雲部!vol,8~雲を愛でる人が世界中にいると教えてもらった話
こんばんは
きょうは雲を見る楽しみについて、目を開かせてくれた方についてお話します。
数年前に雲を見るようになり、ネットで見つけたのが、TEDでの
Gavin Pretor-Pinneyさんのプレゼンテーション「曇りの日こそ楽しもう」(2013年)でした。
このプレゼンテーションでは、雲の仕組みや種類ではなく、「雲をみる楽しみ」がユーモアたっぷりに存分に語られます。
この中でPinneyさんは述べています。(太字部分が引用 注1です)
「雲を支援しよう」
雲というのはとかくネガティブに語られがちです。日本語でも「雲行きが怪しい」「暗雲がたちこめる」などなど。Pinneyさんはそうした評価は”不当”であるとし、子どものころのように雲を見て想像を膨らませるような楽しみを取り戻そう、と呼びかけます。
「雲を見るというのは無目的なこと。(誰も雲をみて)世界を変えようとは思わない。それ故にとても大事な活動なのだ」
私たちの生活は目的があることで溢れています。そんな日々の中、時に何の目的もなく過ごすひと時がとても大切であることを静かに語り、プレゼンテーションは終わっています。
このプレゼンテーションを見て、「ああ、雲を見る楽しみを知る人がいた。世界にいた。しかもそのことをちゃんと広めている人がいた。」
とても嬉しい出会いでした。
Pinneyさんには著書があり、日本語訳もされています。
そのうちの1冊『「雲」の楽しみ方』河出書房新社 2017年(文庫版)を私も読みました。
一言で言うと、この本、雲に関する興味や愛で溢れすぎなんです(笑)
章立てこそ、積雲・積乱雲・・・と雲の種類別になってますが、書いてあることが多岐にわたりすぎ!
どの章でもちゃんと「この雲はこんなふうにできていて」という説明もあるのですが、その他にどんな神話や伝説にこの雲が出てくるか、古今東西の絵画、詩文、イギリスからオーストラリアまで雲を追って旅するエピソードなど、もう話があっち行ったりこっち行ったり。
あとで読み返そうとしても、どこに書いてあったかすぐにわからなくなっちゃうくらいです。そしてそれがぜーんぶ雲の話。
雲を楽しむということにこんなにも色んなアプローチがあるんだ、と教えてくれたのがこの本でした。
Pinneyさんは雲を楽しむこと高じてThe Cloud Appreciation Society(雲を愛でる会)という団体を立ち上げています。これは世界中のクラウドウオッチャーのための団体で、会費さえ振り込めば誰でも会員になることができ、すてきなバッジとクラウドウォッチングのためのスケールが届きます。
私も一時期入っていたのですが(今はお休みしています)、会員用メーリングリストで届いたメールの中には日本語の「雲」という漢字を紹介し、非日本語圏の方の「”雨が云う”なんて面白い!」というコメントもありました。
雲部!で雲に関することばを調べてみたり、絵を探してみたり、というのはまさにこの本の影響を受けてのことです。感謝です。
ことば、芸術、科学…。
雲へのアプローチは本当に色々です。
とはいえ、ずっと層雲(次の写真みたいな雲です。ロンドンではなく東京の写真ですけど)が続くのはやっぱりちょっと…。
最後に、層雲続きの日々についてのPinneyさんのユーモアあふれるコメントを引用(太字部分です)してきょうはおしまいにします。
「雲を愛でる会の創設者である以上、わたしはどの雲形にも偏りなく愛情を感じると思いたい。思いたいけれども、底冷えのする二月のロンドンの朝に層雲が空を覆っているのを見ると、そんな気持ちもいっぺんに萎えてしまう。~中略~ こんなことは、本当なら口にしてはいけないのだ。雲を愛でる会の会長たるわたしが層雲をくさしていると知れたら、どんな国際スキャンダルが巻き起こるだろう?しかし、さしもの愛好家も、いまはほんの一瞬でもいいから明るく輝く太陽の顔を拝みたい。」(注2)
Pinneyさん、ホント面白い!
注1 TED Recommends(https://www.ted.com/talks/gavin_pretor_pinney_cloudy_with_a_chance_of_joy?language=ja#t-638115)日本語字幕より引用
注2 ギャヴィン・プレイター=ピニー著 桃井緑美子訳 『「雲」の楽しみ方』河出書房新社 2017年(河出文庫)p77-79 より引用
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