人権を目減りさせない生き方
うるせえ取引先に絡まれていた。「いま!!いま!!メールの送信ボタン押すところだから!!大至急!確認して資料出し直して!!」などという電話がかかってきて、一応すぐにやったけど、どうやら先方は私にそう言ってから即ビュッフェランチに出たようだった。それなら「ランチ戻るまでにやってね♪」って言えばいいじゃん?
「すごくせっかちな人です」と言われて引き継いだばかりだけど、たぶんその見立ては誤っていて、基本的には「自分の思い通りにすることで人を従わせたい、そのことで尊厳を維持したい」というタイプなのだと思う。簡単に言えばパワハラ気質というか。だからこういう人をマトモに相手をしていると人は簡単に鬱になってしまう。
現に彼女は私の同僚を何人か鬱気味にしている。それで私にお鉢がまわってきたのだ。いつもそう。パワハラ気質の人間はめぐりめぐって私のところにまわってくる。何十人も辞めさせたパワハラジジイの秘書をやらされていたこともあった。今の私の顧客担当一覧は高圧的な人間で埋め尽くされている(ふつうの客は他の人にまわしてしまって、まわせないやつだけ残っている)。
なぜ私にまわってくるかというと、私がパワハラを受けづらい人間だから。かかわりはじめてすぐは冒頭のように猛攻撃を受ける(彼らにとって最初は肝心だ。ここで舐められてはいけないのでとりあえず吠えまくる)が、時間がたてば必ず何も言われなくなる。
ふだんは自然にやっていることだけど、パワハラ気質の人とかかわるときに重要な3つのことを書いておきます。
1、下手に出ない。
自分が間違っていないことに関しては謝らない。先方が怒っていても、「ああ、そうですか」と冷静に対応する。パワハラ気質の人はとにかく相手を下に従えたいと思っている場合が多い。そして一度、こいつは下だと思うと、服従させようと怒鳴る。まずはお前の下ではないとわからせてやることが肝心だ。
2、焦らない。何を求めているか把握する。
電話などでめちゃくちゃ急かされると焦ってしまって、とりあえず「分かりました」と言ってしまいがちだが、本当に相手が何を求めているのか理解するまでは話を終わらせない。パワハラ気質の人は、自分が焦ると相手も焦らせようとしてきて不毛な罵声を浴びせがちだが、そういうときは「言っていること=求めていること」ではない場合が多い(彼らも自分が何をしたいのか分かってないことも!)ので、罵声の部分はすべて無視して「要は○○までに××が分かればいいですか?」と聞く。
3、一番の理解者となる。
怖いことを言ってくる人はなるべく思考から除外していきたいものだが、逆にその人のことをきちんと考えてあげたほうがよい。何に喜び何に怒るか、それはなぜか、徐々に理解する。そして、会話の端々で「○○さんはこういうところがありますもんね」と伝えてあげる。的確であればあるほどいい。
え?ここまでしなくちゃダメ?向こうが悪いのに?って言われちゃったらどうしよう。しなくていいに決まってるだろ。したければやりなさい。
冒頭に書いた人はまだ付き合って日が浅いが、まあ徐々にニャンニャン懐いてくると思う。パワハラ気質の人の多くは、相手を上か下かでしか見られない人だと思うので、下に扱えないとわかると、上として扱ってくる。ので、案外使い勝手がよい。
あー。パワハラやイジメはなくせないんだから自衛するべきだよね、とか、パワハラされる方にも問題があるんだよね、とかいうコメントがきたらどうしよう。
もしハラスメントを受けてしまう理由があったとしても、それはハラスメントを受けても仕方ない理由では決してない、というのは当たり前だけどけっこう重要だ。ハラスメントは人権侵害です。どんな理由があろうが、誰もが、基本的人権を奪われてはいけない。それは前提としてさ、人権が目減りしない生き方もあるよ。そういう話。