読書感想文について

小学生の夏休みの宿題の読書感想文はやはり厄介なものだ。遊びたい盛りの夏休みに、特に読みたくもない本を読み、心のままに変なことを書けばやりなおしかもしれないので心にもないお行儀のいい感想を書く。読書感想文がきっかけで読書が好きになる子供はいるのだろうか。

無論、読書感想文の目的は読書の振興に限らず、インプットとアウトプットの訓練としての側面もあるだろう。それにしても強制、提出、評価、もしかしたら再提出といった要素が執筆意欲を削ぐのである。実際に抱いた感想を先生に出す宿題としての体裁を整えるために「よかった」「おもしろかった」「印象に残った」で締める作業は今考えても苦痛だ。

いっそのことインプットとアウトプット、作文の訓練として割り切って、「嫌い」「つまらなかった」「わからなかった」という結論でもいいよと最初に提示しておけば、少しは「だったらさっさと書いてしまおう」という気持ちになるし、提出率も上がると思う。コンクールや表彰を無視して、このような路線で指導している学校はあるのだろうか。

初めて『羅生門』を読んだ小学生の感想が「題名と表紙の感じから妖怪がたくさん出てくる話かと思ったら結局ババアしか出てこなくてつまらなかった」でも、文章がしっかり書けていればまずは感想文として認められてもいいだろう。先生からのコメントや指摘も、お行儀よく書いたときより率直に書いたときの方が気になるかもしれない。

読書感想文で思い出したが、中学校で同学年だった、よく言えばユニークな感受性豊かな女子の『夏の庭 The Friends』の読書感想文の締めが「主人公達がおじいさんとの交流を通してペンキ塗りなどができるようになったことがよかったと思う」だったときは「嘘だろこいつ大丈夫かな」と思った。