消滅都市FUTURECONCERT朗読劇DAY3

2016年12月28日二開催されたライブ、FUTURE CONCERTにて発表されたDAY3公演の朗読劇文字起こしデータです。

失われし世界のクリア後の鑑賞を推奨します。


ソウマ
「——今から7年前。
 君は何をしていたかな
 ………
 “彼ら”の場合…
 7年間ずっと離れ離れになったあるひとりの男と
 もう一度話をする方法を考え続けていたらしい。
 ………
 僕には理解できなかった
 どうして7年間も
 一人のことを思い続けられるんだろう
 どうして7年間も…
 ムダかもしれない努力を続けられるんだろう」



タマシイ研究所にて

ギーク
「——例の論文なんだけどさ!
 大学図書館に忍び込んでゲットしてきたよ!」

リサーチャー
「まったく…
 どうして忍び込む必要があるのよ
 堂々と見に行けばよかったじゃない」

ギーク
「えぇ…ほら…
 休学してると…なんていうか…
 ちょっと、気まずくて…」

研究者
「しかし…この論文
 大胆な仮説だが検証の余地があるかもしれない」

ギーク
「うーん…
 でもさすがに夢物語じゃない?
 こことは別の世界に飛んだタクヤと
 通信をつなげるなんて…」

リサーチャー
「あら…夢物語の何が問題なの?
 今の私たちに必要なのってその…
 “夢物語”なんじゃないかしら?」

ソウマ
「彼らの様子を、僕は遠くでずっと見続けていた
 果たされることのない“夢物語”に…
 絶望する様子が目に浮かんだ。
 そう…
 絶望すればいいと思ってた
 期待して…
 裏切られる…
 僕と同じ苦しみを感じればいいと思ってた
 ………
 でも
 思ってもいない事が起きた。
 驚くべきことに
 彼らは平行世界への通信を確立させてしまったのだ」

研究者
「まさか…
 このパラメータが重要な役割を果たすとは…
 考えてもいなかったな」

ギーク
「やっぱり僕って天才なのかな!
 もっかい言お!
 やっぱり僕って天才なのかな!」

研究者
「…一回でいい
 ああ、しかし驚いたよ
 ウトウトした君が
 おでこでキーボードに突っ込んだら
 次の瞬間通信が成立していたんだからな
 奇跡としか言いようがない」

ギーク
「すべては計算通りさ…」

リサーチャー
「さすがに計算だって認めたくはないけど…
 でも…
 きっと、ギークの気持ちが通じたのよ
 タクヤのことを思い続けたギークの気持ちが」

研究者
「…かも、しれないな」

ソウマ
「…腹がたった
 奴らはただ、偶然を引き当てたに過ぎない
 それなのに…
 “想い”なんていう美しい言葉で
 偶然を正当化しようとしている
 こんなやつらに…
 僕は負け続けてきたのか
 こんなやつらに…」

ギーク
「でもタクヤは…
 僕たちのこと覚えてるのかなあ?
 もしかしたら…
 向こうの世界で…
 楽しくやってるかもしれない
 いまさら通信したって…」

研究者
「そうだな…
 平行世界の向こうとはいえ
 久々に連絡を取る友人のようなものだ
 向こうには向こうの事情もあるだろう
 通信を絶たれてしまうことも
 覚悟しておかなければならない」

ギーク
「そういえば…
 大学を休学してから
 あの頃の友達が妙に冷たくなったことがあったっけ…
 昔やってたオンラインゲームの
 久しぶりのオフ会でさ…
 話がぜんぜん盛り上がらなかった事もあったし…
 小学校の頃の同窓会に行ったつもりで…
 ぜんぜん別の集まりに紛れ込んじゃった事もあるよ」

研究者
「時間というのは残酷なものだ
 タクヤが我々との繋がりに
 まだ価値を感じているかどうかは…
 わからないな」

ギーク
「だよね…」

ソウマ

「そう…
 時は残酷だ
 一度失われた繋がりは取り戻せない
 姉ちゃんが僕を見捨てて…
 別の繋がりを選んだように
 そして僕もまた…
 姉ちゃんを見捨てて、今…
 すべてをやり直す事を、望んでいるように…
 ………
 ……
 過去を消すことはできない
 すべてはもう、起きてしまったことなんだ
 失ったものを求めても、いいことなんかない
 絶対に…
 いいことなんかない
 でも…
 彼らの考えは…
 僕とは少し違うようだった」

リサーチャー
「…ねえ、みんな
 タクヤが…
 私たちとの繋がりを求めていなかったとしても…
 それでも…
 いいじゃない」

ギーク
「…え?
 どういうこと?」

リサーチャー
「タクヤがどう思ってるかなんて
 話してみなきゃわからないわよ
 だからね?
 私はこう考えるようにしているの
 “あなたは私を好きになる”
 “ならなかったら…諦める”
 卑屈になったってしょうがないわ
 勇気を出さなきゃ何もできないもの
 人と人との話だもん
 絶対なんて…どこにもない
 だったら…
 前を向いている方がずっといいでしょう?」

研究者
「…なるほどな
 君らしい、魅力的な考え方だ」

リサーチャー
「だから…
 そういうのはいいって言ってるでしょう?」

研究者
「だが、確かにそうかもしれないな
 仮説はその成立を確信したとき、初めて検証に値する——」

ギーク
「難しい話はよくわかんないけどさ!
 タクヤは昔…
 一人ぼっちだった僕のことを…
 絶対に見捨てないでいてくれた
 だから今度は…
 僕が信じてあげなきゃいけないよね!
 もしかしたら僕たちに会いたくて
 向こうからずっと
 呼びかけてるかもしれないもんね!」

リサーチャー
「ええ
 どうせ最初は夢物語だったんだもの
 最後まで夢を見続けましょう!」

ギーク
「うん…!
 僕は…
 僕の気持ちに胸を張るよ
 僕の…
 たった一人の友達と
 もう一度会いたいっていうこの気持ち
 そのまま、タクヤにぶつけるよ!
 だから…
 だから…!
 戻ってきてくれ!
 タクヤ!!」


END

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