君の名は。
話題の映画"君の名は。"を見てきました。
なので核心には触れずに感想をいくつか。
以前より新海誠作品の大ファンなので第一報が発表された時から心待ちにしていた作品だったのですが、動員が落ち着いて空いてきたら見に行こうと思っている中フラッと立ち寄った某ショッピングモール併設の映画館を見てみれば、ちょうど今から始まる頃合いで席も全然埋まっていなかったので突発鑑賞。空席具合については田舎の平日昼間なんて話題の映画でもそんなものなんでしょう、これだけ騒がれているのでもっと埋まっているかと思いました。自身は映画公開に先駆けて出版された小説"君の名は。"を既に読んでおり、ストーリーに関しては知った上での鑑賞だったので、小説を読みながら頭の中で想像した場面が実際にどうやって描かれているのだろうという部分を期待しながらの鑑賞となりました。
まず驚いたのは冒頭でこれまでの作品にないTVアニメのOPのような演出があり、これまでの新海ワールドとは違う作品になる予感を匂わせてくれた事。そこからの展開も新海作品独特の叙情的な主人公たちの語りに合わせて風景が動いていくようなものではなく、いわゆる見慣れた親しみのある日本アニメの手法が取り入れられていて、多くの人に見てもらう夏休み映画なのだなあと実感しました。キャラクターの表情や仕草などもこれまでにないものがたくさん見られて次はどんなものがくるのだろうと楽しめました。(叙情的な動きの少ない世界観が特別に好きだったのでその寂しさは個人的にありましたが・・・)
ストーリーの中盤まではこれまでの作品に比べて内容演出共にかなりキャッチーな雰囲気になっていて、新しい表現を楽しみつつも従来の作品のファンである自分は少し不安にもなったんですが、話が展開していくといつもの新海演出があちこちに見られ始め終盤ではこれを待ち望んでいたんだという映像も見られて見終わった時には新しい新海作品を初めて見た時のいつもの満足感に満たされていました。
新海作品といえば圧倒的な背景美ですが、今回は秒速5センチメートルや言の葉の庭で見られたような緻密すぎるほど緻密な背景というよりも、星を追う子どもの時のような柔らかいタッチの背景で、それが今回の"あの花"などで有名な田中将賀氏が描く柔らかい雰囲気のキャラクターとも綺麗にマッチしていてすっきりとした見やすい世界観になっていてよかったです。
また今回は音楽を全てRADWIMPSが担当していて、どういった雰囲気になるのか期待と不安が入り混じっていたんですが、佳境では絵と音楽が綺麗に溶け合っていて想像していたよりもずっと良かったし感動できました。声に関しても声優が本職の人ではありませんが、全く違和感のないトーンで素直に見る事ができてよかったです。作品の規模が大きくなると宣伝の為もあり著名な俳優が器用されるのが常ですが、そういった中でも新海ワールドの雰囲気を壊さない素晴らしい声だったと思います。この監督の作品には落ち着いていてどちらかといえば目立った個性のない声が合いますね。
監督自身が自身のHPで述べていた通り、今回の作品では本筋とは関係のない所に過去の作品を感じさせる部分があったり、過去の作品を連想させるようなカメラワークがあるなどして従来のファンはより楽しめる内容になっていると思います。最初にそれを見つけてからは次のそれを見つける楽しみもできてどんどん引き込まれていきました。
小説版を読んでいた時から感じていた事なんですが"君の名は。"は、秒速5センチメートルと同じ地点から始まって主人公たちの感情や世界、テンション全てが正反対の方向へ進んでいくような感覚を持ちました。夏と冬という対比もそうですし、秒速を見て沈んだ気持ちやどうしようもなく救われないもやもやとした感情を全て洗い流してくれるようなそういう気持ちの良い青春劇で、見終わった後自分の青春コンプレックスをいくらか解消してくれたように思えます。
この作品を面白いと感じた方はぜひ小説版も読まれる事をオススメします。劇中では描かれなかった主要人物以外の心情や駆け足に進んでいったシーンなどが丁寧に書かれていてこの作品をさらに楽しめると思います。具体的には劇中では音楽と共に駆け足で描かれた入れ替わりの日常や憧れの先輩とのデートのシーンなどがもっと細かな描写で書かれているのがよかったですね。
お気に入りの映画がまた一本増えましたし、新海作品は死ぬまで何度も見返すんだろうなとまた思わせてくれる一本でした。
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