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クソ長蜘蛛の糸

 ある日の事でございます。身長五〇〇メートルを超える御釈迦様は極楽のクソデカい蓮池のふちというふちを、独りでぶーらぶら秒速五キロメートルで御歩きになっていらっしゃいました。クソデカい池のド真ん中にものすごい勢いで咲いているおびただしい数の蓮の花は、みんな大玉転がしの大玉のようにデカくてまっ白(#FFFFFF)で、その超絶ドまん中にある極金色のスーパー・蕊からは、マジで何とも云えないめちゃくちゃ好い匂いが、年がら年中絶間なくあたりへドバドバと溢れて居ります。極楽はぴったり丁度ド早朝なのでございましょう。
 やがて大仏くらいあるクソデカ御釈迦様はその琵琶湖二〇個分はある池のふち、もといエッジオブポンドにドシンと御佇みになって、海よりデカい水の面を完膚なきまでに蔽っている体育館ほどはある大きさの蓮の葉の間から、ふと三千キロほど下の容子をチラチラチラチラと毎秒百回御覧になりました。この超極楽のド蓮池の真下は、マジで丁度無間地獄のド底にぶち当って居りますから、世界最大級の水晶のような不透明度〇パーセントの水を透き徹して、三億途の大河や針千本の山の想像を絶する景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、気が狂いそうなほどはっきりと見えるのでございます。
 するとその地獄のような地獄の底に、カンダタと云うクソデカい男が一人、ほかの超絶罪人と一しょに地震のように蠢いている姿が、御眼にぴたりと止まりました。このカンダタと云う大男は、すごく大勢の人をめちゃくちゃ残酷な方法で殺したり日本中の家という家に片っ端からガソリンを撒いて火をつけたり、いろいろ極悪すぎる悪事を働いたハイパーエクストリーム大泥坊でございますが、それでもたった一つ、ありえないくらい善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時このクジラくらいある大男がマリアナ海溝より深い林の中をブルドーザーのように通りますと、一ミクロンにも満たないごく小さな蜘蛛が一億匹、路ばたをすごい速さで這って行くのが見えました。そこでカンダタは早速全部の足を挙げて、音速で踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも肉眼では観測できないほど小さいながら、クッソデカい命のあるものに違いない。そのデカ命を無暗矢鱈にとると云う事は、いくら何でも超絶可哀そうだ。」と、こう雷撃の如く急に思い返して、とうとうそのおびただしい数の化け物の様な蜘蛛を一匹残らず殺さずに助けてやったからでございます。
 クソデカ御釈迦様は発狂するほど惨たらしい地獄の容子を五時間ほど御覧になりながら、このカンダタには一億匹もの蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけのエグい善い事をした大報い(おおむくい)には、出来るなら、この巨大男をビックリ地獄から光速で救い出してやろうと御考えになりました。不幸中の幸い、側を見ますと、かなりビビッドな翡翠のような色をしたデカすぎる蓮の野球場くらいある葉の上に、超極楽の妖怪・巨大蜘蛛が一万匹、ド美しい銀色の糸を三億本かけて居ります。デカ御釈迦様はそのクソ長蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、大玉のようなクソデカ白蓮の間から、気が狂うほど遥か下にある惨劇が繰り広げられる地獄の底へ、定規よりもまっすぐにそれを御下しなさいました。

 こちらは激ヤバ地獄の奥底の海よりデカい血の池で、ほかの罪人と一しょに、ものすごい勢いで浮いたり沈んだりを繰り返していたカンダタでございます。何しろどちらを見ても、まっ暗(#000000)で、たまにその漆黒と言うべきくら暗からぼんやりしかしくっきりと浮き上っているものがあると思いますと、それは世にも恐しい大量の針の山の尖り過ぎているほど尖っている針がギラッギラに光るのでございますから、その心細さと云ったらもはや言うまでもございません。その上あたりは巨大墓地の中心のようにしんと耳をつんざくほど静寂に静まり返って、たまに聞えるものと云っては、ただ発狂罪人がつく蚊の鳴くように微かな嘆息ばかりでございます。これはここへ雪崩のように落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄のエグすぎる責苦に疲れはてて、赤子のような泣声を絶え間なく出す力さえ完全になくなっているのでございましょう。ですからさすが世紀の大泥坊のカンダタも、やはり血の池の血に咽せびながら、まるで死にかかった象ほどデカい蛙のように、ただ永久にもがいてばかり居りました。
 ところがある時の事でございます。何気なくカンダタがデカい頭をクレーンのように挙げて、カスピ海くらい広い血の池のクソデカ空(スカイ)を舐めるように眺めますと、そのひっそりとした暗のちょうどド真ん中を、遠い遠い高度八千メートルはある天上から、銀色のクソ長蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細くギラギラと光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。カンダタはこれを百万遍見ると、思わず発情期のオランウータンのように手を拍ってクソデカ大声を出して喜びました。このクソ長い糸に縋りついて、どこまでも永遠にのぼって行けば、きっとこの残虐な地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、アルティメット極楽へはいる事さえも出来ましょう。そうすれば、もう針千本の山へ追い上げられる事もなくなれば、深さ六千五百メートルの血の池の最深部に沈められる事もある筈はございません。
 こう思いましたから熊ほどあるカンダタは、早速そのクソ長蜘蛛の糸(地球七週半ほどの長さ)を両手両足で同化するほどしっかりとつかみながら、それはもう一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。元よりスーパー大泥坊の事でございますから、こう云う事には遥か昔から、もう完全に慣れ切っているのでございます。
 しかしウルトラ地獄とスーパー極楽との間は、何億万里となくございますから、いくら超焦って見た所で、容易に上へは出られません。ややしばらくのぼる中に、とうとうクソデカカンダタもくたびれて、もうマジで一たぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み五年ほど休むつもりで、クソ長い糸のちょうど中途に勢いよくぶら下りながら、それはもう遥かに目の下を見下しました。
 すると、一生懸命にのぼった甲斐があって、さっきまで自分がいたデカすぎる血の池は、今ではもう完全完璧に暗の底にいつの間にかかくれて居ります。それからあのぼんやりネオン街のように光っている世にも恐しい針の山も、クソデカ足の直下になってしまいました。この分で高速で素早くのぼって行けば、ファビュラスな地獄からぬけ出すのも、存外わけがないかも知れません。特大カンダタは両手両足口を長過ぎる蜘蛛の糸に複雑にからみながら、ここへ来てから何千年にも出した事のないクソデカ大声ダイアモンドで、「しめた。しめた。」とばかみたいに笑いました。ところがふと気がつきますと、長過ぎる蜘蛛の糸の遥か下の方には、数限りもないありとあらゆる罪人たちが、自分ののぼった後をつけて、まるでクソデカ蟻の大行列のように、やはり上へ上へ一心にすごい速さでよじのぼって来るではございませんか。クソデカカンダタはこれを見ると、超驚いたのと超恐しいのとで、しばらくはただ、莫迦のように超絶大きな口を開いたまま、眼ばかりぎょろぎょろと動かして居りました。自分一人でさえ断れそうな、このクッソ細いクソ長蜘蛛の糸が、どうしてあれだけのヤバ人数の十万トンをゆうに超える重みに堪える事が出来ましょう。もし万一途中で断れたと致しましたら、折角ここへまで光速でのぼって来たこの肝腎なクソデカ自分までも、元のヤバ地獄へ急転直下逆落としに落ちてしまわなければなりません。そんな事があったら、かなり大変でございます。が、そう云う中にも、罪人たちは何百兆となく何千兆となく、深海よりもまっ暗なクソデカい血の深すぎる池の底から、うようよと這い上って、ピアノ線より細くピカピカと光っているクソ長蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります。今の中にどうかしなければ、クソ長い糸はドまん中から二万つに断れて、一瞬で落ちてしまうのに違いありません。
 そこでカンダタは割れるほど大きな声を出して、「こら、罪人ども。このクソ長蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いて、のぼって来た。拙速に下りろ。迅速に下りろ。」と喚めきました。
 その途端でございます。今まで何ともなかったクソ長蜘蛛の糸が、急にクソデカカンダタのぶら下っている所から、ぷつりとクソデカい音を立ててこれはもう完全に断れました。ですからカンダタもたまりません。あっと云う間もなく風を切って、発狂したクソヤバい独楽のようにくるくる複雑にきりもみしまわりながら、見る見る中に語るには深すぎる暗の一番奥底へ、まっさかさまにコンコルドくらい速くマッハで落ちてしまいました。
 後にはただ極楽のクソ長かった蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もなーんにもないがらんとした大空の中途に、クッソ短く垂れているばかりでございます。

 牛久大仏ほどあるクソデカ御釈迦様は一周回ってもはや小さすぎると言っても過言ではないほど大きい極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、やがて大カンダタがクッソ深い血の池の底へ月よりデカい石のように凄まじい速さで沈んでしまいますと、超絶悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら競歩かってくらいの速さで御歩きになり始めました。自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、めちゃくちゃ浅間しく思召されたのでございましょう。
 しかしクソデカ極楽のクソデカ蓮池のクソデカ蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。そのクソデカ玉のような白いクソデカ花(フラワー)は、クソデカ御釈迦様のクソデカ御足のまわりに、ゆらゆらクソデカ萼を動かして、そのまん中にある金色のクソデカ蕊からは、何とも云えないクッソ好いクソデカ匂が、クッソ絶間なくあたりへ溢れて居ります。クソデカ極楽ももうクソ午に近くなったのでございましょう。

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