[本の紹介]不便益のススメ: 新しいデザインを求めて

川上 浩司(著)

1.便利で利益があるもの
2.便利で損害があるもの
3.不便で利益があるもの
4.不便で損害があるもの

私たちは日頃から1と4を意識していることが多い。しかし不便であるがゆえに利益があるものがある。それが不便益。

不便益には8つの利点がある。
1.主体性が持てる 動機付けになる、自分ごとになる
2.工夫できる
3.発見できる 気づきや出会いがある、アフォーダンスになる
4.対象が理解できる
5.安心・信頼できる
6.上達できる(飽和しない習熟)
7.私だけ感
8.能力低下を防ぐ

迷子になったから知ることができた道。
スマホがなかったから入ることができたお店。

原子力発電所の操作インターフェイスをあえて複雑にしたり、説明を多く書きつらえたことで、使いにくいけれど発電所の仕組みを理解できるようになったと好評だった。

足こぎ車椅子。不便で仕方ないものではないかと考えてしまうが、元々はリハビリ用に開発されている。ただそれだけではなく、自分で漕いで進んでいるということがユーザーのクオリティオブライフを上げるらしい。

弱いロボットというロボット。人の代わりに何かをするのではなく、人に何かをするように促すだけのロボット。その人はちゃんと用事をするようになる。やったらぺこりとお礼してもらえて嬉しいらしい。

スマホのキーロックを登録した動きにする。自分でしか再現できないという特別感。

便利が逆にストレスを生んでいるスマホ生活の中で、不便益を楽しむ経験として、デジタルデトックス。

著者曰く、不便益は便利追求で失われてしまった関係性と多様性を回復させる試み。アナログの時代にあった物理的な操作は不便だけどモノを理解するのにも工夫するのにもちょうどよかった。ボタン一個で全てが動くことには気持ち悪さがある。また車が動くということは「自分は運転してはいけない」という状況。機械を信じるしかない、何もできない。

確かに、不便の中にはいろんなものの関係性を見出し、いろんなやり方を試せる多様性がある。これが人の感じる豊かさなのだと思う。

自分もどちらかといえばキャンプやら散歩やら、スローな不便益ライフが楽しいタイプだ。弱いロボットの話で、ルンバが掃除しやすいように散らかった部屋をお片付けしたというネットの話を思い出した。AIやロボットとの関係もそうだと楽しそうだ。そういう不便さを入れたエクスペリエンスデザインは楽しそうだ。そういうものを作って、是非とも著者に不便益認定してもらいたいものだと思った。

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