[本の紹介] レトリック感覚

佐藤 信夫 (著)

「レトリック」という言葉。以前から聞いたことがあるけど、一体どういうことなんだっけ?と思い、長年の謎を解明するためにこの書籍を読んでみた。

私たちが目にしている文章で当たり前のように使われている技法。言葉の表現を編み出すことは古代から技法も定義されたり、発展してきたんだな、と感慨深い。読んでゆき、この文章はそれに該当するのか?と納得するのも楽しいし、誰が最初に言い始めたんだろう?なんて想像したり。とにかく言葉だけに限らず、表現して伝えるということの繊細さと巧妙さと刺激的を味わえる一冊だった。

内容まとめ

著者が言うには、レトリックには二つの側面がある。
1.言語表現の技巧と効果
2.学問のような組織的な知的体型

古代ギリシアの社会において必要だった口頭弁論に勝つためにの技術研究が始まったレトリックは、説得の技法だった頃から、相手をいい気分にさせて好意を引き出しす方法、ひいては魅力的な表現として発展し、アリストテレスによって詩学や弁論術として集成された。つまり「人々を説得させるための表現の技術」と「芸術的表現の技術」という側面を持っていた。そして近代、私たちの認識をできるだけありのままに表現するために利用するという新たな「発見的認識の造形」という意味が加わっている。

直喩
ものごとの様子を表現するために例える形式。名喩とも言う。
「法王ボニファキオ八世は犬のように死んだ」
隠喩
あるものごとの名称を、それと似ている別のものごとを表すために流用する表現方法。
「思い知らせてやろう、君の白鳥がただの烏だったと」
換揄
白い雪のようなお姫様は「白雪姫」は隠喩。類似性に基づく。
赤い頭巾をかぶっている女の子は「赤頭巾」は換揄。隣接性(縁故)に基づく。頭巾は女の子に接触して現実に関わり合っている。「白バイに捕まった」など
提揄
外延的に全体をあらわす類概念をもって種をあらわし、外延的に部分をあらわす種概念を持って類全体を表現すること。
「舞っていた白いものが本調子になってきた」
誇張法
大げさに表現する
「そんなことがあったら死んでしまうだろう」
列叙法
①言葉を羅列する列挙表現「たえず景気のよい売り声をたてている魚屋、八百屋、桶、ざる、ほうきの荒物屋から、らしゃの合羽・・・」②斬層法「三月目が過ぎるとすこし心配になった。四月目。かなり心配になった。五日目。とても心配になった。」
緩叙法
①ある事柄を積極的に肯定する代わりに、それとは反対の意味の事柄を否定する。「あの方が嫌いじゃありません」②または弱めて表現する。「あの方に好意を持っています」

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