100歳のLOVE YOURSELF

はじめてのnote。
ただの私のエッセイ。

私の祖母は92歳。
その祖母の姉がもうすぐ100歳になる。

北海道を離れ、長らく東京に住んでいる祖母の姉は誰からも愛されるおばちゃんでとにかく可愛い。

10年前までは東京と北海道を何度も行き来していた姉妹も体力的なことからもう何年も会えていなかった。

おばちゃんは私が東京に住んでいる時から孫のように甘えさせてもらっていた大好きな人。
いつも笑っていて、甘え上手で、親戚から他人までおばちゃんの家には色んな人が出入りする。

私が東京を離れてからも東京に行くときは必ず顔を出していたからいつからかおばちゃんに一番よく会うのは妹である祖母より私になっていた。

先月一泊二日の弾丸新大久保ツアーに行った時も会いに行ったのだけど、実はその少し前、5人姉妹の末っ子である私の祖母と3番目のおばちゃんの間にあたるもう1人の2番目のおばちゃんが95歳で旅立った。

大好きな妹の葬儀にも出れず、たった1人残された妹にももう会えないかもしれない…そう思ったおばちゃんは私の顔を見たことで「里心がついた」といって札幌にくる決心をした。

そして実はいま、ここにいるのである。凄すぎる。
飛行機に乗って100歳のおばちゃんは東京から札幌に来た。

昨日札幌についたおばちゃんは親戚に囲まれ、みんなが騒いでる中私の手を握り「何言ってるかぜーんぜん聞こえないの。補聴器ってみんなが話すとわーわーきこえるだけなのよ。」といいながら通っているデイサービスの話を私にした。

「今日は何日〜?とかクイズをするの。でもみんな答えないのよ。私は一番前で一番元気に答えるの!だって答えたらすごいねぇって褒めてくれるんだよ。みんなはね、恥ずかしいみたいね。私はぜーんぜん平気。楽しいもの。イベントもね沢山あるしね、なにか作ったりね、ほんと楽しいの。だってぜーんぶはじめてのことなのよ?紙でさ、お雛様作ったりね、手の運動のためにいろいろ作ったり教えてもらってさ。陶芸とかさ。やったことないことばっかりなの!」

ふふふと笑いながら楽しそうに教えてくれるおばちゃんをみて、バンタンと出会った自分をなぜか重ねる。

そう、はじめてって「遠ざける」か「楽しもうとする」かで全く違うんだよね。

-バンタンは私にいくつの「はじめて」をくれただろう…-

TwitterもInstagramもSNSは私にとって煩わしいものだった。知りたいことも特にない。
好きとか嫌いとか考えるもっと以前の「私には関係ないもの」だった。

-バンタンと出会ったことですんなり私の中に入ってきたものがいくつあるだろう?-


それからおばちゃんは私の手をじっくりみて、つけている指輪をじっくり見て。
「これは素敵ね。こうして重ねると素敵ね。このブレスレットは優しい感じでいいね。このイヤリングは変わっててあんたに似合ってるねぇ」
「私もねデイサービスいくとね○○(娘)がね、機嫌がいいしさ(介護は身内は大変だものね)洋服も買ってくれるしさ、そしたらまた見せたくなっていきたくなるからいいことばっかりなの!洋服とかみんな構わなくなってさ、そうなったらおしまいよ?私はさいっつも何着て行こうかな〜って考えていくからさ、あらまたオシャレね〜って職員さん言ってくれるの。嬉しいでしょ〜」

そう、オシャレもバンタンに出会ってだいぶ変わった。
あぁこんなに遊び心ある色使いも素敵なんだ。
ハイブランドはちょっと露骨でダサいと思ってたけどやっぱり素敵なんだ、とかね。

誰かに見せたい、誰かにどう見られるかを楽しみたい、誰かに会いたい、そんな気持ちがいくつになっても人を笑顔にするし活力を与える。

ハッピーオーラにはハッピーが集まる。
おばちゃんを見てるとつくづくそう思う。

思えばおばちゃんはどんな時も肯定的だ。知らないことに出会った時も、「あら、そうなんだぁ。あら素敵だねぇ。あら今はこんなこともあるんだぁ」
そうしていると人は安心しておばちゃんになんでも話すしなんでも見せる。
これはなかなか出来ることではない。当たり前におばちゃんが好きだったけどおばちゃんを好きな理由はおばちゃんにLOVE YOURSELFの精神があるからだと、そう気づいたのはキムナムジュンという人がその心持ちについてロジカルに説明してくれたからだった。

私がバンタンを大好きなのは、おばちゃんみたくいつなんどきでも人が嫌な気持ちにならないような言い方を自然と選べるからだった。

おばちゃんはケセラセラで陽気に包まれているけど、語るに耐えないほどの戦争経験者でもある。

シベリアから帰還する時目の前で惜しくも乗れずに涙を飲んで見送った帰還船は撃墜されて沈んだ。

でも百万回聞いてるおばちゃんのシベリア話の最後は必ず笑いに包まれる。

「素麺も10分茹でなきゃ食べられないの。とにかく柔らかいものしか口に入れたがらないから白米もお粥だし」

事前にそう聞いていたからお粥も炊いておいたけど、おばちゃんが今夜食べたものはヒレカツです。笑

どんな時も、
逢いたい人が人に活力を与える。

どんな時も、
好きなものが人を笑顔にする。

【好き】以上に私たちに行動力を与えるものがあるだろうか。

逢いたい人がいるから飛行機に乗る。
見せたい人がいるから新しい服を着て出かける。
褒められたい人がいるから頑張る。

苦手な語学勉強をあっさりはじめる。
見ようともしてなかった文化をあっさり受け入れる。
食べたことなかったものをあっさり口に入れる。
来たこともない色の服をあっさり試着する。
怖がっていた見知らぬ人との交流をあっさりはじめる。

「だって大好きなあの人がしてることだから」

THAT'S ALL.
それが全てだ。

100歳になっても、人を動かすものはいつも変わらない。

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