しゃべるピアノ

娘が昨今サボとわかって私はもう、大激怒!
お教室に乗り込んだ。
私がやっと切り開いたプロの道。
幸い娘にも豊かな才能が。
だからなりたいのよ。
親子二代のピアニスト。
サラブレッド感バリバリじゃない。

でもお教室の子たちは口々に言った。
麻子ちゃんきてないよ。
やめたいって言ってた。
ままぷろなのに贅沢だよねえ。

ほんとに…
私の娘ってだけで、あなためちゃめちゃ勝ち組なのに…

心引き裂けそうな私の横で、ピアノが突然私に声かけてきた。

アレルノ麻子の親だな。
子供の責めを負え。
今からクシコスポスト弾け。

ピアノのくせに偉そうだけど、この機種に入ってる“個性”は名ピアニスト、ゾーイ・アレンファ、多少尊大でもしょうがない。
何で私が!とは思ったけど、この際だから受けて立った。
けど…

弾き出したら個性め、文句たらたら、このプロの私に、次々ダメ出しするではないか!
やれ速い遅い、音色にぶれがある、強弱が違う!
ああ、娘よ。
あなたここ、厭になったのきっと…



#ショートショートnote杯

それでも地球は回っている