メディアが報道しないNGT48の「ある事件」
NGT48、メディアが語らないもう一つの事件
2019年1月某日、一人の女性のある「告発」に世間が揺れた。マスコミも盛んに取り上げ、その「告発」を大々的に報じた。
「アイドルがファンに襲われる」というような痛ましい事件は、悲しいことに決して少なくはない数で起きている。その中で、特にこの事件が大きく報じられたのは、その「告発」のセンセーションさにあった。
これは告発者である山口真帆氏のツイッターより引用している。その他にもショールームという動画配信サイトでも似たような内容を告発している。
これのどこがセンセーションであったか。それは読めばすぐに答えが出る。当然「メンバーが関与している」という部分であろう。更に、それを運営が知りながら何も対処をしなかったことだ。感情的な部分を除けば要旨はこのようなもので、これが事実なら大変なことであり、話題になるのは必然であった。アイドルが被害を受けた事件は数あれど、そこにメンバーや運営が関わっているというのは初めてのことであろうから。
そのセンセーショナルな告発の裏で、その事に依る「事件」と言うに等しい出来事が起きていたことを知る人は少ない。この告発には「関与メンバー」がいるが、固有名詞が出ていない。そこで何が始まるか。犯人捜しである。
まず初めに疑われたのが、「フォローを外されている」という理由で、太野彩香と西潟茉莉奈というメンバーだった。
犯人捜しだけでは、まだ事件と言うには大げさだろう。しかし、この犯人捜しがメンバーへの誹謗中傷に切り替わるには時間がかからなかった。そう、そこで「事件」と呼ぶに等しい凄まじいネットリンチが始まったのである。
私がこの騒動を知ったのは、テレビでもなく彼女のツイッターでもなく、まったくアイドルとは関係ない趣味のアカウントのフォロワーが何気なく呟いた「まほほんかわいそう」という言葉からだった。フォロワーの一人にアイドル好きを兼ねている人がいたのだ。故に、私は一般の人よりも少し早くこの件を知ることができた。
「まほほん」と言う名前には聞き覚えがあった。特に本題には関係ないので内容は割愛するが、とある動画が話題になったことがあり、その時に覚えた名前であった。
私は女であるが、弟の影響でAKBのことは好きだった時期があった。前田敦子推しである。あっちゃんは今でも最高のセンターだ。更に言うと、最近になって荻野由佳が気になり始めていた矢先の出来事でもあった。
普段、私は炎上に全く興味がない。今話題の木下優樹菜のことであるとか、少し前のよしもとのことであるとか、本当にどうでもよい。しかし、女性アイドルは好きだ。なので、私はその「まほほんかわいそう」のつぶやきを見るなり5ちゃんへ飛んだ。私は情報を集めるときには、5ちゃんを愛用している。スレッドを覗けば、ツイッターで検索するより簡単に情報を得られるからだ。
そこで何が始まっていたか。インターネット上での犯人捜し、そしてそれに伴う誹謗中傷である。
これはまさに告発があった1/9の、その日の5ちゃんねるの書き込みだ。5ちゃんだけならまだしも、既に個人のインスタグラムにも誹謗中傷が書かれていたことがわかる。これらの様子を見て、私は尋ねた。
「これどういうこと?なんで犯人確定したの?」
「フォロワーが外されてるんだよ!おまけに犯人側はまほほんを煽ってる!」
実際には5ちゃんねる特有のネットスラングの会話であるが、要旨はこのようなものだ。私は意味がわからなかった。だって、フォロワー外されてるだけじゃん……煽りってのも誰に向けてるかわからんしまあ一般論じゃね……?
まあ、こうなのである。5ちゃんねるというものは。大体いつも何かと戦っていて、推理が大好きで、無責任に適当なことを言っている。まーたインターネット探偵さんが推理をしてしまったのか、という具合である。
ところが、今回はその無責任な誹謗中傷が表に出て行ってしまった。私が見たとき、太野彩香氏のインスタグラムには5000件もの誹謗中傷が書き込まれていた。中には、事件と全く関係のない容姿への罵倒や生命に関するものも多くあった。私は青ざめてしまった。これは大変なことになってしまったと思った。不倫や浮気などとは違う、決定的な「犯罪者」ということに、メンバーはされてしまったのだ。そして、その棍棒はあまりにも重い。インターネット上の正義を語る人々はその棍棒を得意げに振り回すだけだ。
私はその誹謗中傷が増える様をリアルタイムで見ていたし、現在でもそれが続いていることを知っている。また、誹謗中傷をしている人にはその自覚がないのかもしれないとも感じることがあり、それがいっそう怖い。例えば人に犯罪者だと言うことは、相手が犯罪者でなければ誹謗中傷に当たると思うが、彼らの中では事実なので誹謗中傷たりえないのである。故に、彼らはこともなげにメンバーを中傷する。また、運営批判でありメンバー批判はしないとしながら、悪いやつを処分しない運営などと間接的に中傷しているパターンもあり、これも本気で中傷に当たらないと思っている人が多い。
運営の責任を問うのは大いに結構であると私も思う。ただ、運営に言うべきなのはメンバーの処分ではなくアイドルの安全面への配慮ではないか。証拠がないものは処分などできなくて当然だ。
この問題に関してはメディアの責任も大きい。彼女の告発を取り上げる段階で、真偽の確認もせずに報じてしまった。実際昼間のワイドショーで取り上げられているのを見たが、これを見て正義感に目覚める人が多かったのも頷けてしまった。それが一方では悪になっていたとしても。そして大手メディアは、このネットリンチを取り上げない。自らにも責任があるにもかかわらず。
二日酔いが怖ければ飲み続けていろという格言がある。一度正義に酔ってしまうと、二日酔いの頭痛や虚無感が怖くて酒を探し続けてしまう。現状のメンバー叩きには、必死に酒を舐め取ろうとする彼らの怨念がある。地縛霊になってしまった彼らは、同じおだまきを繰り返している。
ところで私は山口真帆氏の告発に関して特に何かを言うつもりはない。私に真偽などわからないし、ネットで騒いでいる誰にもわからないのである。ただ、彼女の告発の裏にはこのような誹謗中傷の嵐が渦巻いていることを知ってほしい。誰も報じない、大きな事件だ。なんの証拠もなく疑われた少女たちは、少なくとも5000件以上もの罵倒を1人で受け止め、それは今も続いている。
ここに「それでは○○すればよい(○○には説明や否定が入る)」という屁理屈は通用しない。誰であっても誹謗中傷はしてはいけない。それだけの話だ。
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