光と影〔りんこさんに捧げる一作〕


きみちゃん


きみちゃん

きみちゃんが好きなの

どうしてわかってくれないの

ずっとずっと好きだった
なのにあんたは
徳彦とあたしをくっつけようくっつけようとした

あたし徳彦きらい
この世の何でも知ってる顔して
あたしのことも見透かしてる顔して

君は僕が探し求めていた女性だ

とかさ
吐き気がする
あたしは一分一秒ものがさず、きみちゃんだけを見ていたいんだ

なのに事態はややこしくなった
あたしの知らないところで
きみちゃんは徳彦と親しくなっていたのだ
まるで中高生の恋人ごっこみたいに
きみちゃんは徳彦に、あたしの落としかたをアドバイスしてたんだ

ゆりなはこういうとこあるから、そういうものいいはしないで

とか

関心がない関心がないって口だけだよ
ゆりなは徳のこと好きなんだ
逃げて逃げてあんたの気を引いてる
いけいけどんどん!

きみのばか!

あたしが徳彦一ミリも好きじゃないの知ってるくせに

ああ、きみ、きみ、あたしはあんたしかほしくない。
あんたの同じ町内の桐香だっけ、あんたんちにピアノ習いに来だして、あたしと飲みに行く木曜に、当て付けるようにレッスン入れた。
新参のおしゃべりの貝山初野が、毎日のようにあんたんちに立ち寄る。
ババーとコムスメが、あたしのきみを浸食していく


尾道だったら案内できる
いつでも言って


そう言って笑ってくれたのに
いつも一緒だったのに
どうして?
どうして?
どうして?


あたしは孤独に沈む



ゆりなさん


ゆりなさん
あたしあなた好きだった
物知りで
優しくて
私の話をいつも聞いてくれた
でも、あなたは社交家で、私のことは押さえの押さえ
大事な人間じゃないっぽい

だから私も私りゅうに
仲間や交流を作ったのだ
なのにあなたは目に見えて苛立っていった
私に宵待草になれっていうの?
あなたの訪れを待って
ひっそりと咲き続けるだけの

そんなのいや


どんどん距離が開いてゆく
どんどん心が遠のく
たまにはあなたを思うけど
いなくても別に不自由はない
絶対無二はこれからつくろう
私をおざなりにしないひと
どんなに好きでも




私あなたの影にはならない

それでも地球は回っている