ララきのこ生い立ちメモ

出生はウルダハだが、都会のせわしない暮らしにうんざりしていたララきのこ。
親元を離れると同時にグリダニアに移り、それ以降は森の中の小さな村でのんびり慎ましく暮らしていた。

そんな折、普段から魔物を狩っていた腕っぷしと底なしの体力を呆れ・・もとい見込まれ冒険者ギルドへの入隊を勧められた。
もともとあまり乗り気ではなかったものの、
ずっと森暮らしを続けてきた彼女はウルダハの都会の料理に感動。

美味い、美味すぎる。

これを機に彼女はおいしいごはんをたらふく食べるため、ウルダハで冒険者として稼ぐことを決意した。

* * *

彼女が冒険者として活動を続けていたある日のこと。
剣術士のギルドマスター、ミラが兵士から知らせを受けて街の入り口に駆け付けると、街に押し寄せる魔物を群れを一人のララフェルの少女が食い止めているではないか。
それも、その手には心もとないボロボロの剣が一本のみ。技も何もない。ただがむしゃらに戦っている。

門番も一人は倒れ、もう一人も重症だ。連絡係に白魔導士を呼ぶよう伝えたミラは急ぎララフェルの少女に加勢した。

ミラが加わった事により何とか魔物を退けた二人。遅れてやってきたヒーラーから治癒を受けつつ、ミラが尋ねる。
まだ冒険者として経験も浅いだろうに、なぜそこまで無茶をするのか。
下手をすれば死んでいた。いや、あれだけの魔物に囲まれておいてよくもまあ無事でいたものだ。

半ば説教とも取れるミラの問いに、彼女は傷だらけの顔でほほ笑んだ。
街の皆が、怪我をしてしまうから。
簡素に一言。虚を突かれた。それでいて、彼女ならそう言うのではないかとも思っていた。
ミラの予感が、確信に変わる。

「貴女、剣術士に興味はない?」

* * *

治療の後、少女に今日はもう休むよう促したミラ。彼女を宿に送った後、それを眺めていた酒場のモモディがため息交じりに言う。

「いつもあんな感じ。体中傷だらけにして、それでも次の日はケロッとしてるのよ。」
「まさか。あれだけの魔物を一人で食い止めていたんだぞ、明日は一日休むべきだ。」
「私もそう言ってるんだけど…彼女、信じられない程タフみたいね。」

…なるほど。私の予感も伊達ではないな。
ミラはモモディに別れを告げると、急ぎ剣術士ギルドへ戻った。

「あ、ミラさんお帰りなさぁ~い。魔物はどうにかなりましたぁ? って痛ァ!」

受付で退屈そうに干し肉を齧っていたルルツにチョップを入れつつ、ミラが尋ねる。

「魔物のほうは問題ない。それよりルルツ、新入り用の装備ってまだあったかしら。」

* * *

翌日。掛け声と剣戟の音が響き渡る剣術士ギルド内。夕日も沈み、少し肌寒くなってきた頃。
腕を組んで門下たちの訓練を見守って居たミラが、視線を横にずらして小さく微笑んだ。

「…待っていたよ。」

開かれた扉。
ルルツの間延びした声が響き渡る。

「おや、初めての方ですねぇ? ようこそ~!」

そこには昨日と同じく傷だらけで佇む、ララフェルの少女がいた。


* * *


モモディ「あったわねえそんなこと」
ミラ「もう何年も前だが、あの時のことは今でも覚えているよ。」

クイックサンドの一角で琥珀色を傾けながら、ミラが懐かしそうに言う。嘗てララフェルの少女だった女性も、今では隣りでエールを大ジョッキだ。客が少ないからか、エプロン姿のモモディもミラの隣りで一杯やっている。

「さて、私はもう行くよ。ご馳走様。」
「あら、もういいの? これからなのに。」
「これでも多忙の身でね。それに、英雄様を独り占めするわけにも行くまい。」

ミラが顎で示した先、三人の冒険者が彼女に手を振っていた。同じFCの連中だろう。中には見知った顔もいる。
モモディが「英雄様」を囃し立てると、彼女はハッとしたようにジョッキを持ったままスパッと立ち上がり、

崩れるように倒れた。彼女は飲むと毎回これだ。
ミラが呆れて指差した彼女を、FCの面々は手慣れた手付きで摘み上げ、挨拶もそこそこに酒場を後にした。

グラスの中の氷が、カランと静寂を注げる。
モモディがさりげなく酒を追加する。

「…ここも寂しくなっちゃったわね。」
「なに、剣術士ギルドは通過点さ。皆が成長し、巣立ってくれればそれで良い。」

そう言いグラスを空けるミラは、やはりどこか寂しそうな目をしていた。

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