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弘法大使は三度、金剛杖を鳴らす。


今年の秋、修行の地高知に行ってきます。

連続した休みが5日が精一杯、貧乏ほぼあるきで。

2011年秋に行った阿波の国での体験をSNSに掲載したものです。

当時の私は薬も睡眠薬も手放せない身でした。


まだお四国にも入っていない大阪南港行きのフェリーの中で、あたしは脂汗をかいていた。


ない

どんなに探しても
ない

二週間分の薬


あたしは睡眠導入剤の新薬をひとつ毎晩服用していた。

睡眠導入剤がないと眠れない
すでにそんな体になっていた。
常備薬を忘れる
忘れん坊でもこれだけはやらなかった。

なんでや。薬を入れた記憶があるのに。
今回に限って

「お試しよ」


以前友人に教えてもらった。
あなたはどんなことをしてでも
この目的を果たしたい?
そんな時に試されるの


前にもあった。
強烈だったのが詩集を出すときだ

いつもあの頃家に鍵をかけなかった母の過失で
詩集作品のデータ全てを入れたパソコンを盗まれた。
あたしは泣いて母を責めた
中学三年で貴女は逃げて行った
高校三年で父が自殺した
行きたい大学も諦めた○○も諦めた
やっと願望が叶うその時に
またしてもお母ちゃんが邪魔するんか
うなだれた母の様子がわかっても涙がとまらなかった。


そうだ
あの時でもなんとか出来たではないか。


働いていた会社で専務に叱咤された言葉を思い出す。

「たった二通りのやり方を試しただけで
それがうまくいかなかったくらいで
出来なかったなんて私に言うの?」


信仰の根底にあるものは恐怖だとお坊さんが言っていた。そうだ。少なくとも今回のあたしにとって。

あたしはフェリーの一畳ほどのレディースルームでいまだかってないほど真剣に般若心経を唱えた。

翌日

処方箋をマイ病院から送ってもらえないか?友人から薬をわけてもらえないか?(←違法です)
いろんな工夫を試す
旅先での病院の初診料はあまりにも痛手だ。

そんなアクシデントで観光気分で楽しみにしていた京都のバーに行けなかったそこで待ち合わせをした京都の友人との約束もキャンセルせざるを得なかった。

お大師さまの金剛杖の鈴の音

もどるか くるか

行く。
父が待ってる。姉が待ってる。いろんな人からいただいた名前を持ってきた。


人の名の重さは
誰よりも知っているあたしではないか


徳島へ


白装束を揃え3番札所
15時8分前。

20日入金日
今まで一度もなかったバイト先からの入金遅れ
無常に時計は15時を過ぎる


お金が、ない…
手元には2000円弱

嘘でしょ?
なんでこんなときに限って…

(私のメインバンクはセブン銀行。

 当時はセブン銀行からしか引き出しができなかった。

しかしセブンイレブンは当時徳島に一店もなかった。)


もどるか くるか

お大師さまが笑う
あたしにはまだ早かったの?

四日目。
自分の誕生日にこの山を登ることを決めていた。

行き倒れの墓にまみれた山
焼山寺(しょうざんじ)

雨が降り始める

後続者はこの雨でいない
石の上に足をのせ滑る木の幹に足をのせ滑る水分を含んだ枯葉がない場所はないのに
どこに足を運べば滑らずにすむのか

杖を刺すように歩いてもよろめく

助けを求めたくても人はいない

あ、杏子だよ。携帯通じた。
○○時迄にあたしから連絡なかったらおかしいと思って。
じゃあね。
二人の友人に電話を入れた


もどるか くるか


選ぶのはお前自身

その後にもこのみっつに比べたら小さなお試しがいくつか


お大師さまは逃げ場がないほど厳しく
果てなくあたたかかった


三つの大きな問題は工夫してクリアした


たった二つの方法であきらめるの?
昔そう教えてくれた人がいたから


同行二人なんだ
そう教えてくれた人がいたから


へんろのうんちくはいくらも聞くけど実際行った人は周りにいないよ
そう励ましてくれた人がいたから

挑んでしまうあたしの無事を祈ってくれた人がいたから

そしてなにより

あたしはあたし自身を強く信じていたから。


だからまた
あれから9歳老いた体を連れて

呼ばれないといけないといわれるお四国へ

きっと旅立つことができる。

                  (了)

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アンビリーバーボーな薄給で働いているのでw他県の詩の勉強会に行く旅費の積立にさせていただきます。