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リアルってなんだろう

ちょっと前にTwitterで「ドイツ軍のジャッキ台は何色か」という話題が上がっていた。ジャッキ台自体木製だから木の色で塗ってしまっているが、当時の写真を見てると車体色と同じ色のジャッキ台が散見され、実際どうだったんだろうか…みたいな流れだった。

普段わりとボンヤリ模型を作ってるが、時々我に返って「俺はスケールモデルを作ってるんだから実物みたいに超絶リアルに仕上げなきゃ」ってなる時がある。とはいえそれって瞬間的なもので、ちょっと経てば「うん、プラモデルは楽しく作ろう」っていう言い訳(開き直り)をしてしまうんだけども。

そもそも「リアル」ってなんだろうって思う。僕はスケールモデルだけじゃなくてガンプラやフィギュアも作るからリアルの方向性ってそれぞれ違うから気を付けたいところでもあるけど。

スケールモデル(僕の場合は戦車と飛行機かな)の場合、文頭で触れたように「実物がある」からそれに近ければ近いほど「リアル」という事にはなる。荒れた装甲板だったり弛んだ履帯だったりへしゃげたフェンダーだったり錆びた排気管だったりリベットだったり剥げた塗料だったり。演出とも言えるが、リアルに見せる方法はたくさんある。

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例えばこのIS-2の場合。対空識別用白帯が描かれているという事はベルリン戦。「大戦末期のIS-2」のアイコンとしては非常に分かりやすく目を引くが、実際この白帯が描かれたのはいつ頃か?ベルリン戦最中だとするとこの上にあんまり激しく汚れを載せるのは違和感がある。ベルリン戦は短いからね。ひょっとしたら描かれて2~3日しか経ってない可能性もある。かといって「白の上から汚れは入れない」という選択肢を選ぶと「模型的見栄え」という視点からは違和感を感じてしまう。

ここで気を付けたいのは「戦車模型なんだから汚れてないとリアルじゃない」と感じてしまう点。何度も触れているがスケールモデルは如何に実物に近づける事が出来るのかを重きに思われがちなので、それだったら白帯の上へは精々土埃ぐらいしか付着しないのがリアルなはず。なのに僕らは白帯の上に雨垂れやサビがかかっていないと落ち着かないのである。

まあこの白帯だけに限れれば終戦間際、もしくは終戦直後にしてしまえば汚れていても問題はない。

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飛行機だって同様で、このスピットファイアMK.Iはどういう過程で汚れていくのかというのを考えながら作りたい。バトルオブブリテン真っ最中でギリギリの整備の状態で迎撃に飛び立っているのか、それとももう少し余裕がある頃にきっちりと整備された機体なのか?当時の写真を見ながら考えるのもいいし、その状況に置かれた自分だったらどうするのかとか考えるのも面白い。そこは模型の楽しみ方だと思う。

ただ、模型だからこそ気を付けたいことも多い。昔から模型誌に載っているハウトゥがあり、今ならSNSで紹介されるテクニックもたくさん見る事が出来るし、それを上手く導入していくのも自分が模型を作るための技術力向上としては必要な事だと思う。素材も増え、表現の幅も随分広がった。ただ、あまりにもそれを鵜呑みにし過ぎると本来の目的である「実物っぽくリアルに見せるための技法」から「模型的リアル表現」に徹してしまう事も多い気がする。35倍したら実物に見えるのか、1/35が実物なのか。

古い話で恐縮だが、AM誌で高石師範がチッピング技法を紹介してからは数多のモデラーがこのチッピング技法を取り入れた。ただ、やはり入れる事が目的となり「何故そこの塗料が剥げるのか」などを無視した作品もあった記憶がある。その技法を取り入れる事自体が「リアル」であり、リアルにウェザリングするという目的から外れてしまっている。

しかしこういう話をすると「模型だから」という返事が返ってくる事も多い。まあ、そりゃその通りだよなと僕も思う。模型的見栄えやメリハリって大切だ。だけど本来その技法はどういう目的で生み出されたのか?模型を実物みたいにリアルに見せる為の技法ではあるが「理由」と「目的」をはっきりさせないとリアルには見えない。そこに土埃は溜まるのか。どこからオイルが垂れるのか。どれくらいの頻度で整備されてるのか。「模型的にかっこいいでしょ」というのは間違いではないがそれがイコール「リアル」ではないと思う。それを意識した上で「模型的かっこよさ」演出をしたいものである。

とか言いながらジャッキ台は木の色のほうが見栄えがいいんだよね。今度作る時に車体色で塗ってみよう。■


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