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『銀座百点』

"フリーマガジン"ってあなどれなくて、このクオリティでどうやって無料配布できるの? と疑問に思うことがある。きっと広告料でまかなっているのだろうけれど、お金を払ってでも読みたいと思うようなレベルのものも多い。そのひとつが、つい3日前に偶然出会った月刊誌『銀座百点』だ。

松屋を少し入った三原通りの角にある「王子サーモン」にフラッと立ち寄り、サーモン缶を手にレジに進んだときにふと目に留まったのだ。私はどうも紙ものに弱く、なんだろうとじっと見ていると、店員のお姉さんが「どうぞ持っていって〜」と声を掛けてくれたのだ。本当は1冊348円らしいのだけれど、無料だった。

家に帰ってあらゆる用事を終えたあと、ホクホクしながらページをめくった。昭和29年に創立したらしい「銀座百店会」のマップや広告、連載のエッセイなど、なんだか心地よい文章が並んでいる。作家・山本一力さんの新連載「陽だまり百景」には、山本さんが高校生だった昭和37年の、私の知らない東京が綴られていた。

現在の代々木公園は、当日「ワシントンハイツ」という米空軍将校の住宅地だったらしい。山本さんは、はじめたばかりのペンパルに英語で返事をしたいがために、新聞の配達先をハイツまで広げた。そこに住む子供たちと仲良くなり、尋ねられた"立春"の意味を教えるために、春飾りのある銀座へ遊びに行くという話。

そういえば、王子サーモンのお姉さんが、「毎月ちょうどこの頃に新刊が出るのよ。人気ですぐになくなっちゃうから今日持っていった方がいいよ」と、紙袋に1冊しのばせてくれた。また来月ももらいにいこっと。毎月25日は"銀座デー"にしようと思って2月のカレンダーに印をつけた。なんだか記念日ができたような気がして嬉しい──銀座はきっと、昔もいまも変わらず、特別な場所だ。

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