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ヴォーカルレコーディングにおけるヘッドフォンモニター環境の重要性


ヴォーカルレコーディング時の必須アイテム「キューボックス」

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ヴォーカルをレコーディングする際は、レコーディングブースに入り『キューボックス(Cue Box)』という小型ミキサー付きのヘッドフォンモニタリングシステムの子機にヘッドフォンの端子を差して、オケや自身のヴォーカル、コントロール ルーム(CR)とのコミュニケーションに使用します。

小型ミキサーを使用するスタジオもありますが、今回はよりレコーディング用に特化したキューボックスを使用しての作業を中心に話を進めてまいります。

歌い手は『オケと自身の声とのバランス』や『ヘッドフォン全体の音量』など、キューボックスを使い、自身で聞きやすい(歌いやすい)音量に調整します。

ヘッドフォン音量の調整

いつも大きめの音量で聞いている、普段から大きい音で聞くことに慣れてしまっていて、ヘッドフォン音量が大きめでないと歌いづらいという方。大きめの音量で歌うのもいいとは思うのですが、長時間にわたるレコーディングの場合は注意が必要です。特にヘッドフォンCDR-900stは音が硬めに設定されているため、長時間大きい音量で聞いていると耳が疲れてきてしまい、結果的にテイクや音程に悪影響を与えてしまう可能性があるからです。音量は適切な大きさで聞くことを心がけましょう。『自分の歌が聞こえにくい』という方は全体の音量を上げずに『自身のヴォーカルの単独』を上げましょう。また片耳をヘッドフォンから外すと、自身の声が直接耳に伝わりやすいので、音程が安定したり、歌っている最中のニュアンスが判りやすい場合があります。ただし片耳をヘッドフォンから外す際は必ずウレタン部分(音が出る部分)を内側にしてください。外側に向いているとヘッドフォンから漏れた音をマイクが拾ってしまうからです。

ヴォーカルレコーディングにおけるチャンネル

ヴォーカルレコーディング時におけるキューボックスのチャンネルは以下のパターンが一般的です。
★2mix(左右のステレオチャンネル)
●自身のヴォーカル(ヴォーカル単独)
●シンセメロディー(音程の確認)
●仮ヴォーカル、仮歌(音程や譜割りの確認)
●クリック(ガイドのリズム、メトロノーム)

スタジオの仕様にもよりますが、★2mixはコントロールルームで聞いている音と同じと考えてください。それに●の単独チャンネルを足していくことになります。

●自身のヴォーカル(ヴォーカル単独)
一般的には★2mixの中に自身のヴォーカルは含まれています。足りないと思ったら上げてください。自身のヴォーカル音量を必要以上に上げていると気が付かないうちに小さな声で歌ってしまっていることがあります。また細かいノイズが気になりすぎてしまう事もあります。逆に自身のヴォーカル音量を下げすぎると、いつの間にか大声で歌っているということがあります。オケに対するヴォーカルの音量に決まりはないので自分に合ったバランスを見つけることが重要です。

●シンセメロディー(音程の確認)
ピアノ、オルガン、フルートの音などで音程や譜割りの確認ができます。アレンジャーの方が歌い手の方に合わせた音源で作成されていますが、歌いづらい場合は音色や楽器の音源を変えられる場合があるのでお気軽にエンジニア、アレンジャーに相談してみてください。

●仮ヴォーカル、仮歌(音程や譜割りの確認)
仮ヴォーカル、仮歌は主に歌い回し、譜割りの確認ができます。プリプロなど、自身が歌った仮ヴォーカルもあれば、別の方が歌った仮ヴォーカルの場合があります。別の方が歌った仮ヴォーカルの場合は歌い方まで仮ヴォーカルの方のニュアンスに引っ張られすぎて、自身の歌い方やキャラクターが変わってしまわないように注意してください。

●クリック(ガイドのリズム、メトロノーム)
クリックの音量はウィスパー系の声でさらにオケが薄い場合などはクリックの音が漏れてマイクが拾うことがないように注意してください。
クリックの音源や音色は変えることができる場合があります。エンジニア、アレンジャーに相談してみてください。

キューボックスによっては「Master」がある場合があります。キューボックスにおける「Master」はキューボックスで決めた全チャンネルをMixした全体のボリュームです。
キューボックスによっては「PAN」がある場合があります。「PAN」とは音を左右に振り分けることができる機能です。クリックなど、好きな音を左右に振り分けることができます。

ドラムやベースなど各楽器の2Mix内のバランスについては、エンジニアが調整することになります。『ドラムを上げて』『サビのギターを下げて』『ヴォーカルのリバーブを深めに』『ディレクターさんからの指示の音量が小さいです』など、歌いやすいようエンジニアにリクエストしてみてください。
任意の音を単独チャンネルに指定する事も可能ですが、単独チャンネルに限りがある場合もありますのでエンジニアと相談しながら決めてください。
また「私のヘッドフォンのバランスどうですか?」と聞いて直接確認してもらうのも良いでしょう。
また、レコーディングされる音に影響はないので歌っている最中でもバランスは変えて頂いて構いません。

自分のヘッドフォン、イヤフォンを使う

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スタジオに常設している標準ヘッドフォンとしてSONY CD-900stが挙げられます。ただし必ずこのヘッドフォンを使わなければいけないということはありません。普段使っているヘッドフォンやイヤフォンを使って頂いて問題ありません。ただしヘッドフォンは密封式のものをお使いください。ヘッドフォンから漏れた音をマイクが拾ってしまうからです。

ハモリパートやコーラスのレコーディング

ハモリパートやコーラスのレコーディング時は通常のメインヴォーカルのレコーディング時の音量バランスとは違い、音量のバランスはさらに気をつけて調整ることが必要です。気持ちよく歌えるバランスよりも、より音程のとりやすい、リズムがとりやすい、他のパートと合わせやすいなどを気にしながら調整してみてください。

快適な環境で最高のテイクをレコーディングしましょう!

アンバース 尾立

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