てぬぐいろくろう
おまえが主人公なのかよ。
何が不満なんだよ。
かさいちろう兄さんが目立つのはしょうがないよ。
兄さんなんだから。
でもかさじろうはにばんめだろ?
二番目でも兄だ!
二番目の兄にすぎぬじゃないか!
かささぶろうとかさじろうがもめてる。
かさしろう、かさごろうは高みの見物。
まあきょうだいはそんなもの。
ちょっと早く生まれたくらいでまあ。
大人げないね。
大人げない。
そんな会話を背中で聞いて、私は今日も手ぬぐいを濯ぐ。
あの晩。
足りなかった笠の代わりに、自分のほっかむりほどいて、私に被してくれたあの爺(じい)の、ほんものの優しさが染みている。
大事に洗って大事に使う。
飢饉も戦さもないように、私はそっと祈っている。
それでも地球は回っている