失敗しないほうが、よっぽど怖い
私は職人をしている。食べ物の職人である。
もう、それは「失敗の連続」であり、たまたま成功したことを上手に温めながら大きくしてゆくことが大事なのだと思う。
職人になって早20数年。数々の失敗をしてきた。それこそ、失敗だらけである。しょっぱい、焦がす、固すぎる、柔らかすぎる、形にならない・・・。
しかし、そこで学ぶことは大きい。なにより、失敗しそうになった時のリカバリーは、人よりもたくさん得ることができる。そして、失敗しそうになりそうな後輩の行動も、わざと放置してしてギリギリで救出したりもできるようになる。失敗しないと、絶対成功しないことがよくわかるようになる。
それが職人の生き方なのだ。
人は生まれて、絶対に2本足で立ち上がれない。そして歩くことも出来ない。何度もこけて、何度も泣いて、初めて立ち上がることができる。そして、歩くことができる。
自転車に乗ることだってそうだ。最初は、補助輪がついた自転車に乗る。片っぽ外す。後ろから持ってもらう。両方外す。後ろから支えてもらう。そして、気がつけば、支えている親は、手を放していることに気が付く。
私は、いろんな失敗を重ねながら生きてきたような気がする。ほんとうに、笑い話になるような体験もたくさんある。人に言えない失敗もたくさんある。そうやって、いろいろ傷だらけになりながら「やさしさ」をおぼるような気がする。
どんな人だって、失敗しない人はいない。でも、その失敗からどう行動するかがその人の資質に関わってくると感じる。
ごまかす。反省しない。なかったことにする。失敗を認めない。それがどうしたと開き直る。
せっかく、失敗したのに、認めないなんて、もったいない。世の中正しいことなんて100%有り得ないのだ。こけて、しくじって、それでも立ち上がって、1000回も1万回も繰り返して、やっと一つの成功を得たとき、その成功は本物になれる。
近年、情報化社会といわれる。どんなことで、調べればわかるし、方法もわかる。でも、そうでないこともたくさんある。
うまくいくことは、決して成長ではない。現状維持なのだ。
現状維持を越えるためは、トライ&エラーの繰り返し。そうでないと、結局、従来の思想、技術、観念から前進することはない。
失敗を恐れてはならない。
失敗こそが、未来に向けてのチャンスなのである。
そして、そのチャンスを乗り越えた者こそ、未来を作り出せる。