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とりこぼした春まとめ

(か)

自宅から渋谷まで徒歩で移動した。
かえりも、渋谷から自宅まで徒歩をした。
先週も、変な街の渋谷を目指して自宅から歩いた。


ある日のさんぽ中、近くの駅までいこう近くの駅までいこうを何度も何度も繰り返しているうちになんと渋谷に到着してしまい、なーんだ家から渋谷までって歩けない距離ではないんだと味をしめてしまった故の結果だけれど、とは言ってもおおよそさんぽと称するには負担のおおきい距離なので、あれ、わたしってもしかして、自宅から渋谷を徒歩で往復するために、実家を離れ東京で暮らしはじめたのですか??となりかけている。
そんなわけないだろ。探偵事務所でアルバイトするためでしょうが。

でもじゃあ、自宅から渋谷まで歩くために上京してきたんじゃないのだとしたら、今のわたしのこの歩行距離は一体なんなんだよ、とも思う。


(すい)

これが春じゃなかったらなにが春だよというような空と気温のもとで街をちょっトコ(ちょっとトコトコおさんぽするやつ)してみたら、突然むかえるただしい季節に戸惑ってるみたいに、まわりを通り過ぎる全員がまったく不正解の服装をしていた。

だれも正解を叩き出せていなくて、惜しくて、なんか安心した。

東京でさぐりさぐりのわたしと、さぐりさぐりのこの大量の他人がちょっと似ていて、ちょっとかわいかった。


(もく)

公園のベンチはありがたい。歩くのにすこし疲れたな、と思ったとき無料で座れるからありがたい。でもそれだけじゃなくって、公園のベンチに座れば、生き物の中でいちばん面白い「小学生」を眺められるのもひとつの魅力だとおもう。


男子小学生1「おまえはさー、俺にとって、友達でもない。親友でもない。」

男子小学生2「じゃあなに。」

男子小学生1「ただお前は俺の・・・」

男子小学生2(とつぜんチャンバラをはじめようとする)

男子小学生1「なんだよ!」

男子小学生1・2(チャンバラをする)

男子小学生1・2「うきゃきゃっ うきゃきゃっ」


~会話終了~


お前は俺の、なんなの・・・。


(にち)

家のまわりを歩いていたら、キックボードに乗った男の子が「行く時よりもめっちゃいい〜!」と言いながら快走していた。

行く時よりもめっちゃいいなんてさ、そんなの、最高じゃん…。

行く時のほうがよかったじゃなくって、行く時よりもめっちゃいいというのは、今がめっちゃいいってことで、完全にその今を生きてる感じで、男の子はキックボードに合わせてその空気にとてもなめらかに乗ってるんだと思ったら、すごくすごくよかった。

わたしも、これからの明日や直後を、ちょびっと昔の賞賛や羞恥にしがみついてないで、行く時よりもめっちゃよくいたい。

毎日をとりこぼさないように…照

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