カムバック・カニバッグ事件
これは2018年にTK(凛として時雨)のライブで東京遠征し、手荷物を現地に忘れてきた話なんですけども。
ライブの翌日、朝からカフェでモーニングをし、ランチを食べて、1人東京を満喫していた私。
ランチを食べた後次のお店に行こうと渋谷駅行きのバスに乗り、渋谷で降りた時に気付く。
アレ…?バッグがない…?
着替えやメイクポーチを入れてた1泊分の荷物のバッグが気付いたら無かった。
不幸中の幸いで携帯や財布を入れてるショルダーバッグは持ってたのだが、それでも困ることには変わりない。
渋谷駅で困惑する私。
とりあえずバス会社の営業所に電話しなければ、と思ったが、バス会社がどこか分からない…
乗ってきたバス停から渋谷駅行きはいろんなバス会社・いろんな営業所行きがポンポン出てたので、とりあえず来たバス乗ってきたという感じなのである。
連絡しようにもどの営業所行きのバスなのかも発着時間も何も分からん。
チクショウ、なんで東京はこんなにバス会社があるんだ。福岡の路線バスは9割9分5厘西鉄バスだぞ。(ローカルネタ)
どうしようもないので、とりあえずこの区間を運行してるバス会社・営業所を調べまくって片っ端から電話をかけまくった。
「バッグの忘れ物がないかご確認をいただきたく…黒いバッグで中身は着替え等で個人情報はないのですが、ありましたらご一報ください…
発着時間はあやふやで⚪︎時くらいだったと思うのですが…」
バス会社はだいたい「見つかりましたらまたご連絡します」とは仰ったのですが、やはり発着時間とか何番のバスかとかが分からないとすぐには確認ができないとのこと。
営業所数ヶ所に電話をかけたが、その場ではどこも確認できずに手応えゼロ。
ヤバい……あと3時間で飛行機出るんだが……
あと3時間以内に見つかるか………??
まぁ幸い携帯と財布はあるので帰れることには帰れるし、個人情報とかも特に無いので最悪無くなっても替えは効くものたちなのだが、あのバッグの中には前日着ていた私の一張羅であるスズキタカユキの45000円のワンピースが入っている。
絶対に取り戻したい。
45000円のワンピース、当時持ってた服の中で1番高い服だったと思う。
レーヨンの生地で、柔らかい風合いだけど鮮やかなゴールドが目を引くワンピース。
残業25時間分のワンピース。
諦めきれない。
45000円のワンピースはさすがに諦めきれない。
絶ッッッッ対に見つけ出してやるからな!!!
あと無くしたバッグがTKのグッズのバッグだったため、やはり絶対見つけ出したい。
あと普通に昨日履いたパンツもあるので、パンツが知らない場所で漂ってるのが耐えられない。
何が何でもスズキタカユキとTKのバッグとパンツを奪還したい。
ウォールマリアくらい奪還したい。
どうにか手がかりがほしく、藁をもすがる思いで続いて渋谷警察署に電話した。
バッグのことを伝えたが今のところは拾得物で確認できてないためとりあえず名前と電話番号だけ伝えて終了。
ただ警察署曰く、「個人情報のものが無いと見つかったところで本人確認が難しいので、すぐにお渡しとは行かないですね…」とのこと。
なんだと……??
さっきまで個人情報なくて良かったー!と思っていたが、個人情報がないことが仇になった。
迫る飛行機の時間。
何の成果も得られてない焦り。
渋谷で行きたいお店があったが、バッグが無くなったことにより結局渋谷駅でずーっとあたふたと電話だけして1時間が経過していた。
次に渋谷駅前交番に駆け込んでみた。
とりあえず遺失届を書いてはみたものの、渋谷駅前交番はめちゃくちゃ忙しそうで緊急性を要しない私の落とし物案件はあまり相手にされなかった。
なんてったって天下の渋谷駅前交番である。
渋谷ではきっと毎日いろんな事件が起きてるに違いない。多分昼夜問わずギャルとヤンキーの抗争で交番は大忙しのはずだ。
漫画「GALS!」で得た渋谷の知識(偏見)のおかげでやむを得ないと判断できた。
しかし刻々とすぎる時間の中一切の手がかりがない現状。
もはやここまでである。
結局飛行機の時間が迫り、後日連絡が来ることを願いながらその日はバッグを奪還できずに帰ることにした。
何の成果も得られませんでした。
前日のTKのライブで聴いた新曲『memento』の音源を聞きながら乗る飛行機はそれはそれはセンチメンタルだった。
ピアノとストリングスの切ないメロディ、都会の喧騒の中で失った人の影を追い求める歌詞、それはまるでバッグを探す今日の私の歌かと思った。
バッグ探しに奔走して終わった午後、1人焦る冬の大都会渋谷、そんな1日がスローモーションで思い出される。
飛行機の中で夜の街を眺めながら聞くmementoは胸が苦しかった。
身一つのフライト、あの夜を忘れない。
翌日。
見慣れない市外局番から電話がかかってきた。
もしやと思って電話に出たら、昨日問い合わせしまくったバス会社の営業所のひとつからだった。
「バッグの落とし物がありましたのでご連絡です」との連絡があり、私は天を仰いだ。
神は私を見放さなかったッッッ〜!!!!!!!!!
まさか翌日にもう連絡いただくとは…!と事件解決が予想外にスピーディで感動していた。
喜びを隠しきれない私に営業所の方も声色が上がってきて、2人で良かったですね〜!モードになっていた。
営業所の方もルンルンな感じで「では改めてカバンの特徴について教えてください」も言い、私もルンルンな感じで「えーっと、見た目は黒のバッグで、肩の部分はネイビーです!!」と意気揚々と答えた。
が、ここに来て急に営業所の方が言葉を詰まらせる。
「く、黒のバッグですか…?」
「はい…黒いのバッグですね…?」と私も不安げに答える。
続けて営業所の方が聞いてくる。
「無地ですか?模様とか入ってませんか?」
「無地ですね……肩の部分だけネイビーで、風呂敷のようなバッグで端に小さいロゴだけ入ってます」
と物販ばりにグッズの説明をしたところ、
「あ〜…、大変申し訳ございません…。
こちらでお預かりしてるバッグはカニ模様のバッグのため、少々違うようですね…」
カニ模様のバッグ…?
人生で生まれて初めて聞いたフレーズ
「カニ模様」
少々違うようですねって言われたけど、こっちは無地だっつってんのにカニ模様は少々どころの騒ぎでは無い。
バス会社さんなりの言葉選びの配慮だろうが、無地のバッグとカニ模様のバッグの違いを「少々」という言葉で片付けるには些か乱暴ではなかろうか。
「カニ模様なので少々違うようですね」が一周回ってめちゃくちゃツボにハマってしばらく1人でずっと笑ってた。
というかカニ模様のバッグってなに??
私のバッグでなかったにしても、よりによってカニ模様のバッグなんてことある??
意味不明すぎて面白すぎる。
私もカニ模様のバッグ欲しい。
もしかしたら聞き間違いかもしれないからカニじゃなくてワニとかウニとか柿かもしれないけど、要するに私のバッグでは無かった。
ふりだしに戻る。
ぬか喜びになってしまったが、「カニ模様」というあまりにもキャッチーすぎるフレーズのせいでなんかもうそれどころでは無くなった。
というか本当にカニ模様のバッグなんて存在するのか!?
意外と存在した。
ーーあれから4年
結局連絡をいただいたのはカニバッグの営業所さんのみで、そのあとどこからも連絡はなく私のバッグは見つからないまま4年の月日が経った。
ひたすら連絡を待った4年だったが、のちにツイッターで得た情報によると、落とし物の連絡は1回だけでなくタイミングを置いて数回連絡した方が効果的とのこと。
(単純に1回の電話だけだと伝達不足の可能性があるため)
なるほど、諦めずにもう何回か連絡してればもしかしたら拾得物マッチングができていたのかもしれない…
もう保管期間もとうに終わってるので、私のワンピースたちはきっともうこの世にはいないと思われる。
さようなら45000円のスズキタカユキのワンピース。
喪失感がすごかった。
代わりにカニのバッグを買った。
ショルダーにもクラッチにもできる2way仕様。
カニの存在感がコーディネートのアクセントになりとても可愛いアイテムです。
Amazonで買えるので、ぜひみなさん買ってください。
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