バブルーン

外へ出る時はバブルーンに入る。

大型シャボン玉製造機

と、おばあちゃまは呼んでいた。
円形のバブルがほぼ人型に狭まると、約12時間、外にいられる。
買い物、学校、趣味の集まり、仕事。
バブルが弱まる前に帰ってくること。
それは必須。
外でバブルが割れた場合、警察と保健局に連絡をしなくてはならない。
消毒されまくっても、周囲の目は変わる。

あの人のバブルーン、割れたのよ…


ちょっとしたウイルスが、みるみる世界に蔓延した。
かからないように、うつさないように、息を殺して日々を送ること三年、状況わきまえずスポーツイベントを強行したその国は、より激しい感染爆発の海に沈んだ。


入れ替わりのように開発されたのがこのバブルーンだ。

イベント前に開発されていたら!

年取った人はよく嘆くけど、そんなん運命のいたずらじゃん。
イベントだらけじゃなくなって、街が静かになったって言ってる人もいる。
バブルーン、独りの静かな空間で、あたしたちは歩き、考え、恋し、結婚する。
外出が、ほぼほぼ安全になった世界に、あたしたちの青春がある。


それでも地球は回っている