ララきのこエウレカ編あらすじ

人懐っこい性格と、根っこにある正義感でエオルゼアの人々を助けてきたララきのこ。

旅の途中、彼女は今後待ち受けるであろう強敵に立ち向かうべく先人の魂を封じたゾディアックウェポンを入手。
更なる力を求めて属性エーテルが乱流する禁断の地"エウレカ"へと足を運ぶ。

道すがら出会った多くの冒険者やクルルと共にエウレカの地を駆け回り、その謎を解き明かす一方で、彼女の中に少しづつ変化が生じていた。
ゾディアックウェポンに内包された膨大な光のエーテルがエーテル乱気流により暴走。彼女の体を蝕んだのである。

体内のエーテルバランスを乱され光に侵された彼女はかつての記憶を失い、大きくその人格を変えてしまった。

彼女の根幹にある正義感が災いし、光に堕ちた後の彼女は正しさを絶対とし、必要以上に悪を罰する断罪者になり果てた。

ゾディアックウェポンに宿る魂が彼女の魂の乖離を食い止めた為に辛うじて人の姿は保っているが、光のエーテルに侵され人としての心を失ったそれは、まさに「罪食い」そのものであった。

自分の中の正義を妄信し、意にそぐわない者を切り捨てる暴君と成り果てた彼女。
かつては仲間を守る騎士として常に先陣を切っていたが、今や彼女を信じ、その背を追おうとする者は居なくなってしまった。

* * *

彼女の蛮行はやがて街中に知れ渡った。
如何せん逆巻く光の奔流で近づく事すら難しく、各所の自警団らも手を焼いていると言う。

「まだ間に合う。」

喧騒ひしめく街中にひっそりと佇む、質素な木製ハウスの一室。
開いていた魔導書をぱたりと閉じ、
嘗て彼女と死地を共にしたミコッテの青年が言う。

生命活動を止めた罪喰いが生き返ったという例は無い。
しかし彼女はまだ人の形を保ち、人格こそ変わってしまったが人として活動している。

「アイツには、まだ教えていない事がまだまだあるからな。」

傍らに置いてあった短剣を拾い上げ、
伸びをしながらヴィエラの青年も続く。
後輩の尻を拭うのが先輩の役目だ。
それが例え、仲間だった者と相対することになっても。

「彼女にはやって貰わなければいけない仕事が山ほどある。身勝手な脱退は許さん。」

重い腰を上げるように、奥に座っていた男、一際長身のアウラが立ち上がった。
組織の長として、一人の友として、立て掛けてあった長杖を握りしめる。

これ以上身内の暴走は看過できない。
ただでさえ我がFCは騒がしいと冒険者ギルドから目を付けられているのだ。

立ち上がった三人が互いの顔を見合わせ、にやりと笑った。歪んで軋む玄関扉を押し開け、雲一つない空を一様に見上げる。

おっちょこちょいな仲間を取り戻す為、
彼らは今、走り出した。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


出生はウルダハだが、都会のせわしない暮らしにうんざりしていたララきのこ。
親元を離れると同時にグリダニアに移り、それ以降は森の中の小さな村でのんびり慎ましく暮らしていた。

そんな折、普段から魔物を狩っていた腕っぷしと底なしの体力を呆れ・・もとい見込まれ冒険者ギルドへの入隊を勧められた。
もともとあまり乗り気ではなかったものの、
ずっと森暮らしを続けてきた彼女はウルダハの都会の料理に感動。

美味い、美味すぎる。

これを機に彼女はおいしいごはんをたらふく食べるため、ウルダハで冒険者として稼ぐことを決意した。

* * *

彼女が冒険者として活動を続けていたある日のこと。
剣術士のギルドマスター、ミラが兵士から知らせを受けて街の入り口に駆け付けると、街に押し寄せる魔物を群れを一人のララフェルの少女が食い止めているではないか。
それも、その手には心もとないボロボロの剣が一本のみ。技も何もない。ただがむしゃらに戦っている。

門番も一人は倒れ、もう一人も重症だ。連絡係に白魔導士を呼ぶよう伝えたミラは急ぎララフェルの少女に加勢した。

ミラが加わった事により何とか魔物を退けた二人。遅れてやってきたヒーラーから治癒を受けつつ、ミラが尋ねる。
まだ冒険者として経験も浅いだろうに、なぜそこまで無茶をするのか。
下手をすれば死んでいた。いや、あれだけの魔物に囲まれておいてよくもまあ無事でいたものだ。

半ば説教とも取れるミラの問いに、彼女は傷だらけの顔でほほ笑んだ。
街の皆が、怪我をしてしまうから。
簡素に一言。虚を突かれた。それでいて、彼女ならそう言うのではないかとも思っていた。
ミラの予感が、確信に変わる。

「貴女、剣術士に興味はない?」

* * *

治療の後、少女に今日はもう休むよう促したミラ。彼女を宿に送った後、それを眺めていた酒場のモモディがため息交じりに言う。

「いつもあんな感じ。体中傷だらけにして、それでも次の日はケロッとしてるのよ。」
「まさか。あれだけの魔物を一人で食い止めていたんだぞ、明日は一日休むべきだ。」
「私もそう言ってるんだけど…彼女、信じられない程タフみたいね。」

…なるほど。私の予感も伊達ではないな。
ミラはモモディに別れを告げると、急ぎ剣術士ギルドへ戻った。

「あ、ミラさんお帰りなさぁ~い。魔物はどうにかなりましたぁ? って痛ァ!」

受付で退屈そうに干し肉を齧っていたルルツにチョップを入れつつ、ミラが尋ねる。

「魔物のほうは問題ない。それよりルルツ、新入り用の装備ってまだあったかしら。」

* * *

翌日。掛け声と剣戟の音が響き渡る剣術士ギルド内。夕日も沈み、少し肌寒くなってきた頃。
腕を組んで門下たちの訓練を見守って居たミラが、視線を横にずらして小さく微笑んだ。

「…待っていたよ。」

開かれた扉。
ルルツの間延びした声が響き渡る。

「おや、初めての方ですねぇ? ようこそ~!」

そこには昨日と同じく傷だらけで佇む、ララフェルの少女がいた。


* * *


モモディ「あったわねえそんなこと」
ミラ「もう何年も前だが、あの時のことは今でも覚えているよ。」

クイックサンドの一角で琥珀色を傾けながら、ミラが懐かしそうに言う。嘗てララフェルの少女だった女性も、今では隣りでエールを大ジョッキだ。客が少ないからか、エプロン姿のモモディもミラの隣りで一杯やっている。

「さて、私はもう行くよ。ご馳走様。」
「あら、もういいの? これからなのに。」
「これでも多忙の身でね。それに、英雄様を独り占めするわけにも行くまい。」

ミラが顎で示した先、三人の冒険者が彼女に手を振っていた。同じFCの連中だろう。中には見知った顔もいる。
モモディが「英雄様」を囃し立てると、彼女はハッとしたようにジョッキを持ったままスパッと立ち上がり、

崩れるように倒れた。彼女は飲むと毎回これだ。
ミラが呆れて指差した彼女を、FCの面々は手慣れた手付きで摘み上げ、挨拶もそこそこに酒場を後にした。

グラスの中の氷が、カランと静寂を注げる。
モモディがさりげなく酒を追加する。

「…ここも寂しくなっちゃったわね。」
「なに、剣術士ギルドは通過点さ。皆が成長し、巣立ってくれればそれで良い。」

そう言いグラスを空けるミラは、やはりどこか寂しそうな目をしていた。

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