テレ東ドラマシナリオ、二回目(案1)
<<<あらすじ>>>
Aが帰ると、知らないおっさんがいて、自分を「冷蔵庫」だと言う。
なぜかAは、家電が擬人化で見えるようになっていた。
Aは幻覚だと割り切り、
部屋にいる人たちを、様子から推理して、どの家電か? を当てる遊びを始める。
だが、たまたまいた彼女を家電と思い込み、色々言って怒らせてしまう。
Aは、いつもこうなってしまうダメな自分を悔やむ。
すると冷蔵庫は、Aを慰め、
家電たち皆はいつも、Aに気づかれないようにコッソリ、Aを助けていたと告げる。
だが、助けはするが、自分の人生は、自分自身で創っていかなければならないとさとす。
しかしAが、それでも家電たちに頼ろうとした時、家電たちは見えなくなる。
Aは、そういえば全ては幻覚だったっけ、とガッカリする。
しかし、ふとAがつけた風呂で、風呂の音声がさりげなくAを励ます。
あれは幻覚でなかったとAは悟り、新たな人生に一歩、踏み出す。
<<<脚本>>>
〇マンション・部屋(夜)
扉が開いて、カバンを持ったスーツ姿のA(30才)がヨロヨロと入ってくる。
A「残業で終電のがして、タクシー帰りなんて、ったくあの会社、狂ってるな!」
Aは大きなため息をつきながら、玄関で靴を脱ぐ。
Aは廊下に上がり、カバンをその辺に放り投げ、ネクタイをゆるめながら、部屋のドアを開ける。
白くて太ったおっさんBが、ランニングシャツとトランクスで、部屋の隅に座っている。
A「うわあああ!」
Aは後ずさる。
B「(フッと笑って)おつかれ」
A「だ、だ、誰……ですか?!」
B「俺? 冷蔵庫だよ」
A「警察!」
Aは体中のポケットを探って、スマホを探しはじめる。
Bは、自分のお腹を開けて、缶ビールを出して開けて、Aに差し出す。
B「まあとりあえず、そこに座って飲めよ」
Aは目をむいて口を開けたまま、しばらく考え込む。
Aはパン!と手を叩く。
A「そっか! 俺、今、幻覚を見てるんだ! 幻覚なら怖くないや!」
Aは上着を脱いで、Bの前に座り、缶ビールを受け取る。
Aの顔は笑っているが、手はガタガタと震えて、ビールがこぼれまくる。
Bはまた缶ビール出して開けて、飲む。
B「なんだか知らないけど、お前、俺たちが見えるようになったんだな」
A「(おびえながら)お、俺たちって?」
B「だから、俺は冷蔵庫なんだってば。夜になると、いつも俺に悩みを話してくれてただろ」
A「だって俺、友達いないから、つい……って、なんでそんな事、知ってんだ?!」
幼児(男)「わ~い! わ~い!」
幼児が、部屋の中を走り回っている。
A「(頭を抱えて見回す)なになに、今度は何?!」
幼児は大声で騒ぎながら、部屋の角まで走るが、
角にぶつかり、少し戻ってまた違う角にぶつかり、を繰り返し、やっと横にターン。
A「(幼児を指さして)ルンバ?!」
B「そう! ほう、やっと状況を受け止める気になったか」
Bはフッと笑って、缶ビールを差し出し、カツンと当てて乾杯する。
A「なに? 冷蔵庫だからクールキャラ? 安易すぎない? とにかく、俺はなんでこんな事に?!」
B「それは知らん。お前が勝手にそうなったんだから」
A「(頭をかき乱しながら)あああ~! いったん落ちつきたいな! そうだ! なんかあったかいものを……」
Aが立とうとすると、美少女がやってきて、ティーパックの入ったマグカップをAにわたし、口からお湯を出す。
A「君は、え~~と……もちろん、ポットだろ? 気がきくなあ、ありがとう」
美少女は向きを変えて、トイレに入っていく。
B「ごくろうさま、ウォシュレット」
Aはブハッ! とお湯を吹き出す。
Aはびしょ濡れの服を見ながら、困惑な顔をして固まっている。
扉が開いて、女性が出てくる。
A「(はしゃいでBを見る)おい、言うなよ! 今度は当てるから!」
女性「(不愛想で)なんだ、あんた帰ってたの。それならすぐに、そう言いなさいよね!」
A「なんか俺の彼女に似てるけど……これはきっとアイロンだな! 顔がひらべったくて、性格は冷たいし、すぐにカッともなる!」
女性「(ムッとして)ディスってんのか? お前……」
A「え! まさかの……ご、御本人登場?!」
女性「あたし帰る!」
A「ま、待って! これはただの事故だよお!」
女性は怒りながら部屋を出ていく。
B「(笑いをこらえながら)わかってたけど、お前が黙ってろって言ったから」
A「面白がってるだろ、お前!」
B「しかし、俺たちが人間に見えるのは、お前だけみたいだな」
A「そんな事は、今はどうでもいい! ああ! また誰かを怒らせちまったああ~!」
Aはひざをつき、よつんばいになる。
A「はあああ~……俺はどうして、いつもこうなっちまうんだろうな。なんで、頑張ってるのにうまくいかないんだろう……」
Bは優しく、Aの肩を叩く。
B「お前の悩み、俺はいままで全部、聞いてきた。お前が頑張ってきたのもずっと見てきた……こいつらもみんな……な」
Aが顔を上げると、Aのまわりには、色んな人たち(家電)がいて、Aを囲んで、笑顔で見つめている。
Aはうるんだ瞳で見回す。
B「お前が遅刻ばかりするから、少し早めに目覚まし鳴らしたり、たまたまつけたラジオで、お前を元気づける曲がかかったり、スマホいじってたら検索数とかが777だったり……偶然なんかじゃない。この世に偶然なんかない。俺たちはいつも陰から、お前を見守っている」
Bは微笑み、Aを見つめる。
B「だが、家電の俺らにできるのはここまでだ。お前の人生は、お前が創っていかなきゃな。今の仕事がそんなに嫌ならやめりゃいい。人生、道は一本だけじゃない、お前はいつだって生まれ変われる。家電だって毎年、新しいの出てんだからさ」
Aは微笑んで、Bを見つめ返す。
A「お前は、なんでもキンキンに冷やすけど……心はあったかいんだな」
B「(照れくさそうに笑って)よく言われるよ」
Aは泣きそうな顔を両手でおおい、しばらくうつむいている。
A「(顔を上げてBを向く)だけど……なあ、やっぱり俺だけの力じゃ……これからどうしたらいいか、一緒に考え……」
Bたちはいない、部屋は元に戻っている。
A「え?!」
Aは何度も部屋を見回す。だが元の部屋のまま。
やがて、Aはため息をついて座りこむ。
A「そうだよな。ただの幻覚だったっけ……」
Aはフラフラと立ち上がり、壁の風呂のスイッチを入れる。
A「明日も会社か、はああ~」
Aはシャツを脱ぎはじめる。
風呂の音声「(機械的な女性の声)お風呂が、わきました」
A「ああ……」
風呂の音声「(優しい女性の声)お風呂で疲れをとって、明日も頑張ってくださいね」
A「ああ、ありが……」
Aはハッとして、風呂場の扉のすき間から、風呂を見る。
だが、風呂はいつもの風呂。
Aはうつむいて少し考える。
Aは部屋中の家電を見回して、少し微笑む。
A「ああ、そうするよ……俺、明日、面接いかなきゃなんねーからな」
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