コロナ禍で大変な世の中だからこそのKING OF PRISM-Shiny Rose Stars-

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が本格的な流行を見せ始め、有名なテクノポップユニットが東京ドーム公演の中止を決定した日。
私も東京ドームの最寄り駅である水道橋に居た。駅では、ライブの中止を知らせる放送が流れていた。
中止された公演の物販の袋を抱え駅に向かう人々とすれ違いながら向かったのは、東京ドームに併設された商業施設内にある、東京ドームシティーホール。
そこで私は、アニメ『KING OF PRISM』を舞台化した、いわゆる2.5次元舞台である『KING OF PRISM -Shiny Rose Stars-』を見る予定だった。

東京都からの大規模イベント自粛への要請は既に出ており、ネットでは公演を危ぶまれる声も上がっていた。
しかし、正直なところ自粛であり、対象は大規模なイベント。ならば、千秋楽まで走りきる可能性もあるだろうと、私は楽観視をしていた。
そして、公演も無事に始まり、ほらね。という気持ちの中。
予想を裏切り告げられたのは、公演予定日を数日残し、今日が千秋楽になったという決定事項だった。

両隣の人が泣き出し、気づけば私も泣いていた。
千秋楽に満員の観客が約束されていたホールは、平日であったため空席もある。それまでの公演でも、ここが満員になったことはまだ無いということも知っていた。
遠方からのファンは数日後の本来の千秋楽公演を取っている者が多い。
満員のホールをキャストに見せられなかったこと。見たいファンがこの公演を見られないまま終わってしまうことが、すごく、すごく悲しかった。
もちろん、その日から千秋楽までのチケット数枚が無かったことになってしまうことも。

千秋楽となってしまった公演は、もちろん素晴らしいものだった。
この『KING OF PRISM -Shiny Rose Stars-』は、不思議なことに観劇中の応援と呼ばれている観客の声出しが条件付きで許されている。
私達は精一杯、舞台を応援したし、キャストの方々は私達を悲しませないように、最高の演技を見せて楽しませてくれた。

『KING OF PRISM -Shiny Rose Stars-』のベースとなったテレビアニメ『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』のOPの歌詞にある。

戸惑いは2秒 あとは楽しさが永遠さ!

を体現するような舞台だった。

この舞台。そもそも男の子がプリズムショーという、歌、ダンス、プリズムジャンプから成るスケートに似た競技で、観客をどれだけ楽しませることが出来るかを競い合いながら成長する少年達を描いている。
そこで終盤。主人公達7人はクライマックスに相応しい、最高のショーを観客に見せてくれようとする。
これが自分達が見せることの出来る最高のものだと証明するように、観客(これまでKING OF PRISMを少しでも応援してくれた人、全てに向けて)に対して、今、このプリズムショーに、どんな思いを込めているのか。これからプリズムショーに、どんな気持ちで向き合っていくのか、そのショーの中で覚悟を示してくれるのだ<誓い>という形で。

僕(俺、私)は誓う!!
『あなたが悲しい気持ちでいっぱいになった時、精一杯あなたを笑顔にすることを』
『あなたが辛い気持ちにさいなまれた時、全身全霊であなたを守ることを』
『お前が何かに負けそうになった時、命をかけてその困難と戦うことを』
『君が強く欲することがあれば、僕のすべてを投げうって、君の心を豊かにすることを』
『あなたがさみしい気持ちで心が空っぽになった時、あなたの心を豊かな幸福でいっぱいに満たすことを』
『あなたが生きていくことに疲れ、もう前を向けないと思った時、あなたを支え、応援し続けることを』
『空が堕ち。大地が割れ海が干からび絶望の淵に立たされた時、希望の歌を歌い続けることを』
僕たちは誓う!!

この誓いを初めて聞いたのは、劇場でアニメの先行上映をしている時だった。
去年の、2019年のゴールデンウィークである。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によりライブをはじめ、いろんなイベントの再開が危ぶまれている状況になるなんて考えも及ばない時期だ。

当時の私は、最後の『空が堕ち。大地が割れ海が干からび絶望の淵に立たされた時、希望の歌を歌い続けることを』の誓いの価値を全く分かっていなかった。
ライブも、舞台も、映画も、好きな時に好きな公演にチケットが手に入りさえすれば行けると思っていた。
誰かが誰かに歌を届けるための場が奪われるなんてこと、考えもしなかったのだ。
でも、今は開催すら難しい状況である。

だからこそ、この『空が堕ち。大地が割れ海が干からび絶望の淵に立たされた時、希望の歌を歌い続けることを』の誓いが心に沁みる。

歌を届ける側が、歌い続けることを諦めないだけで、なんと心強いことだろう。
もしかしたら、二度と元通りにイベントに行ける日は来ないのかもしれない。
舞台にキャストが降りてきてハイタッチしてくれたり、生の歌を聞かせてくれたり、観客で声を出して場を盛り上げたり。
当たり前だったことが、今はこんなにも難しい。
けれども、この言葉を思い出すだけで、絶対に諦めないという気持ちにさせてくれる。私を奮い立たせてくれる。

あなたの推しの言葉ではないかもしれないけれど、全ての、推しに会えなくて悲しい思いをしている人に元気を与えることが出来る言葉だと、私は思っている。
だから、全ての推しに会えなくなって悲しんでる人に、この言葉の存在を伝えたかった。
『KING OF PRISM -Shiny Rose Stars-』
という、舞台の存在を伝えたかった。

今回の件で悲しい思いをしてない人なんて存在していないと思う。少しでもこの言葉が、支えになることを祈って。

※ニコニコ動画プレミアム会員なら6/7まで追加料金なしで視聴可能。7月には、再度放送予定なので、興味を持った方はぜひ。

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