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【声劇台本】軍人と脱走兵

5分程度のコメディです
脱走したけど、かつての訓練時代の上官に見つかってしまうところから始まるコメディです

展開を大きく崩さないアドリブなら可

軍人
脱走兵を見つけた軍人
かつて脱走兵が、訓練時代だったころの上官

脱走兵
脱走した兵
訓練時代、軍人(上官)にお世話になった


ヒデじい様の声劇台本置き場にも置いてあります


脱走兵:よし……見つかっていないな
 
脱走兵:このまま逃げきれば、こっちのものだ
 
軍人:何処へ行こうとしている?
 
脱走兵:っ! まずい……居場所がバレた
 
軍人:物陰に隠れているのは分かっている
 
軍人:そのままゆっくりと出てこい。不用意に撃とうものなら、お前が銃を向けた瞬間に、弾丸が胸を貫通しているだろう
 
脱走兵:……くそ
 
軍人:っ? お前は……はは。なるほどな
 
脱走兵:あなたは……?
 
軍人:誰かと思えば、いつしかの訓練兵じゃないか
 
脱走兵:まさか、教官……? あの教官なのですか?
 
軍人:久しぶりだな、あれはいつ以来だ?
 
脱走兵:5年前です
 
軍人:そうだったな……。見れば、訓練兵。身長も少し伸びたか?
 
脱走兵:上官がちぢんだのではないですか?
 
軍人:言うじゃないか。目つきもいい
 
脱走兵:こんな形で、上官に会うなんて……
 
軍人:ああ、全くだ。まさか脱走を図るとは、思いもしなかった
 
脱走兵:あなたへの恩義は忘れたわけではありません
 
軍人:なら、なぜこんなことをしている?
 
脱走兵:私は、自分の欲求に従いたいのです
 
軍人:欲求か……。それを上官に対して、真っ直ぐ言えるほどには大きくなったということか
 
脱走兵:上官の厳しいしごきは、今でも覚えていますよ
 
軍人:ふふ、昔話をしていてはラチがあかないな。
 
軍人:……お前の情報は耳に入っていた
 
軍人:最近……やけに空を見てふけっていたり、訓練が終わった夜、一人で近くの港に行っていたとか
 
脱走兵:夜空が好きですから。私の趣味ですよ。訓練時代もそうだったはずです
 
軍人:ふふふ
 
脱走兵:何がおかしいんです?
 
軍人:「初デート」は、楽しかったか?
 
脱走兵:……っ!!!
 
軍人:お前は訓練時代の頃から、顔に出るのは変わっていないな
 
軍人:我ら「非リア充」の、絶対の掟を忘れたわけではないだろ?
 
脱走兵:「非リア憲法 第1条」
 
脱走兵:「我々の恋愛対象は、二次元キャラのみとする」
 
軍人:そういえば他にも、お前から香水の香りがしたり、お前の部屋からたまに、恋愛をうたったポップカルチャーな曲が聴こえたりと、報告もあったな
 
軍人:……分かっている
 
軍人:「リア充」に、寝返ったのだろう?
 
脱走兵:それは……
 
軍人:正直に言ってみろ
 
脱走兵:自分は……もう我慢できません
 
軍人:何が我慢できないと?
 
脱走兵:全てです
 
軍人:ほう?
 
脱走兵:毎晩、任務を終えた時に、他国の事を思うのです
 
脱走兵:出会いが何もない
 
脱走兵:二次元に浸っていく中で、頭の中を駆け巡りました
 
脱走兵:ああ、私はこのまま、一生を終えていいのか、と
 
軍人:それが我ら「非リア充」に与えられた使命だ
 
軍人:そして「リア充」は、敵だ
 
脱走兵:私も、リア充は敵だと思っておりました
 
脱走兵:しかし……彼らの住む国の資料を見れば見るほど、思いを馳せてしまうのです
 
脱走兵:そこで私は……港で1人の女性と…「リア充」を望む美しい女性と、出会いました
 
軍人:「出会いました」か
 
軍人:まさにそれこそ、「リア充」の最(さい)たるものだ
 
脱走兵:分かっています。自分が「非リア充」の恥さらしだということくらい
 
脱走兵:だから、国の掟を破りました
 
軍人:一夜(いちや)を共にしたか?
 
脱走兵:そこまでは
 
軍人:……今戻れば、罪は軽いぞ
 
脱走兵:戻りつもりは、ありません
 
軍人:そうか、なら……見てしまったからには、生かすわけにはいかない
 
軍人:ここで死んでもらう
 
脱走兵:……クソ。私の人生、ここで終わりか
 
脱走兵:新しい景色も見れないまま
 
軍人:裏切った報復だ。悪く思うなよ
 
脱走兵:……お世話になりました
 
軍人:言い残したことは?
 
脱走兵:…ありません
 
脱走兵:自分がリアルを求めた、その欲望を確かに感じたことだけで、自分に忠実になったという事実だけで、構いません。最後まで自分を曲げたくはないので
 
軍人:ふふ、頑固者だな
 
軍人:訓練時代の時も人一倍、誰にも負けずに、我々のために尽くすいい兵士だったのに、……「リア充」の誘惑が、お前を変えてしまった。本当に惜しい兵士だったよ
 
脱走兵:……申し訳ありません
 
軍人:謝るな。死の最後まで、自分を全うしろ。訓練兵
 
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脱走兵:上官が銃口を向ける
 
脱走兵:私は、途端に目をつぶった
 
脱走兵:しかし……銃声が空に響いた後、自分の体が、名にも貫かれていないことに気づく
 
脱走兵:……上官? どういうことですか?
 
脱走兵:なぜ私を撃たないのです?
 
軍人:行け
 
脱走兵:えっ?
 
軍人:「非リア」のお前は、ここで死んだ
 
軍人:お前はもう、向こう側の人間だ
 
脱走兵:……それって
 
軍人:お前を射殺したと報告をしておく。せいぜい別の人間として生きていけ
 
軍人:あと、その勲章は置いていけよ
 
脱走兵:……上官。本当にお世話になりました
 
軍人:泣くな
 
脱走兵:……ごめんなさい。まさか、上官がそんなことをするとは、思っていなくて
 
軍人:お前の道は、お前が決めろ
 
軍人:それが例え、たくさんの「非リア」を裏切ることになっても
 
軍人:「リア充」の道を突き進め
 
軍人:……立派に成長して、嬉しいぞ、訓練兵
 
脱走兵:……うっ……!
 
脱走兵:ありがとうございました!
 
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脱走兵:私は涙をぬぐい、その場から離れる
 
脱走兵:その後、港で、あの時の女性と落ちあい、二人そろって……「非リア」から抜け出した
 
脱走兵:その時の夜空は、まるで私達を迎えいれているようだった
 
脱走兵:これからの私は、「リア充」として生きる
 
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軍人:……寂しくなるな、訓練兵
 
軍人:本当に、良い目をするようになった
 
軍人:「リア充」に行っても、元気でいろよ
 
 
 
 

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