こんなものもありましたw

ニジマス~二次創作Aラシ、リーダー目線


 ぽかっと休みができた。
 絵を描こうか釣りに行こうか。
 前回の休みに絵は描いた。
 釣りに行こう。

 目立たないで行く方法は、特別変装しないこと。
 普通に電車に揺られて、窓の外の景色を見てる。
 うとうとしたり。

 ふつうにしてると意外に声かけられない。
 ま、早朝だってこともあるかな。
 何釣ろうかな。
 何釣れるかな。
 ふたたびうとうととして、ふと目、あいたら目的の駅。
 慌てて下りる。
 七分ほど歩くと海に出る、はず…

 出ない。
 朝靄の道をただ僕ひとり、釣り竿持って歩ってる。
 海じゃない。
 川もない。
 どちらかというと、山…?
 靄の中を進む。
 あまり慌てるたちじゃないからいいけど、靄抜けたら百年経ってましたってのだけは勘弁だなあ…

 と。

 目の前に、とても淡い色の少年が立っていた。
 君は…と思ったら、頭の中に直接声が響いた。
 僕はこの間、あなたがリリースしてくださったニジマスです。
 親切のお礼、言いたくて、こんな形で呼んでしまってすみません。
 え?
 それはいいんだけど、君、元気ないじゃん。
 実はあのあと別の釣り人に釣られてしまって…
 そのままリリースもされずに岸辺にポイと…
 まじで!?
 そんなん君死んじゃうじゃん!
 …
 死んじゃいましたー。
 でもそれだけにあのときの親切が嬉しくて、どうしてもお礼言いたくて…
 僕の目から涙が零れた。
 ごめん。
 人間バカでごめん。
 君たちを、自然とか、どうして大事に出来ないんだ…
 泣く僕を、ニジマスはただただ優しく見て、優しく見たまま消えてしまった…
 いつまでも消えない靄の中で、僕はただただ涙を流し続けていた…

 Aラシに*やがれの撮影終わって帰り仕度してると、新人ADの山(ヤマ)が近づいてきた。
 オツカレサマッス。
 あっども。
 こないだの釣り企画、視聴率14%あったそうっすよ?
 あそう。
 スゴイッスネー。
 大野君帰ってから、釣りシーン足んねーってなって、オレ大野君と同色のライフジャケット着て、バンバン釣ったっすよ。
 さいご入れ食いで、リリース暇なくなっちゃって、

 待て。

 おまえがニジマス死なせたの?

 目で問う間に拳が先に動いた。
 次の瞬間ADは、ニメートル先に転がっていた。


 謹慎になった。
 これ幸いと絵ばかり描いてる。
 しばらく釣りはいいや。
 な。
「リーダー」
 勝手に上がってくるのは翔だ。
「ちゃんと反省してる?」
「してるしてる」
 言いながら、絵筆は止まらない。
 翔が覗き込んで、
「誰」
「ニジマス」
「それ魚の名前。どう見てもそれ人間でしょ?」

 白い少年が靄の中に立っている絵。
 自分は全然悪くないのに、僕にあいさつに来た、小さな一匹の魚。
 僕は君を忘れない。
 約束だ。

それでも地球は回っている