれるグループに出会えた私は本当に幸せ者だと思う。そしてその今を、今のこの熱量で追いかけられていること、きっとこんなにも贅沢なことはない。

楽しかった。全11公演、本当に楽しかった。行って後悔した日は一度もない。毎公演新しい発見があって、毎公演新鮮な感動があって、そして全部地続きだった。必ず化けると感じたライブが、どんどん進化していくその様を見届けることができた。ツアーを回る上でこれ以上の幸せがあるだろうか。やっぱり私は櫻坂46のライブが、櫻坂46が好きだ。



ありがとう、3rdTOUR。
ありがとう、桜月。
ありがとう、櫻坂46。


暑い夏の訪れを予感させる、暑い春だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?