『Demon's Souls』について

『Demon's Souls』(デモンズソウル、通称デモンズ)は2009年に発売されたアクションRPGだ。亡者とデーモンが跋扈する亡国ボーレタリアを舞台に主人公は元凶の「古い獣」を封印するためにデーモンを倒していく。

Souls of the mind key to life's Ather...
Souls of the lost withdrawn from its vessel...
Let the strength to be granted, so the world might be mended...
so the world might be mended...

ボーレタリアに侵入して間もなく主人公はデーモンの前に倒れてしまうが、謎めいた女の詠唱に導かれ、肉体が死亡したソウル体という状態で楔の神殿で目を覚ます。謎めいた女、黒衣の火防女(ひもりめ、通称かぼたん)曰く、主人公はソウルを楔の神殿に囚われボーレタリアから出られない、デーモンを倒せば生身の肉体が復活する。主人公は楔の神殿を拠点として、「古い獣」への道を開くため、死んでも死なない体を以て特に強大な五体のデーモンの打倒へ向かうのだった。

冒頭のストーリーは以上の通りだ。トライアルアンドエラーをストーリーに上手く落とし込んだ設定ではあるが、強大な敵を前に"死んでも死なない"のは"死んでも死ねない"ことであり、残酷な仕打ちであろう。実際、楔の神殿には主人公に先んじて囚われながらデーモンを倒せずにいる「心折れた戦士」がソウル体のまま座り込んでいる。

かぼたんは両目が蝋で覆われた恐ろしげな風貌ではあるが、少女らしい優しさを持っており、主人公が敵を倒して手に入れたソウルを経験値としてレベルアップを行ってくれる。プレイ当時は「フロムゲーの主人公なんて最初は所詮その他大勢みたいなもんだし、かぼたんも割り切って事務的にこんな呪いみたいなことをしているのだろう」ぐらいに思っていたが、最近になってかぼたんの詠唱の和訳を見つけて思うところがあった。

人の心の中心をなすソウル達よ...
主人を失い彷徨えるソウル達よ...
その身を世界を繋ぎ止める者に貸し与えたまえ...
世界を繋ぎ止める者へ...

てっきり魂を縛る呪いめいた文言かと思っていたが、本質は世界を繋ぎ止める願いを託すものだった。そして主人公が敵を倒して入手し、自身の強化に消費するソウルは、元はデーモンや亡者が人々から奪ったものだ。主人公は先達や平行世界の戦士達の中の一人程度と考えていたが、願いと魂を託すべく選ばれた一人としてロールプレイするのも悪くなかったかもしれない。

デモンズのオンラインサービスは2017年に終了した。オンラインでは自分がソウル体の状態ならば生身の状態で攻略中の他プレイヤーの世界へ侵入し、敵対プレイをすることができた。本来は他プレイヤーから生身を奪って復活するための仕組みであったが、対人戦に真価を見出し、生身だと侵入できないので自殺してソウル体になって侵入し、相手を倒して生身になればまた自殺して侵入という遊び方をしていたプレイヤーはけっこういたと思う。

自分も修羅道か等活地獄に堕ちたような遊び方をしていたので、今となってはなんかごめんねかぼたん。

デモンズはマゾゲーなどと呼ばれることもあるが、突っ込まない、退路を確保する、一度死んだところで死なないことを意識すれば非常にバランスのいいゲームだ。所詮はアクション"RPG"なので、どうしても進めないならレベルを上げることもできる。中世の甲冑に身を包み、剣を振り盾で受ける、地に足の着いたアクションを楽しみたい人には今でもオススメだ。