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ポール・モーリアでアレンジの素晴らしさを知る


この音楽を聴きながら読んでみてください

 父の自慢のオーディオセットのおかげで,幼少の頃からレコードで良い音質の音楽を聴く事が出来たのは,その後の耳の良さにも繋がっているのかもしれない。父のレコード棚にあったのは,ほとんどがタンゴのレコードだったけれど,中には当時「軽音楽」とか「イージーリスニング」と呼ばれたジャンルのレコードもあった。

 その中でも好きだったのが「ポール・モーリア」。ジャケットはだいたい指揮棒を持って微笑んでいる上品そうな髭のおじさんである。「恋はみずいろ」や「オリーブの首飾り」などのハープシコードでの主旋律が分かりやすかったのもあるが,一番好きだったのが「そよ風のメヌエット」かな。ストリングスの美しさと管(オーボエ?)が主旋律に絡まっていくアレンジは,スピーカーの向こう側に美しい風景が見えるようで,当時小学生ながらにいろいろ悩みもあったであろう自分の心を明るくしてくれたのを覚えている。

 今さらながらにYoutubeでポールモーリアを聴いてみるとなかなかに面白い。「オリーブの首飾り」は八神純子の「みずいろの雨」のイントロと一緒だし,アリスのデビュー曲「今はもう誰も」とイントロが一緒の曲あるし,Kinki Kidsっぽい哀愁あるメロディーも多いし,フリッパーズ・ギターピチカート・ファイブにも通じるところがある。後世に多大な影響与えてるんだなと。

 まだ歌謡曲にもバンドにも目覚めていなかった私が聴く音楽と言えば,「ケンちゃん」「ひみつのアッコちゃん」「パーマン」などのアニメソングかコマーシャルソングくらいだったのだが,この段階でポール・モーリアのアレンジに触れられたのは,後の自分の音楽人生に大きく作用していると思う。

 「イージーリスニング」というカテゴリーはもはや死語であるが言い得て妙だと思う。長く聴いていても耳に優しく聴きやすいのだ。「そう,それがアレンジの力なのだよ」などとは小学生の自分は知る由もなかったが,ペシペシのスネアで軽くリズムを刻むドラムスと割と音量あるベースでリズムを支えて,あとは主旋律のハープシコード類にストリングスとホーンセクションが淡い色彩をつけていく感じ。今のミキシングで言う「コンプで音圧稼いで波形を海苔状にする」ようなサウンドとは対極にあるナチュラルな聴き心地こそが,無理のない計算されたアレンジによるものだったのである。



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