[本の紹介]コンセプトのつくりかた

玉樹 真一郎 (著)

個人的に、コンセプトという言葉はよく使われがちだが、理念やビジョンやミッションなどが出てくると、どういう関係なのか複雑になってきて、どう捉えていいかわからなくなってきたので読んでみた。
玉樹さんは家庭用ゲーム機のWiiを世に出した方。その方が発見したコンセプトについてとても簡潔にわかりやすくまとめてあり、Wiiを開発した時を持ってその手法と、その活用法が紹介されている。
一番コアな部分の「コンセプトとは」の部分はこんな感じ。

コンセプトとは「○○を用いて○○をしたい」

1.コンセプトは、ものづくりの中にある
2.コンセプトは、世界を良くする方法
3.コンセプトは、あなたがしあわせに生きられる方法
4.コンセプトは、母国語を用いた文字20字程度の言葉
5.コンセプトは、未知の良さに形を与えたもの
6.コンセプトは、ビジョンの集合体から生み出される
7.コンセプトは、アイテムの集合体によって伝えられる
8.コンセプトは、何を用いて、何をしたいか

2.「良いものを作りたい」ということは世界をよくしたいということ。よい変化をおこすもの。
3.またやっていて自分が不幸せでは仕方ない。世界をよくすると同時に自分も幸せになるもの。
4.覚えやすくないとダメなので簡潔な文章にまとめるのがいい。
5.「良いもの」を作りたいというが「良い」とはなんだというのだ。大抵人は「良い」という言葉を使うとき既知のよさを想像してしまっている。それでは普通のアップデートでしかならない。安全な世界を捨てて雲の中に飛び込んでゆかなければいけない。
6.ビジョンは「○○したい」という素直な望み。姿。ビジョンをたくさん集めてビジョン群を作ると、コンセプトが見えてくる
7.コンセプトだけで人はついてこない。「○○を使って」というアイテムがあって成し遂げるものだ。ビジョンを達成するために必要になるモノ・コトがアイテム。コンセプトの残り半分はアイテムの集合体。

例:
目的:鬼退治をする
ビジョン:鬼がいなくなってみんなが喜ぶ
アイテム:おじいさんおばあさん、きびだんご、犬猿雉、船

特に意識すべきは5.のような気がする。簡単に否定されるビジョンほど未知の良さを含んでいる可能性が高いと著者は言う。これまでの価値観によって否定されてきた未知の価値観。そんな脆くて危ういビジョンを無数集めることがコンセプトへの最大の近道になる。みんながいい!と思うようなものは既知の良さにしか繋がらない。

未知の良さはユーザーにとっても作り手にとっても未知。

コンセプトには100%の保証などつくことはない。世にでるまでは不安は消えないのだ。未知の良さなのだから。ただ「世の中を良くする」ということが守れていれば世の中と自分が切り離されることはない。「世の中を良くする」というコンセプトのコンセプトを守り続けるのだ。それを信じる心が要である。

コンセプトのワークのやり方はプロジェクト次第なので参考にするだけのような気がするため、とりあえずここをしっかり心に留めると良さそう。

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