ウタカゼ物語をなんとなく書いてみたい その4

 「どうしたのヨシノ?ぼーっとしちゃって」
 「ああ、いや、別に何でもないんだ。気にしないでくれ」
 「うそ!その感じは絶対に何かあったでしょ!私にはわかるんだから」
 「ツバキは鋭いな。」

 月明かりから一夜明け、豊穣祭の準備が着々と進んでいる。ヨシノは昨日の記憶を手繰り寄せ、自分の身に何が起こったのか考えていた。
 しかし、考えても何も思い出せず、あの2羽の鳥たちがどこに行ったのかさえも分からないまま時間だけが過ぎていった。
 昨日起こったことをツバキに話そうかと思ったが、どう話せばよいのかも分からないのでそのままにしている。

 「ヨシノ、昨日何があったのか話してみてよ。私、気になって今日は眠れなくなっちゃうよ。」
 「いつも昼過ぎまで寝ているお前が眠れなくなるなんて、明日は台風でも来そうだな」
 「もう!冗談言わないでよ。私は本気だよ?」

 ツバキの剣幕に押され、ヨシノは昨夜あったことを説明した。あまりにも現実離れした出来事だったため、彼は話の途中で何度も話を切ろうと考えていたが、ツバキは真剣に話を聞いていた。

「そんなことがあったんだ・・・。」
 話を聞き終えたツバキは、昨日ヨシノの身に起こったことについて本気で案じていた。無事であって良かったと心の底から思っているようにも見える。
「多分、その2羽の鳥は、この村に伝わるお話に出てくる神様かもね。」
 ツバキはそういった。

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