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【毎週ショートショートnote】春ギター

親父から譲り受けたフェンダーCC-60Sをおもむろに手に取り、西日差す片隅で、あの曲をおもむろにつま弾きだす…。

けぶる木漏れ日浴びふと気付く
春風の奥思い出す
揺れる笑顔あとわずかな時間
近くにいたかった それでも

春 ~spring~

Hysteric Blue

一番のサビが終わった途端、開け放たれた窓から大量の桜の花びらが吹きこんできた。
その光景にしばし見とれながら、俺は決まって思い出すことがある。

既に故人となった親父はこの曲が好きで、よく弾き語りをしてくれた。
そうしてきまって最後に、生涯で一番愛したというその人の名前を、最後のストリングを弾きながら口にするのだ。

時は経ち、そんな両親の思い出が詰まったフェンダーCC-60Sは俺の手元へと渡り、今度は軽音楽部に入ったという16歳の娘、桜へと引き継がれることになっている。

「今年も満開だね、おじいちゃんの桜」

そう言って微笑む顔は、親父が生涯で一番愛したその人にとてもよく似ている。

#春ギター
#毎週ショートショートnote

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