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雲部!vol.53 雲読『特撮の空』

こんにちは、あまみのそらです。雲に魅せられて6~7年がたちましたが。「雲の神様」と呼ばれていたこの方を最近になって知りました。もっと早く知りたかった、けれど、今であってもこの本に出合えたことを幸運に思います。

映画、とりわけ特撮ものに詳しい方はご存知かもしれません。島倉二千六さんはこの本の表紙にあるように、ウルトラマンや怪獣映画に始まり「帝都物語」や「日本沈没」、その他にも多くの映画作品の背景となる空を描かれている方で、雲を描かせたら右にでる人はいない、と言われている方です。

この本には、映画で使われた多くの空の絵が収められていますが、まずは見たいですよね。本から転載するわけにはいきませんので、新潟県立万代島美術館のWebサイトをご紹介します。島倉さんの作品画像が掲載されています。


思わず「写真?」と問いかけたくなる作品です。これが手書きというのですから次に問いかけたくなるのは「どうやって?」です。

『特撮の空』には、多くの作品やインタビューに加え、「背景画のできるまで」というページがあり、道具と機材の紹介や、青空と暗雲を描く過程が写真入りで紹介されています。エアブラシという機器があるのですね。なるほど水の粒でできている雲を描くには、スプレーという方法はよく合いそうです。

これまで映画などの背景の空に目を向けることはあっても、その空がどのように”用意されているか”を考えたことはありませんでした。

映画やドラマのそれぞれの場面に必要な、または監督の方がイメージされる「空」があり、その空を「背景画」として製作するのだそうです。

つまり、その場面ごとに”適した”空が作られていく。なのに、観るものにとっては「ほんものの空」に見える。それは、島倉さんの頭と体の中に、ほんものの空が叩き込まれている、ということが土台にあるようです。

「中学の版画部と独立プロ時代を通して、山や空など、スケッチとデッサンを続けたことが、背景画の土台であり基礎になっているのです。」

『特撮の空』p,182 「第7章 背景画家六〇年」島倉二千六氏インタビューより

また同書の中の島倉さんのお話の中で、雲が常に変化しているものであり、そこに面白さを感じるというお話に続いて、このようなコメントが掲載されています。

「…だから私が一番好きな空は、青空ではありません。嵐のピークが過ぎた曇天が一番好きです」

『特撮の空』p.184「第7章 背景画家六〇年」島倉二千六氏インタビューより

私も台風が過ぎた後の空に惹かれることがよくあります。台風のあと、南の空から次々と積雲の隊列が北上していく姿などをみると、鼓舞されるような気分になります。

同書では様々な背景画の中から何点かを「雲のギャラリー」として掲載しています。
絵画には西洋画、日本画、水墨画、版画など様々なジャンルがありますが、映像作品の中で使われる「背景画」は、雲を描くということに重きを置いてみた場合、様々なジャンルの中のトップランナーともいえるのではないか。
そう思わずにはいられない1冊でした。

最後に、昨日の東京の空を何点か掲載します。いっぺんに色々な雲を見せてくれる空でした。

ちなみにタイトル画像にした写真は、「ああ、絵心のない私がクルマを描くとこんな形になるなあ」などと考えながら最近撮った一枚です。



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