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スキップとローファー全巻読んだ人に向けて書く

講談社・月刊アフタヌーン連載の『スキップとローファー』という漫画がある。私は2019年からこの漫画にはまっている。単行本は電子版と紙版の両方を買い支え、作者のツイッターをフォローしてすべてのツイートに素早くイイねを押しまくっている。少しでも作者様がイイ気持ちになって、楽しく漫画を描いて欲しいからである。一読者にはそれくらいしかできないが、出来ることはやろうと思っている。あと職場やツイッターで布教した。少なくとも5人は読者を増やしている。みんなハマってくれた。これは私がえらいというよりこの作品が優れているからである。あなたも是非。

詳しい内容はググレカス。失礼、おググりあそばされたもれ。というより私がこれを書こうと思ったのは、ググってもググってもそういう通り一遍な紹介ばかりでちょっと飽き飽きしてきたからである。なんかもっと違う感想が読みたい。でも見つからない。なければ自分で書けばよい。そんな気持ちからである。

読んだ方はわかるでしょう、素晴らしい作品です。恋愛とか青春とか友情などというありきたりのものではなく、もっと普遍的な、人間の本質のようなものが描かれていると思うのです。ちょっと大げさかもしれませんが、ちょっとだけです。けして大げさ過ぎるとは思いません。

そしてそうした普遍的内容を扱いながら、スタイルとしては非常にベタな、ベタベタな、もうベッタベッタな少女漫画の形式をとっている。そこがすごい。今時、この令和の時代にって思うくらいベタ。しかしこれ以上ないくらい丁寧にベタをなぞりつつも、一方で根こそぎブチ壊して否定するような中身になっている。ぼんやり読んでいたら「わー少女漫画ー、あーんきゅんきゅんするー」で終わっちゃうかも知れない。

「仮面ライダーフォーゼ」を想起させるのである。まあ聞いてくれ、落ちついて聞いてくれ。仮面ライダーフォーゼという番組がね、あったんですよ。2011年から12年。平成でいうと23年から24年。舞台はどこかの私立高校。主人公はあの福士蒼汰が演じる弦太郎。リーゼントヘアーに短ラン学生服という不良スタイルだが、基本的には素直でいい子である。彼は転校してきた初日に「この学園の全員と友達になる!」と宣言する。何の意味があるかわからないがとにかく宣言する。

そして学園の理事長が黒幕である。彼は毎週悩みを抱えた生徒や若手教師の心の闇につけこみ、怪人に変身させてしまう。弦太郎はライダーに変身して怪人と戦うのだが、倒さない。殺さない。死なせない。戦いながら彼は怪人(元は生徒や教師)の悩みや苦しみを受け止めるのである。ひたすら受け止め、最後に「わかった、じゃあ俺と友達になろう!」と握手を求める。怪人は弦太郎=ライダーと友達になることで怪人から人間に戻り、問題は解決する。

こうして文字で書くと何じゃそら、と思われるかも知れない。しかし福士蒼汰のさわやかな笑顔と巧みな脚本・演出で、たいへん説得力のある物語になっていた。ここまで読んでいただいたら薄々お気づきかもしれないが、そう、みつみちゃんは仮面ライダーフォーゼなのである。大小はあれどそれぞれに心の闇を抱えた怪人たちは、みーんなみつみちゃんにやっつけられてしまうのである。

中ボスは2巻、クラスマッチにおける江頭さん回だろう。当初よりみつみに対して、いや誰に対しても「上手に」接してきた江頭さんが見事に敗北する。実は1巻の終わりの時点でシマスケに見抜かれているのだが、2巻ではみつみに対して完全敗北する。ここが大好きだ。だからどんな人でもまずは2巻まで読んで欲しい。それでダメだったら私もあきらめる。2巻まで。是非。

そしてラスボスはシマスケ、だと思っていた。少なくとも連載が始まった時点では、このいかにも巨大な闇を抱えてるシマスケ怪人をみつみフォーゼはいかにして倒すのか、が当面の目標だったのではないか。すばらしいことに、それは見事になされた。飛ばしたり急いだりすることなく、丁寧にさまざまなエピソードを重ね、これ以上ないくらいにみつみはシマスケを倒した。

しかも作品はヒットし、なんとアニメ化も決まり、まだまだ連載は続く。さあこれからどうなるのか。どうなろうと心配はしていない。作品を通して伝わってくるのは作者の人間性である。おそらくとても冷たい、底の方の、人間の邪悪さとか悪意みたいなところまでしっかり見通している。そしてその上で、ぜんぶ見通した上で、まるっとすっかり認めて許している。そして慈しんでいる。なんかそんな感じがする。だからただ単純に甘々だったりふわふわだったりしない。一見甘そうでも中にはしなやかな、堅くて強い芯がピシッと通っている。だから信頼できる。そんな風に思う。


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