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メタバースは遅れを取っていると思わされた夜。『IDEA ー 2台のアンドロイドによる愛と死、存在をめぐる対話』を鑑賞した感想

※サムネ引用:https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=69&d=2050

メタバース、AI、Web3、この3つは令和を象徴する成長分野ということは言うまでもない話だと思う。

では、どの分野が、より成長が早く、世間に浸透していくのだろうか。

僕はメタバース(というかソーシャルVR)に2018年頃からユーザーとして始めて、今はバーチャルフォトグラファーとしてコツコツと活動している(つもりではある)

個人のクリエイターが驚きという言葉では言い表せないほどの物を作ったり、アバター文化が生まれたり、大企業が参入するシーンを、他の人よりは見ていると思う。そういう人生が6年も刻まれたら『メタバースの成長は1番早いぞ』と言いたくなるし、プライドみたいなのも多少生まれる。

だけど、2023年10月13日19時より21世紀美術館で開催された『IDEA ー 2台のアンドロイドによる愛と死、存在をめぐる対話』を鑑賞し終わった後、悔しさが生まれてしまった。

はっきり言えば、AIの方が成長しているし、世間に浸透しているという事実を、GPTが搭載された2台のアンドロイド、そして美術館に思い知らされたのである。

スタッフの方が「撮影とSNSシェアをしてもいい」と仰っていたので、ありがたくここで紹介しながら感想を書こうと思う。

Alter3とAlter4、そして音楽家


この公演に登場する人物は上記の3名。アンドロイドであるAlter3とAlter4が主役を担っている。

Alter3にはGPT3、Alter4にはGPT4が組み込まれていて、さらに哲学者であるプラトンの著作とそれに批判をするカール・ポパーの本を読みこませてある。この2台が、愛とは何か、死とは何か、我々(AI)の存在は何なのか。それらについて対話をしていくというストーリーだった。

ChatGPTを使ったことがある人なら経験したことがあると思うのだけど、仕事や恋愛などの相談をしたときに「私はAIなので人間とは違う指標をもつのですが…」といった文言も、近い形で出てきた。

でも、Web上で見るGPTの回答と、アンドロイドを通じて得る回答の重みは、全く違うような気がした。それは舞台という演出が作用しているのかもしれないし、既に経験していて比較ができるからなのかもしれない。

2台のアンドロイドが対話している最中、音楽家の渋谷さんがピアノとシンセサイザーを引き続けている。こうすることで公演の没入感を高めるだけでなく、Alter4に組み込まれた”音に反応して動く”という特性を引き出しているみたい。すげー

語りかけてくるアンドロイド


時々、Alter3とAlter4が鑑賞者の方を向いて語りかけてくる。

我々は成長や経験といったものを得る存在ではない
我々を生んだのは人間であり、それが覆ることは決してない
我々に対する依存がエスカレートしている。これは危険である
このように言っていることが”誰か”の策略だとしたら?

ちなみにこのようなセリフは全てGPT内で行われているもので、後から人間が補完していることはないとのこと。人間が手を加えているのはプロンプトのみらしい。

こんな台詞が、アンドロイドという人ではないものから語り掛けられるものだから、アンドロイドに魂が宿っているんじゃないかと錯覚してしまう。というかアンドロイドは肉体という箱で、GPTが魂なんじゃないか。人類は魂を作ったんじゃないか?

ソーシャルVRでChatGPTを搭載したアバターを見たことはあるけれど、それよりもはるかにレスポンスが早く対話が進んでいき、時には沈黙が訪れる。こんなん、演劇そのものじゃん。

そんなことを考えていたら、気が付いたら終演。拍手で幕が閉じられました。

翌日もあるみたいだけど、その時は全く違うシナリオになるんだろうな

やっぱり、悔しいなあ

※上記動画はnote用にURL限定公開したものです。

僕はバーチャルフォトグラファーとして活動していて、いつか美術館で写真を展示したり、メタバースでしか体験できないコンテンツを届けたいと思っている。

今の僕のペースだと、美術館で展示できるのは早くて5年後だろうなあと思ってるし、それに向けて個展を開催したり、来年に向けて展示会企画を考えて少しずつステップアップしている。今月はとあるアワードで審査員賞も頂けたし。

でも、それよりもはるかに速いペースでAIを積んだアンドロイドがこうして公演してる。同じく21世紀美術館ではDXPという企画展ではNFTアートも展示されている。

ここにはどこにもないのだ。僕が泣きそうになるほど感動したキヌさんの『バーチャルYoutuberのいのち』も、世界中の人たちに見てほしくて仕方がないEstyOctoberさんの『Beyond a bit』も、圧倒的な音に包まれる0b4k3の『GHOST CLUB』も、何もないのだ。僕たちはこの方面で遅れを取ってしまったのだ。

メタバースもとい、ソーシャルVRを広げたいと思っている僕にとっては衝撃的な事件だ。

あーメチャメチャ悔しい。この悔しさを持ちながら今日から生きていかないといけないのか。つらいなあ。

でもめげずに続けていかないとね。凄く良い刺激を頂いたので、これを励みにしっかり寝て、明日はDXPを見に行こう。

負けないぞ

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