過去との対峙〔読み物100〕

肌が若い。
瑞々しい。
どうしてだか、私は24の自分にタイムスリップしている。
タイムスリップ、そのものではないかな、肉体は持ってきてないから。
意識だけ、スリップしてきたのだ。
うわあ、うわあ、シミもくすみもない肌。
きゅっと締まった腰。
こうだった。
確かに私こうだった・・・

おはようゆりちゃん!

ぽーんと。
無遠慮な手が私のお尻をひっぱたいてゆく。
課長!島豊作!
セクハラまじんんんっ!

そういうのは!!

言いかけて、口を噤む。
畜生!時代がまだ!!
あああああああああっ!
メラメラしてる私を気にするでもなく、課長も課員も普通に、始業前の時間を寛いでいる。

こないだの接待オイシカッタよな。

まさかソープまで、経費で落ちるとは思いませんでした。

な?な?
出してみるもんだろぉ?
あそこ高級ソープだから、通常俺ら絶対行けねえ。
良かったろ。

え、えへへへへへへ・・・


耳を覆いたくなるような会話。
こいつらは、今の世では、とうてい受け入れられない社会規範で生きているのだ。
でも、私もこの世界にいる以上、この時代のルーティンからは逃れられない。
私はのろのろと、雑巾とバケツを手にする。
デスク周り拭いたら、お茶をいれる。
その後は・・・
後の時代に私が直属の上司になっていることなんか、彼らは微塵も知らない。
島がリストラになることも、彼らは微塵も知らないのだ。


それでも地球は回っている