[本の紹介] センスメイキング

クリスチャン・マスビアウ (著), 斎藤栄一郎 (翻訳)

今、データサイエンティストがナンバーワンの職業とされている。STEM(科学・技術・工学・数学)の分野が貴重だともてはやされ、理系の初任給は高い傾向にある。以前は歴史や英語などの教養系が人気だったが、光学や自然科学の人気が増加し、逆に人文科学の人気の学位数は半減している。やはり全米の年収上位には理系の大学が多くを占めている。

しかし、これが全米で最も成功している者の年収上位10%になってくると、教養学部系、政治、歴史、演劇、歴史といった専攻が突出してくる。このように経営をとりしきるような立場の人、世界を変えるような人は教養学部系の学位を持っていることが多いことが分かった。

また時として、文化的知識が少ない会社の社長は現実世界から孤立している場合が多く、データのみに頼り、人の営みについての感覚が鈍っている場合がある。そしてとんでもないところを見落としていることも多い。我々はデータを見るとひらめきがあると勘違いしているが、実はそれは大きな間違いなのだ。

現実の人の営みのように、自然科学の法則では割り切れないことがたくさんある。そういった複雑な社会の文脈に触れる機会を与えてくれるものに書籍、音楽、美術、文化などがある。これらがセンスを育むのだ。

センスメイキングとは人文科学に根ざした実践的な知の技法。深掘りして奥行きを追求する力。知識と経験を絶妙に融合したもの。裏技とか秘訣とかではないもの。
アリストテレスの提唱した3大知の「エピステーメ(普遍の真理)」や「テクネ(テクニック)」ではなく実践の知「フロネシス」がルーツにあるものだという。

著者の言うセンスメイキングの五原則
1 「個人」ではなく「文化」を
2 単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータを」
3 「動物園」ではなく「サバンナ」を
4 「生産」ではなく「創造性」を
5 「GPS」ではなく「北極星」を

1 「個人」ではなく「文化」を 深く根をはっている文化的な前提を理解するのに、哲学というものは非常に役に立つ

2 単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータを」
いわゆる表面的な数字のデータではない、文脈などを含めたデータを探す

3 「動物園」ではなく「サバンナ」を
動物園で餌の入ったボウルを食べるライオンと、サバンナで群れで狩りをしているライオンを見ることの違い

4 「生産」ではなく「創造性」を
・・・ここちょっと忘れてしまいました(汗)

5 「GPS」ではなく「北極星」を
GPSに頼るのではなく、北極星を頼りに航海をするように行く先を見極める

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