雲部!vol,52 「テート美術館展~光」にて
国立新美術館で開催中のテート美術館展へ行ってきました。
以前、雲を描いた絵画をオンラインで探した際、TATE IMAGESに多くの作品を見ることができたので、ぜひ足を運びたかった展覧会です。
やはり目につくのは風景画です。当たり前ですけれど、人間が地面に立ち、遮るものが周りになければ本来視界の大半に入ってくるのは「空」なのですね。東京の街中にいると忘れてしまいそうになりますが。
ハリッジ灯台
Harwich Lighthouse, John Constable, ?exhibited 1820 | Tate Images (tate-images.com)
トスカーナの海岸の灯台と月光
A Moonlight with a Lighthouse, Coast of Tuscany, Joseph, of Derby Wright, ?exhibited 1789 | Tate Images (tate-images.com)
大半を占めるのが空であり、今回のテーマである光の行方を左右するとくれば、やはり絵画を描くうえで雲と向き合うことは避けては通れないのでしょう。
今回最も見たかったのがコンスタブルの作品でした。コンスタブルは雲をよく観察し、習作を重ねてその姿をとらえようとしたことで知られています。この展覧会ではコンスタブルの版画作品「イングランドの風景」計20点が展示されており、個人的にはここが今回のハイライトでした。何点かご紹介します。
「夏の午後、にわか雨のあと」の空には、色々な種類の雲が錯綜していることがわかります。夏の不安定な空模様のとき、確かにこうしたたくさんの雲形勢ぞろい!!のような眺めに時々出会います。
うんうん、そういう空ありますよね。と心の中でコンスタブル氏に話しかけたくなりました。雲を真摯に描く画家のみなさんについて、私は大変僭越ながら勝手に”こころの雲ともだち”と思っています。ジャイアンが「心の友よ」と呼ぶみたいに。
さて、この連作の中でもうひとつ「オールド・セーラム」という作品がありました。
この「オールド・セーラム」。帰りに美術館図書室に寄って画集を見た際、同じ構図での水彩画を見つけました。モノトーンの版画でも十分空や雲のボリュームを感じますが、彩色されたものはさらに迫力があります。うちの壁に飾りたいなあ。
オールド・セーラム(水彩)Old Sarum, John Constable, 1834, © Victoria and Albert Museum, London,
コンスタブルにはジョン・リネルというライバルがいたそうです。こちらの作品でも雲が大きく描かれていますからね、観るものにとってはライバル大歓迎です。雄大雲かしら。いや、この暗さは積乱雲か。
風景(風車)John Linnell Landscape('The Windmill') 1844-5, exhibited 1845 © Tate, Photo: Tate
今回の展覧会ではもちろん、雲の他にも見がいのある作品が何点もありました。実際の絵画が表現する”光”をたくさん浴びてくることができたな、と感じています。実際に目にする機会を得られたことに感謝です。
~参考~
「3つのキーワードから紐解く。イギリス風景画の巨匠、ジョン・コンスタブルの表現世界」美術手帖 2021.3.21
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