ウタカゼ物語をなんとなく書いてみたい その5

 「もう、そんなことも忘れちゃったの?」
 ツバキは、目の前にいるヨシノが村の言い伝えを全く覚えていないことに驚いていた。ヨシノは、ばつが悪そうにすまないと言った。
 「とにかく、昨日ヨシノが体験したことは、悪いことじゃないはず!」
 言い伝えを信じれば、と後に続いた。
 
 「それで結局のところ、その言い伝えとやらに従えばどうなるんだ?」
 ツバキが気になることは、とにかく冒険につながる話のみだった。このようなチャンスは一生に一度あるかないかだ。折角の機会を逃すわけにはいかない。
 
 「多分、今夜の豊穣祭で何かが起こると思うのだけど・・・。私にも何が起こるのか分からないや。」
 期待していたのだが、思いの他ツバキの返事は微妙な反応で合った。まあ良い。今夜を楽しみに、いつでも旅に出られるようにしておこう。

 「ヨシノ、もし君に何かあったとしても、必ず無事に帰ってきてね。」
 「驚いた。ツバキのことだから、私も連れて行けというと思っていたのだが。一体どういう風の吹き回しだ?」
 「ほら、私は祭りの司祭に選ばれたから。司祭に選ばれるのは、村で成人を迎えた女性の中からでしょ?ちょうど、私はタイミングが重なっちゃってね。」
 そうだったのか。と口に出そうとしたが、また睨まれそうだったので口を閉ざした。

 「代わりに、私の分まで色々なことを見て来てよね!!」
 「ああ、約束だ。」

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