見出し画像

ウタカゼ物語をなんとなく書いてみたい その3

※サムネイル画像はイラスト生成AIを用いました

 ヨシノは、月明かりに照らされた森の中を、まるで誘われるように進んでいった。足を一歩踏み出すごとに、足元の落ち葉はかさかさと音を立て、虫たちのざわめきが耳を鳴らす。そうして不思議な世界へと誘われていき、やがて森の中心部に佇む湖までたどり着いた。

 湖面には月が水に反射し、その姿は美しくも歪んでいた。ヨシノは水面に映る月を見つめ、その妖艶な姿に目を奪われる。その時、湖畔に映る月の歪みから、何かが静かに現れた。それは、光り輝く一羽の鳥だった。

 その鳥は、光り輝く圧倒的な存在感を放っていた。羽を広げた姿は夜空の星のような輝きを見せ、凛とした佇まいは気高さを感じさせた。その鳥の翼音は、優雅に響き渡り、森の中に神秘的な響きをもたらした。

 同時に、その鳥の隣にはそれとは異なる存在がいた。それは、まるで周囲の光を吸収しているかのような黒さを持ち、夜の空よりも黒く、煌く輝きとは別の存在感を放っていた。その存在は、いるだけで周囲の光を奪い取ってしまうようだった。その鳥の羽ばたきは、森の中に深い影を落とし、全ての音さえも奪い取ってしまう感覚さえ抱いた。

 ヨシノはこの不思議な光景に目を見張り、そのまま立ち尽くしていた。そして、鳥たちが空に浮かぶ月を背にしてこちらの方を向いた。その2羽がヨシノの方へ少しずつ近づいてくる。水面はなぜか揺らがない。少しずつ、しかし確実にこちらに向かってきている。良く見ると、どちらも一本の羽を咥えている。手を伸ばせばその羽を取れそうな距離まで近づいてきた。そして、その羽を取ろうと腕を伸ばしたところで、ヨシノの意識は途絶えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?