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#8 本紹介その3『海に住む少女』

おはようございます。

今日の稽古はAグループでの合同練習でした。
まだまだ出来ることはたくさんある!明日からも頑張っていこうと思います。

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今日紹介するのは、「フランス版・宮沢賢治」とも言われるシュペルヴィエルの短編集『海に住む少女』です。

シュペルヴィエルは、小説家でもあり詩人でもあります。彼の紡ぐ物語はとても幻想的で不思議な雰囲気に包まれています。
あ、余談なんですけど。僕シュペルヴィエルと誕生日同じなんですよ(笑)好きな作家さんと誕生日同じって、なんかそれだけで嬉しくなりませんか?

今日はこの短編集の中から、表題作でもある「海に住む少女」と「牛乳のお椀」というお話を紹介しようと思います。

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まずは「海に住む少女」について。

このお話は、大海原に浮かんでは消える町で暮らす一人の少女のお話です。その町には少女以外の住人はいません。時間も止まったまま、少女はいつまでも12歳のままです。
少女は毎日、誰もいない家々の戸を開け閉めし、時には洗濯物を干したり、夜には電気をつけたりします。まるで誰かがいるみたいに見せようとしているかのように。
そんなある日、小さな貨物船が少女の住む町を通り過ぎていきました。その時少女が思わず叫んだ言葉は…。

海に町があるってことも、そこに少女一人だけが住んでいるってことも不思議な現象ですよね。物語の最後で、この少女は一体何者なのかが分かります。ここで語ってしまってはつまらないので、是非皆さんの目で確かめて欲しいです。

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続いて「牛乳のお椀」について。

毎朝、街のはずれに住む母親のために、大きなお椀にいれた牛乳を持ってパリの街を横切っていく青年のおはなしです。母親は青年が運ぶ牛乳だけを飲んで暮らしています。青年は母親の住む部屋に着くと、まず「母さん、飲みなよ」と言います。これが青年にとっての「おはよう」だったのでした。

ページ数にしてたった3ページのお話です。
でも、このたった3ページの中に、青年の、いや、誰しもが抱える寂しさが凝縮されています。
このおはなしも、最後の結末が寂しくて本当に良きなので、こちらもぜひ読んでいただきたいです。

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どちらのおはなしも、誰もが抱える「孤独」や「寂しさ」が見事に物語の中に落とし込まれていて、読むと寂しいし悲しいんだけど、それでいて儚くて美しいような気持ちがしてきます。まさに「フランス版・宮沢賢治」です。

「牛乳のお椀」に関しては、牛乳を母に届ける行為は、まさしく『銀河鉄道の夜』に通ずる部分がありますよね。それも相まって、このおはなし好きなんです、僕は。ちなみに、シュペルヴィエルも宮沢賢治も同時代の作家です。日本とフランス、遠く離れた地で2人の作家が紡いだ物語が干渉しあっているようで、なんだか不思議な気持ちになります。

今日紹介したお話以外にも、素敵な作品が同時収録されていますので、是非一度読んでみてください。

https://www.amazon.co.jp/海に住む少女-光文社古典新訳文庫-シュペルヴィエル/dp/4334751113#immersive-view_1560085741573

それでは、今日はこの辺で。
明日は、小川洋子さんの『薬指の標本』を紹介します。

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