数学ギョウザ


響は典型的な理系野郎だが、趣味は料理だ。
特にギョウザが最高。
見た目も味も百点満点だ。
でもって高身長、顔も頭もいい。
カノジョのとぎれた試しなし。
でもそれは、次々付き合っては振られてきただけ。
顔がいいのですぐ次が決まるだけなのだった。

そんな響もついに自分から恋をした。
一学年下のさゆみちゃん。
かわいいけどちょっと天然で、響とは真逆と言ってもいい、自由女子なのだった。
今も私の目の前で、さゆみちゃんに自慢のギョウザを焼いている響だ。
具の配合。
焼き加減。
ハネもパリッと、みたくゴタク並べてる息子をよそに、さゆみちゃんは食べ出した。
醤油もなにもつけず。

さゆみ…?

響の声が震えている。
響ご自慢のギョウザのタレは、酢とラー油と醤油の配分が1:1:3…
でもそんなこと、さゆみちゃんには全く関係なかったのだった。

その後二人は別れたが、私は響のコンセプトなど一瞬たりとも尊重しなかった彼女こそが、最高のカノジョだったと今も思っている。



#ショートショートnote杯


それでも地球は回っている