”人”と”言葉”で紡ぐSDGsの世界観と系譜

画像1 SDGsが目指す世界観や系譜について、”人物”や”言葉”に着目して表現してみました。書籍『SDGs思考』(SDGsの本質的な意義を学びたい方にお勧めです)を基に、環境省、外務省、国連等の資料なども参考に加えて整理しています。なお、複数の情報源を参考にしているため書籍自体の要約ではないことにご留意ください。
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画像3 日本で最初の公害事件とも言われる足尾鉱毒事件の解決に奔走し、明治天皇に直訴したことでも知られる政治家 田中正造。彼は1912(明治45)年6月17日の日記に、”真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし”と書き残しました。この環境や社会にも配慮した思想は、SDGsの直接的な源流とは言えませんが、その世界観を100年先取りしていたのかもしれません。出典:レファレンス協同データベース、原出典『田中正造全集 第13巻 日記』 田中正造全集編纂委員会/編 岩波書店 1977 p.260
画像4 時は流れ、1900年代前半の数十年間、世界は大きな戦争の時代に巻き込まれていました。その最大のものとも言える第2次大戦が終結した1945年、二度と惨禍を引き起こさない平和な世界を希求して、国際連合が設立されました。戦後復興の中、世界経済は急速に成長しましたが・・・
画像5 急速な経済成長の副反応として、人口爆発、紛争・内紛、南北問題、飢餓問題などの”社会”の分断が起こりました。また、”環境”面に目を向けると、資源枯渇や世界各所での汚染、公害問題などが頻発し、その容量も無限ではないとの認識が広がりました。前者は、いわば”人間”の危機であり、後者は、”地球”危機とも言えます。世界は大戦とは異なる新たな危機を抱えるようになりました。
画像6 分断される社会での人間の危機に対しては、多くのアーティストが危機意識を表明しました。特に、1985年、アフリカの飢餓救済のため、米国の著名ミュージシャンが集結したプロジェクト「U.S.A for Africa」が発表したチャリティーソング「ウィ・アー・ザ・ワールド」は多くの人に影響を与えました。参考:Wikipedia、歌詞出典:woldfolksong.com
画像7 一方、”地球”に達する危機としては、著名な科学者、経済学者、教育者、経営者などによって構成される「ローマクラブ」が、その報告書『成長の限界』の中で、全地球的システムのモデル化に基づいて、”人口と工業投資がこのまま幾何級数的成長を続けると地球の有限な天然資源は枯渇し、環境汚染は自然が許容しうる範囲を超えて進行することになり、100年以内に成長は限界点に達する”と結論づけたことが世界に衝撃を与えました。出典:EICネット、環境省
画像8 世界が抱える新たな危機に対して声を上げた人達がいました。”人間の安全保障”の概念を提唱した緒方貞子(元国連難民高等弁務官)・アマルティア・セン(ノーベル経済学賞)。世界の人々の安全や基本的人権を訴えたコフィ・アナン(国連事務総長)。国連委員会報告書の中で持続可能な開発概念を定義したブルントラント。地球サミットにおいて世界の指導者に環境保護を訴えた当時12歳の少女セヴァン・カリス・スズキなどの発言は世界の国々に影響を与えました。
画像9 世界の国々は国連の場などで何度も会合を重ねました。”人間”の危機を解決するための「平和・開発・人権」の分野では、”人間の安全保障”概念が世界に浸透するともに、国際的な目標としてMDGs(ミレニアム開発目標)が設定され、SDGsの源流の一つとなっています。”地球”の危機に対しては、1992年の地球サミット以来10年に一度、大規模な国連会合において環境と持続可能性に関する議論が重ねられ、SDGsのもう一つの源流となりました。
画像10 そしてついに、2015年に開催された国連持続可能な開発サミットにおいて「平和・開発・人権」と「環境・持続可能性」という二つの流れが重なりました。”人間”の危機の解決には、”地球”の持続可能性への取り組みは不可欠であり、逆もまたしかりであることに、世界が気づき、共に大きな一つの世界観を実現していこうする動きが生まれました。世代を越えた数多の人々の願いを集結させた目標群、それがSDGs(持続可能な開発目標)であり、その意義や位置づけを解説する2030アジェンダなのです。
画像11 持続可能な未来にむけた歩みは、道半ばです。来年、2022年は地球サミット(1992年)から30年の節目の年、SDGs目標年度(2030年)やその後のポストSDGsに向けて、持続可能な世界にむけた取り組みはますます加速していきます。気候変動対策分野では、2050年、2100年、またその先の未来に向けた取り組みも必要になります。それらの取り組みを担う若い世代の活動も広がっています。田中正造も訴え、いつの世にも紡がれてきた人々の安寧と豊かな自然への願いは、次の100年も、新しい世代が継承していくでしょう。。
画像12 ネイティブ・アメリカン イロコイ族の格言
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画像14 冒頭図の詳細版です。

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