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雲部!vol,28 雲読(くもどく)『1000ヘクトパスカル』

こんばんは きょうは雲にまつわる小説を読んだ話です。だから「雲読」。

『1000ヘクトパスカル』安藤祐介 著 講談社

タイトルからしていかにも空に関する本ですが、これまで知らずにいました。最近NHKで「六畳間のピアノマン」という素敵なドラマがありましたが、その原作者が安藤祐介さんでした。そのつながりで手にとった本です。

主人公である大学生 城山義元は、ある出会いをきっかけに空や雲を見上げるようになります。あらすじは上記のリンク先にありますので省略しますが、私は、義元が空に惹かれていく過程に共感!するところが多く、夢中で読み切りました。

【共感ポイントその1】

空をみるスイッチが入る瞬間、です。
人は外で出歩く生活を送っている限り、必ず空は目にすると思います。けれど、雨模様は気にしたとしても、空や雲がどんな表情をしているかはそれほど気にしないことがほとんどです。
けれど、何かのきっかけで一度、空の表情を気にしてみると、その後の空との付き合いは一変します。
主人公 義元は、同級生の女性との「空はどうして青いのか」という会話をきっかけに、空や雲の色の理由、ちがい、雲の種類などに触れていきます。

そして虹色の雲に「彩雲」という名前があることを知ったり、山のまわりにできる笠雲や吊るし雲などと出会い、驚き、どんどん空の世界にハマっていきます。そうなんです。わたしもそうでした。雲に興味を持ち、図鑑でみただけの雲を実際にみたときの嬉しさったらないのですから。
(下の写真は笠雲や吊るし雲ではありませんが)

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【共感ポイント その2】

ある休みの日、義元は雲を見るためだけに出かけることにしました。その”お出かけ”に彼がつけた名前が「雲狩り」です。
雲狩り!!!
新鮮な響きでした。
確かに、紅葉狩りという言葉もありますしね。
義元は電車の車窓から見つけた雲にも夢中でカメラを向け、シャッターを切ります。そうそう、わたしも車窓で素敵な雲を見つけると子どものように窓に向かってしまいます。義元は東京を起点に西の方に向かったのですが、私も中央線や西武線など東西に走る電車だと特に、雲を眺めることが多い気がします。どうしてでしょうね。


【共感ポイント その3】

雲の写真を撮り続ける義元、ある日、その写真を見た友人から指摘されます。

”ほとんどの写真に空と一緒にビルとか木とか人が入ってるよな”
”ああ、わざとだよ”

義元は街の空が好きなのだそうです。ビル街の空を流れる雲、金網越しに見える草むらと空‥‥。
わたしもです、わたしもです。この場面にはぶるんぶるんと大きくうなづきました。
大自然の中で雄大に広がる空ももちろん惹かれますが、人の気配が感じられるものとそれを包むように広がる空や雲の光景もいいものです。安心するのです。

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もう10年前に出た本なので、あまり期待はできませんが、雲を撮り続ける道を選んだ義元のその後のお話が読めたらいいのになあ、と思っています。

素敵な物語でした~。


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