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雲部!Vol,20 ヘッセが熱く語る雲

こんばんは あまみのそらです。
きょうは『雲  ヘルマン・ヘッセ  エッセイと詩』(注1)の感想を。

熱い・・・
詩人とはいえ、熱い・・・

「この広い世界に、この私以上に雲のことを知り、雲を愛している男がいたなら私に教えてほしい!あるいは、雲以上に美しいものがこの世に存在したなら、それを私に示してほしい!・・・」(注2)

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(今回は頭を冷やしがてら、休みがてら本文とは関係なく時折写真を入れていきますね。)

さてヘッセさん。そ、そこまで言いますか。私も雲好きですけど、ちょ、ちょっとついていくの大変です。

と、私は白旗を挙げてしまうのですが、この本にはサブタイトルにあるとおり雲を優美に歌いあげる詩や、その美しさを讃えるエッセイなどが収められています。

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この本で私が印象的だったのはヘッセが初めて、雲を眼下に見下ろしたというエピソードです(注3)
ヘッセが10歳の時の話なので、1887年ごろでしょうか。ゼンアプル峰に登ったときのことをヘッセは「雲に近づき、雲のなかに足を踏み入れ、眼下にいくつかの雲の群を見ることが許された」と記しています。

現代であれば、飛行機の上から、雲をあたかも鳥瞰するように見渡すことが可能です。自分が乗らなくても、そうした写真や映像を目にすることも容易です。

けれど、ヘッセが10歳のときにはおそらくそうした機会はないですよね。初めて山の上から見下ろした雲の光景が、どれだけの感動をもたらしたか、そう考えると、ヘッセの雲に対する熱情というべき部分も、むべなるかな、と思えてきます。

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この本は編著者あとがきもまた、とても興味深い内容となっています。そのヘッセの解説の中で、ルカ・ハワードの雲分類やゲーテの話も出てきます。

この3人の生没年を調べ、並べてみたところ、ゲーテ、ハワード、ヘッセの順です。前の二人が没した後にヘッセが誕生しています。また、ハワードの分類がベースになった国際雲図帳は1897年、ヘッセが20歳くらいの頃に刊行されていることがわかりました。

ただ、これはヘッセがゲーテやハワードの影響を受けた、という話ではありません。むしろその逆、かもしれません。

ヘッセはハワードの分類を知ってか知らずか、あくまでの独自のことばで(だからこそ文学、なのでしょうけれど)雲を描き続けていきました。

先日、ターナーのことも書きましたけれど、こうした絵画や文学に現れる雲をみていくと、科学的な知見(気象学、雲の分類など)の発展と、絵画や文学の歴史がどんな風に関わっていまか、またはいなかったかということも気になってきます。

そんなに難しいことを考えるつもりはないのですが、
古今東西、雲に関心を向けた方々にはつい興味がわいてしまいます。

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注1 『雲 ヘルマン・ヘッセ エッセイと詩』フォルカー・ミヒェルス編 倉田勇治訳 朝日出版社 2001
注2 前掲書 p.19
注3   前掲書 p.21



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