ムーンリバー/リバームーン


月と川
かたや空に在り
かたや地に在る
月を水面に映すばかりの存在である川は、天を見上げてため息つくばかり

わたしはいつも見上げるばかりだ
たまには上から見下ろしたい

なら代わろうか

厳かな声がして
気づくとわたしは天空にいた

わたしが月!?
うわあー!

そのうわあ!は喜びではなかった
高い
怖い
こここ、怖い・・・

そう
わたしは高所恐怖症だったのだ
そしていま川は、
さっきまでわたしだった川は、
自由の喜びにきらめきながら、流れ流れて下って行く
あの厳かな声で
自由だ!
自由だ!
と繰り返しながら

あああの日々は自由だったのだ

いまごろ知ったわたしはただただ、おののきながら中天に昇る
誰かがわたしを羨むのを待ちながら
今宵もわたしはただただ中天を駆けるのだ

それでも地球は回っている