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音声収録におけるモニター環境の重要性

今回はレコーディングスタジオや音声収録スタジオにおける声優様、役者様、ナレーター様における音声収録作業時の耳へ返すモニターの音についてまとめます。

音声を収録する際のモニター環境は、キューボックスやミキサーを使いヘッドフォンを使用する方法と、ブース内にあるスピーカーを使用する方法の大きく分けて2種類があります。
どちらを使うかは収録方法やスタジオの仕様や自身のお好みによって変わってきます。


ヘッドフォンを使用する場合

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ヘッドフォンは『ミキサー』や『キューボックス(Cue Box)』という小型ミキサー付きのヘッドフォンモニタリングシステムの子機にヘッドフォンの端子を差して、自身の音声、コントロール ルーム(CR)とのコミュニケーションに使用します。実際の収録本番中は自身が発している声とマイクを通して耳に帰ってくる音がミックスされて聞こえてくる感覚になります。メリットとしては、自身の声がどのように録音されているか確認が容易なことです。デメリットとしては、ヘッドフォンを使用する時、例えばCDR-900stの場合は重さが約200gほどあるので、長時間の使用により首や頭が疲労してくること、ヘッドホンを使用すると自身のリップノイズなどのノイズが気になって集中できないことがあります。リップノイズなどのノイズは編集である程度取ることができるので、エンジニアやディレクターの指摘があるまではそれほど気にしなくても大丈夫です。

ヘッドフォン音量の調整

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ヘッドホンの音量に関してはお好みの音量で構いません。
声を張ったり、大声を収録する際は音量はあらかじめ小さく、ウィスパーボイスやささやき系のボイスを収録する際は音量を上げておくのも良いかもしれません。
収録の最中でも音量は変えて頂いて構いません。収録される音には全く影響がないからです。ただし最初に決めた音量バランスを途中で大きく変えた時は、耳に返ってくる音に影響されて、声の大きさや声質、キャラクターが変わってしまわないように注意してください。
片耳をヘッドフォンから外すと、自身の声が直接耳に伝わりやすいので、声質が安定したり、ニュアンスが判りやすい場合があります。ただし片耳をヘッドフォンから外す際は必ずウレタン部分(音が出る部分)を内側にしてください。外側に向いているとヘッドフォンから漏れた音をマイクが拾ってしまうからです。
ディレクターやスタッフからの指示の声の音量はコミュニケーションをとる上でとても大事です。聞き取りづらい、または聞こえすぎている時など気になることがありましたらエンジニアに相談してみてください。

自分のヘッドフォン、イヤフォンを使う

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スタジオに常設している標準ヘッドフォンとしてSONY CD-900stが挙げられます。ただし必ずこれらのヘッドフォンを使わなければいけないということではありません。普段使っているヘッドフォンやイヤフォンを使って頂いて問題はありません。ただしヘッドフォンは密封式のものをお使いください。ヘッドフォンから漏れた音をマイクが拾ってしまうからです。

スピーカーを使用する場合

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スピーカーを使用する場合は、コントロール ルームとのコミュニケーション、録音された音を確認するために使用します。実際の収録最中はスピーカーからの音は無音の状態になります。音が出てしまうとスピーカーから漏れた音をマイクが再び拾ってしまうからです。スピーカーを使用するメリットは、練習などと同じような感覚で収録ができる点です。デメリットとしては、録音された音声を聞く機会があまり無いために、声質やキャラクターがぶれてしまっていても自身では気がつきにくいという点が挙げられます。また、マイクと自身の距離がいつの間にか変わってしまうという傾向がありますので注意してください。これは収録のエンジニアリングの話になりますが、物理的にマイクと自身の口との距離は後の作業では変えることが出来ません。

最後に

コロナ禍以前のアフレコ収録では、3本くらいのマイクを入れ替わり立ち替わりで使用していたため、ヘッドフォンを使用しないことが多く、その収録方法に慣れている方はレコーディングスタジオや音声収録スタジオでもヘッドフォンを使用しないという方が多い印象がありました。コロナ禍以降はアフレコ収録でもマイク1本に対して1人の収録が多くなってきたため、ヘッドフォンを使用する機会が多くなり、ヘッドホン派の方が増えている印象です。

収録中に聞こえてくる『音』は「自身の発する声」「マイクを通して聞こえてくる声」「コントロールルームからの声」の三点です。この三点で快適なモニター環境を構築できればより良いテイクを収録できると思います。

快適な環境で最高のテイクを収録しましょう!

アンバース 尾立

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