雲部!vol.44 ゴム印画の雲@国立西洋美術館
前回に続き、国立西洋美術館企画展「自然と人のダイアローグ」の話題です。リヒターの「雲」にひとしきり見とれて振り向くと、小さなサイズのセピアのような色調の作品が目にとまりました。
ハインリヒ・キューン「夏の風景」
山の中腹と思われる景色の向こうに積乱雲が高まりつつあるのがみえます。
この作品は写真?
けれど近づいてみると点描のような質感があります。
雲の陰影のぼかしもまた見事です。
キャプションを見ると「ゴム印画」とあります。
ゴム印?はんこ?
まったくわからず、帰宅後にインターネットで検索したところ、写真をプリントする際の技法だということがわかりました。色の階調が豊かで絵画的な質感が得られるということで選択されることもあるようです。
この作品、技法に惹きつけられました。
ここにもまた雲の”あわい”がある。
直に見た人と、そこに居合わせなかった人が、雲の”あわい”を共有することができる、こんな技法もあるんだ。
そう思いました。
私自身、自分が見た雲を誰かと一緒に味わいたい気持ちが強くて、だからこそこうした文章も書いているのですが、最近は転写に取り組んでいます。
自分で撮った写真を一度紙にプリントして、それを布や他の素材に転写する、という作業です。
「デジタル画面ではなく、光沢紙ではく、
違う質感のものでシェアしたい」
そういう欲求があります。
もともとがスマホで撮った写真なので、そこで一度デジタル処理されてしまってはいますが、でも別の素材にプリントすることで何か面白いこともあるんじゃないか。そんな風に思っています。
ただ、なかなか思うような質感にはたどり着かず、考えあぐねているところに、この展覧会でのリヒターやキューンの作品との出会いがありました。雲を映しとるにも色々な技法がある。写真や絵画にさらに工夫を重ねて、雲や空を表現すること。そのことに挑んでいる人がいる。
そのことが知れただけでも、足を運んだ甲斐がありました。
今回シェアしたい雲はこちらです。
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